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小学校の通学班の、やんわりした思い出。(1432文字)


子供部屋は 子供部屋ではなかった。

姉の名前を冠した 
【〇〇べや】という、姉が手作りしたであろう

ダンボールとドングリと麻紐で つくられた、

かわいらしい プレートが
誇らしげに壁に掲げられていた。


わたしは、

この部屋は姉のもので、

わたしは 【お邪魔させてもらっている】立場、

なのだ、と。


常に思い知らされ。


おとなしくしていたい気持ちと
自分の手の届かない場所に掲げられた
【〇〇べや】を取り消したい気持ち。


姉は私より
この世デビューという点で
常にリードしているということ。


私がいなかった年月は父と母の愛を、
どのような形であれ彼女だけが受け取っていたこと。


彼女にとって いや


【3人家族だった彼ら】にとって



わたしは



【厄介な侵略者、邪魔者、面倒な存在】

かもしれないこと。



それでも姉は いつも

精一杯わたしの姉であったこと。


通学班の班長だった姉と
小学1年生だったわたし。

手を繋いで隣を歩いたこと。

たまに私の分の荷物も持ってくれたこと。

彼女のほうが荷物が重いのに。


お姉ちゃんのランドセルに付いていた、
水色の鈴と、その鈴の上で寄り添っていた
リラックマとコリラックマ。

お姉ちゃんのランドセルに付いていた、
透明カプセルの中、
濃いピンクの海を泳ぐ小さなラッコ。


わたしが小学校に入学する前
お姉ちゃんのランドセルを背負ってみたら
すごく重くて数歩しか歩けなかったこと。


お姉ちゃんはすぐに中学生になって

私もいつの間にか6年生になって

通学班の班長に選ばれて

1年生は いたずらが好きな可愛い子たちで
ふたりとも女の子で
2人して仲良しで

ほんとうは私の右手と左手と
手を繋いでくれないとだめなのに

どんどん走っていくから眩しくて。


一緒にしりとりをしてくれて
ひとりの子は しりとりで
自分の番に る が きたら
毎回 ルビー! って 言ってたこと。

もうひとりの子は
おとなしい子だったけど
同い年の友達に引っ張られて
よく笑うようになったこと。


ふたりとも私と手なんかあんまり
つないでくれなかったけど

先を走る あの子たちに

見えるとこに居てね、って声をかけたら
それはきちんと守ってくれたこと。



学校が苦手なわたしが
もうすぐ校門ってところで

班長のくせに、急に任務を放り出して

あっ忘れ物が、とか言いながら離脱しても。

それも何回も。

みんな笑って許してくれたこと。


私が小学校を卒業するときに

年下の女の子たちがみんな残念そうにして

プレゼントや手紙をくれたこと。


1年生の子がくれた手紙に

「わたしもがんばるから
 〇〇ちゃんもがんばってね。」って
書いてくれてたこと、嬉しかった。

便箋はロディちゃんっていう
ロバをモチーフにした
風船のおもちゃ(座れる)の柄だった。

うちには黄色いロディちゃんが今も居る。

その手紙と 一緒にくれたハンカチ
やさしいピンク色のハンカチで
かわいいフェルトの苺が付いていたこと。
嬉しかった。

いちばんうれしかったのは
彼女がわたしのことを考えてくれたこと。

物をもらって嬉しかったわけではない。

でも、その物を作ったり選んだりしてくれた
時間は、彼女自身の時間を、
わたしのことを考えるという行動に
費やしてくれていて、

その証拠となる物を、
わたしに、って、贈ってくれたこと。

それがすごくすごく嬉しかった。



班長としてはどうだったかわからないけれど、


私が班長をした班のひとたちにとって、


あの頃のわたしが

あの頃の彼らにとって

友達だったのなら

それがすごくいまのわたしを

支えてくれている。


〜読了ありがとうございます〜

金魚の水換え中に渦巻きで遊んだやつ。
(おまけ)

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