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「月が綺麗ですね」        既婚者たちの婚外純愛

#1 初めての既婚者パーティーで 2018年夏


「パーティー参加予定の松橋 真です」  

「13,000円になります。あと身分証明書をお願いしまーす♪」

(本当に身分証明書確認するんだ、でもコピーとか取られず良かった。。)

白いワンピースを着たスレンダーで綺麗な受付女性たち。気持ちがアガってくる。

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「松橋さまは1番のテーブルになります。あとシールラベルに名前を記入して胸につけてもらっていいですか、ニックネームでもいいですよー♪」

(苗字より下の名前がいいかな。。。)

50対50の既婚者パーティーだった。ネットでいろいろ検索したが、一般的には10対10前後が多い。  でも大人数の方がいい女も見つかるだろうと大パーティーを選んだ。

会場はTOKYOタワーの夜景を目前に眺められる、おしゃれなスペースだ。                披露宴会場のように天井高も広く、見回すと     10名卓×10台の立食形式、四方の壁際に椅子が並べられている。飲食はブッフェ方式だ。

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1番テーブルにむかうとそこには。。。

(だれもいない。。。女子は) 

壁際に散らばっている男子に声をかけ、       「初めてなんで(笑)。色々教えてください!」  「僕は2回目で」                 そんな会話をしていると女子が次々とはいってきた。

主催者が「20分ごとに男性は10テーブルを回っていただきまーす!男性だけが動くので、女性はそのままでテーブルに残ってくださいねー」

(そんなシステムなんだ。。。)

1番テーブルに女性5人、男性5人集まった。     会場全体の女性は皆、ドレスアップしており、近所のお母さんっぽい人はほとんどいない。         ふと目の前を見ると、170cm以上のスラっとした女性が2人並んでいた。

(20代後半かな。無茶苦茶キレイだよ、マジか。特に左の女子。)

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(えっと、名前は。。。美月さんか。)


#2 13回目の既婚者パーティーで 2018年夏


「美月ちゃん、やっとパーティーに一緒にきてくれたねー」

「うん、12回も行ったし。もういいかなって。でもパーティーがすごい人数で開催されるっていうからね、最後の1回かな、愛ちゃん」

美月と愛は既婚者パーティーの常連だった。今回も所沢から1時間以上かけてTOKYOの大都会の100名規模の会場に来ていた。

「受付はこちらで~す♪ 素敵な美人さん、ふたりですねー。あとお荷物邪魔でしたら、受付のすぐ裏の棚をご利用くださいねー♪」

勧められるまま美優は赤いラグジュアリーブランドのバックを棚に置いた。愛はショルダーバッグを持ったまま、2人は1番テーブルに向かった。

「8月下旬だし、夏が終わる前にいい男見つけたいね、美月ちゃん!」

「わたしはねー、これでパーティーもういいかなって。いっぱい誘われたけど本気で付き合える男はなかなかいないね。今回は楽しく飲めればいいって感じかな」

(なんかパナマハットの男がいるなー。こっち来るよー。。。)

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「こんにちは! 真です。美月さんですね。よろしくお願いします。受付と同じ白ワンピなので会場スタッフの方かと。」

「今日のパーティーはドレスコードで白を身に着けてくる、でしたからね。あっ!だから白パナマハットかぶってるの?」

「あ、はい。人数多いので何か目立つかなってね♪」

「美月ちゃん、このパナマの人、なんかとてもオシャレー♪。それと細いけど、なかなかいい体してるんじゃない?」

「愛さんですね、お2人はお友達。。。」と言いかけた瞬間にブァッと愛が突然に、真のシャツの裾をまくしあげた。鍛えあげられたシックスパックの腹筋が露わに。

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「キャー‼︎ えっー!(笑)パナマさんはさー、オシャレでこの体、仕事は何何?美月ちゃんどう思う?」

#3    パナマハットの男

パナマの男:松橋 真46歳は誰もが知ってるおしゃれセレクトショップのメンズ仕入事業本部、本部長だ。

かと言って雑誌「LEON」のようなギラギラした「ちょい不良オヤジ」ではない。女性目線を意識した「上品おしゃれ」&「細マッチョ」オヤジである。

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顔面偏差値は平均くらいだが、シャツの上からでもわかるような鍛えられたボディライン、やりすぎ感のない爽やかなファッションスタイル、紳士的で包み込むようなエスコートによって、トータルで偏差値を上乗せしている。

