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ベルグルンドのシベリウス(いまさら)

 (いまから、またクラシック音楽オタク話を書こうとしています。内容は、シベリウスの交響曲です。おもしろい話が書けるかどうかもわからないのですが、それでもよろしければお読みくださいませ。)

 半年くらい前から、ナクソス・ミュージック・ライブラリ(以下、NML)というサービスに、近所の図書館のカードで、無料で入っています。いろいろなクラシック音楽の音源が、無料で聴けてしまいます。ご存知ないかたにはおすすめしたいものですが、それで、学生時代、聴きたくても聴けなかった音源を聴くことができるようになりましたので、そのご報告のうちのひとつです。

 シベリウスの交響曲のよさに目覚めたのは、大学2年の夏、交響曲第6番のカセットテープ(アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団)を聴いたときです。以来、シベリウスのファンになりました。前にそんなことも記事にしたことがあります。リンクをはることはしませんが…。

 学生時代に、ショスタコーヴィチやシベリウスとかニールセンの好きな仲間がいて、いろいろCDを借りました。音楽を聴くとしたら、生演奏を除いて、CDしかない時代です。そのなかでも、彼がすすめてくれたのが、ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のシベリウスの交響曲だったのです。すべてを借りたわけではなく、当時、聴いたぶんは、4、5、6、7番であったと思います。すばらしい演奏でした。また彼には、カラヤンのCDも借りました。ベルグルンドとはタイプが異なりますが、やはりいい演奏です。自分の所属するオーケストラが1番を演奏することになったこともあります(降り番になりましたが)。私がやったことのあるシベリウス作品は、「フィンランディア」だけだと思います。月並みですが。

 それが、NMLでは、ベルグルンドのシベリウス交響曲全集が、すべて聴けるのです。四半世紀くらいの時をへて、あらためてこの全集を聴くことになりました。やはりオケのうまさが光っています。自分の楽器ばかり聴いてしまう悪いクセが出ますが、やはりフルートのソロがうまいと、引き込まれます。フルートはジャック・ズーンですね。しかし、必ずしも、ベルグルンドの指揮がよいかどうかはわからないです。私の学生時代の好みは、アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団でした。しかし、仲間のうちで、アブラヴァネルのシベリウス交響曲全集がいい、と言っている人はいませんでした。

 ベルグルンドのシベリウス交響曲全集は、NMLで、もうひとつ、聴くことができます。ヘルシンキ・フィルを指揮したものです。これも、部分的には聴いたことがあります。これも学生時代に話題になっていたものです。こちらのほうが、ベルグルンドの個性的な部分が出ている全集かな?という気もします。第5番など、もう少し盛り上げてくれてもいいなあ、と感じながら、聴いていました。第4番の第4楽章も、テンポが速すぎる気がしなくもないです。このヘルシンキ・フィルの全集には、例の「フィンランディア」とか「タピオラ」「クレルヴォ交響曲」なども含まれています。フィンランディアなどを聴くと、その指揮者のシベリウス観が分かるような気もします。(ちなみにフィンランディアという曲は、讃美歌になっています。「やすかれ、わが心よ」。私がこの曲をやったころは、まだキリスト教に出会う前でした。)ベルグルンドは、ほんとうは私の好みではないのだと思います。

 シベリウスの交響曲は、BGMとしてじゃまにならない音楽です。教員をしていたころ、テストの採点のBGMとして、ひたすらシベリウスの交響曲を、1番から7番まで、繰り返し繰り返し聴いていたことがあります。ちょっと気分を変えて、ブルックナーにしてみたら、急に気が散ったということがありますので、このへんはシベリウスの音楽の特徴なのでしょう。

 生で聴いたことのあるシベリウスの交響曲は、1番、2番、7番だけだろうと思います。これは月並みな感じだと思います。いずれもアマチュア学生オケの演奏です。プロの演奏でシベリウスの交響曲を聴いたことはないと思います。

 シベリウスの交響曲の演奏でほんとうにすぐれているのは、ストコフスキー指揮の演奏だろうと思います。「彼の交響楽団」の1番は、ほんとうにすぐれていると思います(ナショナル・フィルのはまったくよくないですが)。フィラデルフィア管弦楽団の4番は、世界初録音となった録音もよく、後年のライヴ録音もとてもよいです(第4楽章の、グロッケンを、鉄琴とするかチューブラーベルとするかも、両者で異なります)。ストコフスキーの録音が残っているシベリウスの交響曲は、1、2、4、7番だけですが、5番や6番もアメリカ初演しており、どうも3番だけ、やったことがあるのかないのかわかりませんが、作曲者からも好評を得ていた、すぐれたシベリウス演奏家だったと思います(上述の1番には、作曲者の感謝の手紙があります)。交響曲以外では、若いころのフィンランディアの驚くべき演奏や、トゥオネラの白鳥、悲しいワルツ、テンペストの子守歌、ハイフェッツをソロにしたヴァイオリン協奏曲など、すばらしいものが多いですね。

 NMLで聴けるシベリウス交響曲全集の話に戻ります。われわれが若かったころに流行っていた全集で、ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団というものがあります。最近、NMLに入っているなら、ということで、あるマニアのかたからすすめられて聴きました。すごい演奏ですね。ベルグルンドとは違って、盛り上げるタイプの演奏です。ベルグルンドにせよヴァンスカにせよ「いまさら」の感じはあると思いますが、私が青春時代に聴きたくても聴けなかったシベリウス全集なので、いまさらでも書かせてください。これもすぐれたシベリウス交響曲全集です。

 もうひとつ、NMLに入って、これはすごいと思ったものが、ピエタリ・インキネン指揮、日本フィルのシベリウス交響曲全集です。これはすごいですね。私の学生時代には存在しなかった録音ですが、これは新しいシベリウスの演奏という感じがして、たいへん好ましく思えたものです。盛り上げていないようで、ちゃんと聴かせているという演奏で、とてもいいと思います。ベルグルンドも古くなりましたねえ。(日本フィルのシベリウス交響曲全集というと、渡辺暁雄の指揮によるものがあるはずですが、それはNMLには見当たらないものです。私の検索のしかたが悪い?)

 とにかくマニアックな話を書いたということと、私が学生時代に話題になっていたものなので、「いまさら」の感じがあるのですが、ちょっと書いてみました。なににしても、いまさらベルグルンドのシベリウス交響曲全集が聴けるとは思わなかったものですから。しかし、正直なところを申せば、もう少し、盛り上げてほしいのです。インキネンはとてもいいです。それから、お近くの図書館でNMLが無料で聴けるサービスをやっているかどうか、ご存知ないかたには、お調べになることをおすすめいたします。それではまた。

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