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1998年、都留の思い出

(これは私がときどき書くクラシック音楽オタクネタです。プチ旅行ネタでもあります。それでもよろしいかたは、どうぞお読みください。)

高校3年のとき、オーケストラ部で、ファゴットの後輩が入って来ました。なかなか練習に来てくれませんでしたが、私は夏休みも熱心に(しつこいくらいに?)彼を練習に誘いました。私が高校を卒業して大学に進学するころには、彼は「熱心な部員」となり、しっかりがんばっていました。彼が高校3年のときの文化祭は聴きに行きましたが、極めて感動的な演奏会でした。男子校なのですが、終わると卒業生は皆、男泣きをするのです。私が高3のときもそうでした。それくらい、みんな一生懸命、打ち込んでいたのです。そんな話はいずれまたするとしまして、今回の話は、それよりずっとのち、彼が大学生となったときの演奏会の話です。

1998年11月15日(日)のことでした。彼は、山梨県の都留にある大学の学生となっていました。オーケストラで楽器を続けていました。誘っていただいたのだと思います。演奏会に行きました。

そのころ、私は、まだ洗礼は受けていませんでしたが、すっかり教会になじんだころでした。その日は日曜日です。朝、とりあえず教会に行き(まだ睡眠障害のない時期でした)、子どもの礼拝に出るか出ないかくらいの微妙な時間で、もう東京を出発しました。午後2時半開演の演奏会だったのですが、そのくらいの時間に東京を出発してちょうどよいくらいでした。はじめて都留に行ったのです。

都留はとてもいいところでした。時代がそもそも四半世紀くらい前のことで、携帯電話もメールもない時代だったと思います。駅について、ホールがわからなかった私は、コンビニで道を聞きました。コンビニの店員さんは、5分くらいかけて、手書きでていねいな地図を書いてくださいました。その時点で、もう東京と流れている時間が違うことは明らかでした。

ホールは大学の近くで、とても感じのよいところでした。大学も感じがよく、いわゆる総合大学に行っていた私には新鮮でした。

プログラムは、ワーグナーの「マイスタージンガー」前奏曲、ベートーヴェンの「皇帝」、ドヴォルザークの交響曲第8番でした。いまここにそのときのプログラムがあります。指揮者は吉田悟さん、ソロは早川恵美子さんという人です(プログラムを見なければ書けないです)。もしかしたら「皇帝」は、私が生で聴いた唯一の経験かもしれません。すごくいい演奏でした。休憩のときに、ソロの先生は客席に現れました。ドボ8がまたいい演奏でした。この曲はアマチュアがひんぱんにやる曲で、私もやったことがありますが、このときの演奏は特によかったです。アンコールはメモしていませんが、記憶によると、ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のうちの1曲でした。その後輩は、まさにその高3のときの文化祭で、この曲はやったことがあるはずですので、おそらく2度目だったでしょう。

彼からは、のちに、吹奏楽にも乗る話、また、ベートーヴェンの第九をやる話なども聞き、誘っていただいていたのですが、結局、行きませんでした。これが、私が「山梨県で演奏会を聴いた」唯一の経験になります。

のちに、高校のOBオケの練習で出会ったことがあります。すでに別の地で就職していた私は、練習を見学するにとどまりました。私はそのころ32歳になっており、つまり彼は30歳にはなっており、お互いにすっかりおじさんでしたが、彼は楽器を続けていました。嬉しいことでした。そのときはシベリウスの「フィンランディア」や、グリーグのピアノ協奏曲などを練習していました。

私ももう47歳です。彼は生きていれば45歳か。楽器は続けておられるのだろうか。この年齢になると、どれだけうまかった人でも楽器をやめている人が少なくないことに気づかされます。

というわけで、四半世紀前の都留の思い出でした。とにかくいいところだったという思い出です。

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