イケメンとは言われないがなぜか「素敵」といわれることが多い。いわゆる「雰囲気イケメン」を戦略的に作り上げている男である。

順調にスピード出世を重ねすでに年収1,500万円、小学生の一人娘と妻の3人で白金高輪の一軒家に住んでいる。周りからは幸せな家庭にしか見えない。

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ただ30代後半から40代真ん中までは、がむしゃらに出世競争を走りつづけ、この年齢で本部長まで登ったものの、そこは想像していた世界ではなかったのだ。次のステージは役員候補だがそこに魅力を感じていない。ドス黒くて自己中心的な派閥争い、個を殺し組織を生かす、そんなことに情熱が注げなくなった。

胸の奥がなぜか空洞で満ち足りていない。。。。

なぜなのか。。。何がたりないのか。。。

#4 白ワンピースの女

白ワンピースの女 : 美月 41歳は身長171cmのモデル体型で、誰が見ても美人と言ってしまうような女子である。事実、元モデル事務所にも所属しており、どう見てもアラサー以上には見えない。

仕事は所沢で、もう1名と共同でマッサージサロンを経営している。ビジネスパートナーの年下男とである。この年下男からは一方的に100回以上もプロポーズをされている。しかしながら男女の関係には一切なっていない。

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現夫とは再婚同士だ。夫も千葉で自営業をしていて、お互いの仕事が軌道に乗っており、美月とは所沢⇄千葉のいわゆる週末婚だ。美月は心が、想いが、満たされない。籍を入れた翌日からずっとセックスレス、夫が求めてこないのだ。

前夫との間には、若くで産んだ高3にもなる娘がいるが、暮らしていない。美月の不倫が原因で離婚前し、親権を取られていたからだ。

胸の奥がなぜか空洞で満ち足りていない。。。。

なぜなのか。。。何がたりないのか。。。

#5 美女の正体

「美月さん、高校生の娘さんがいる?!」

大人のゆっくりした、真の口調がうわずった。

「そう、41歳のママだよ。愛ちゃんもねー、同じママ友だよー」

(絶対にアラフォーには見えない!10歳以上若くみえる!!2人とも高身長だが、隣の愛さんはおなか周りや足元がいくらかふっくらしているが、美月さんは、そう女優の菜々緒さんだ、顔もスタイルも!)

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真は同じテーブルの他の女子3人も見たが、とてもくらべものにならない。気が付くと美月、愛の周りに男5人全員が張り付いて、質問ぜめになっていた。ただ真はほんのかすかに疑念があった。。。

男たちが美月に夢中で話しかける中、真はその2人の女子が好みと言っていた白ワインとオードブルを取りにテーブルを離れた。

遠目にこの会場を見渡した。100人の既婚者たちの「大人の性欲と愛情」が渦巻いている。あからさまに下ネタ連発しているおじさまやマダムの性欲丸出しの会話や、初めてで、周りに圧倒され、雰囲気になじめそうにない男子・女子もいる。

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一人ひとりが、みんなが、何かを求めて、何か探して、この「既婚者パーティー」という、倫理的に理解し難い集まりに参加していた。

「どうぞ♪ お待たせしましたー、美月さん・愛さん」

「ありがとう!飲み物がないこと気が付いてくれたんだねー、あと食べ物も。うれしいー」

欲望の蜘蛛の糸によじ登る男たちを横目に、さりげない紳士的な振る舞いが真はさらりとできていた。

白の上下スーツの主催者より

「そろそろ20分になりまーす。次のテーブルに移動の準備してくださーい」

その後、なぜかこちらの1番テーブルに近づいてきた。

「美月ちゃん、大丈夫?また遊びにいこうね!」

美月は微笑みを返していた。

(えっ。。。主催者と知り合い?そういうことなのかよ。。。)

次のテーブルへの移動の時間になった。男たちはいそいそとスマホを取り出し、思い思いの女子とLINE交換が始まっている。

「早いなー。もう時間になっちゃったね、美月さん♪ またお会いしたいので、LINE交換お願いできますか?」

と真がスマホを差しだすと、美月は

「スマホ持ってなーい♪」

「???」

「入口近くのバッグ置き場に置いてきたから♪ごめんなさい♪」

(マジか。このパーティーに来て、普通スマホ持たないなんて。。。)

1番テーブルの他の男たちも美優に並んで、同様に全員が撃沈されていた。真の最初に感じた疑念はこれだった。サクラか。。。

#6 オシャレ男の正体

会場の男子全員がテーブルを移動した。真もモヤモヤしたままの気持ちで次のテーブルへ。振り返って美月を見た。すでに美月は2ターン目の男達に囲まれていた。

真は2番テーブルの女子たちに眼をやった。まだ序盤にもかかわらず、3人女子グループがかなりアルコールが入ってるようで異常に盛り上がっていた。その中で胸元、足元が結構な高露出度ファッションの女子が男子5人にむかって、

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「こちら男子の皆さんは何目的ですかねー(笑)私たちはもうすでにランチタイムにもパーティー行ってきたのよねー♪」

「お姉さんたちはさー、本日2回目?すごいねー。3回目は僕といこうよ!」と真のとなりの高身長で日焼けしたスポーツマン男が言った。

「いいけどねー 3人揃えてくれる?そちらのパナマさんとかね♪」

「そうそう、高身長さんとおしゃれさんと、あとは金持ちさん♪がいいかな、ねぇみんな?」

「ところでパナマさんは、帽子とったらハゲてたりしてー。ねー(笑)」

「いいねー。ハゲ。絶倫でしょ(笑)私たちには最高じゃん♪だってみんな、旦那がEDだしねー」

実は。。。

真はハゲていた

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頭部全体を2mmのバリカンで刈上げ目立ちにくくはしているが。。。

なぜか不思議なのだが、女子たちにはベットインするまでハゲと思われない、思わせない、またはそんなことを意識させない不思議な魅力がある。男としての余裕さ、タフさ、優しさを醸し出している。ハゲでも十分に戦えるのだ。

30代半ばから出世のため、仕事に没頭したころから急激に薄毛になった。加えて猛烈に白髪にも。仕事が落ち着き40代前半になって、鏡をみるとすっかり、シニアのおっさんだった。。。小さな娘に言われた、「パパはおじさんみたいだから、学校に来ないで!」と。なぜか涙が出た。。。

出世競争を勝ち抜くのために、常に自分が自分がと前に出て、常にこれは自分の成果・業績だとアピールする人間になった。その結果,出世はしたが、その得られた「社会的地位」が、周りに対する優しさを失わせた。

それからだった。幼い娘に見直してもらおうと、男らしいタフな体へ筋トレで鍛えなおし、女子目線での爽やかファッションを追求し、自己中心的でない周りへの気遣い、心づかいを目指した。

真は、人生を、生き方を、振り返ることになった。

#7 二人の白スーツ男

美月は今日の会場で2人の知ってる男がいた。その2人とも今日は白スーツを着ていた。実は美優は、以前にこの2人とお泊りで寝てしまっていた。

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ひとりは主催者の高木だ。1年近く前、初めてこの男主催パーティーに参加した。

「美月ちゃん、本当にキレイだねー。パーティー何回も主催してるけど、一番キレイだよ。高身長でスタイルもいい、サイコー!!今日は絶対楽しもうねー」

パーティー後、かなり強引に二次会に誘われ上手い具合に飲まされてしまった。その後自宅の所沢まで帰れなくなった。高木が自宅のタワマンで3次会をしようとのことで行ったのだが、この後から記憶がない。朝起きたら真っ裸でこの男と寝ていたのだ。

(こんな男とヤってしまった。)

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と美月は思ったが、あまり引きずらない性格だった。翌月には平気でこの高木主催の2回目のパーティーに参加していた。高木が「美月ちゃーん、今日も綺麗だねー、二次会も行こうねー」と馴れ馴れしく近づいてくるが、恨むわけでもなく、サラリと流していた。

この2回目のパーティーでもう1人の白スーツ男に会っている。名前は思い出せない。そんな程度の男。ただこのパーティーの常連で主催者高木と親密のようだったことは覚えている。

どのパーティーでも一定時間単位で男性たちが席を移動するのがルールだが、この男だけフリーランスに勝手に行動している。運営スタッフかと思いもしたが、最初から終了までずっと美月の隣にいた。主催者は知らんふりだ。

またも、二次会に行き、終電に間に合わず、その後の記憶がない。今度はこの男と裸で寝ていた。

(こんな男ともヤってしまった。)

名前も連絡先も知らない、好みでもなんでもない男。後から冷静に考えてみれば、ハメられた感がある。記憶をなくすまで飲むことはない。レイプドラッグか。。。

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そんな白スーツ男2人が、今日も会場をうろついていた。

#8 唾液とLINE

パーティーは既に3時間を超えていた。10ターン目が終了し、主催者よりアナウンスがされた。

「これから残り時間はフリータイムになりまーす♪好きな方と、好きなだけ交流してくださいねー」

真はすぐに1番テーブルに駆けつけた。しかしながら既に美月の前は男たちが行列になっていた。間違いなく会場N o.1人気なのだ。真は仕方なくその列に並んでいると、

(あれっ!美月さん、スマホもってんじゃん!)

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じれったい思いをしながら、待っていた。次々と男たちが撃沈していく。

「あっ♪ パッ、パッ、パナマさん!戻ってきたの?」

「美月さん、パッ、パッって。僕の顔面、唾液だらけです(笑)」

「ごめんなさいっ(笑)パナマハットって言葉が出てこなくて(笑)。顔拭きますねー」

「それは、僕のスカーフなんですけど(笑)」

美月は真が首に巻いていたスカーフで、真の顔のツバを拭き始めた。スマホだけでなく、ハンカチすらも手に持ってなかった。持ち物全てが本当に入口のバッグの中だったのだ。真はそのことを悟ると、笑顔で、美月にされるがままに任せた。

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「スマホありますよね。唾液つけられたので、LINE交換ですよね(笑)」

「持ってきたよ、女子からLINE交換迫られて仕方なく。女子を断ると感じ悪いかなって。ワンピースにポケットがなくてね、なんかスマホだけで握りしめてるとヤル気満々みたいで恥ずかしくてね。(笑)」

美月は紳士的で、穏やかに話す真ならLINE交換してもいいかなと感じた。他の男達と違ってガッついてこない感じに好感が持てたのだ。

#9

真はLINEを開いた。

50人の女子と出会い、2人だけ交換していた。数多くにアプローチすると、誰でもいいんだと思われがちであり、また、名前とLINE登録名が一致せず、誰がだれかわからなくなるからだ。

パーティー終了後の二次会には行かない。その当日中にワンナイトを狙うとかは元々頭にない。普通に家に向かっていた。そして。。。

[ 美月さん、今日はありがとうございました。無事に自宅着きましたか?また是非お会いしたいです。気が向いたらでいいので。]

[ 消えたんだよー、愛ちゃん。男と2人だけでー。愛ちゃんと来たのに私のこと、ほったらかしなんだよー]

[ 二次会に行かれたのかと。美月さん今はどこ?]

[ 二次会なんか行かない。いい事無いしさー。ひとりで近所の日高屋でラーメンと酎ハイー飲んでんの♪]

美月は日高屋が落ち着く。日高屋では男たちが寄ってこないからだ。夜遅くに一人で飲み屋に行くと、100%男たちが寄ってくる。静かに過ごしたい時は駅前のプロペ通りの日高屋に決めていた。パーティーで飲んで、日高屋で食べたら、眠くなってきた。

所沢駅から美月のマンションまで15分以上かかる。駅西口の椿屋珈琲前はいつも、男たちがたむろしている。長身ワンピース姿の美月を下から舐めるように観ている。そこを抜けて交差点で信号待ちしてると、やっぱりナンパされる。

「ごめんごめんー!待たせたねー、彼女!ほらほら車こっちだからねー♪」

と知らない男に手を引っ張られて車に連れ込まれそうになる。美月はふらつく足下を踏ん張りながら、

「触るなー!!」と大声で振り払った。

(なんだよ、どいつもこいつもナンパばっかり!)




































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