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ご飯粒からポストイットへ(元教授の接着・粘着シリーズ、その1):定年退職39日目

皆さん、昔の接着剤として何が一番思い浮かびますか? 私たちの世代ではご飯粒でした(私たちは、裏の白いチラシがあると今だにメモ用紙に使いたくなる世代ですので、参考にしなくてよいですが、昔は本当にそうでした)。紙が破れると、ご飯粒をつけた紙で補修していたのです。


今回から少し「糊」の話を書こうと思います。というのも、前回「紙」の技術展が開催された大阪産業創造館で、5月の末に接着・粘着に関する技術展があるためです(本日申し込みをしたので、その前夜祭的な感じ?です)。その技術展の内容に関しては、追って報告しますが、接着・粘着の技術はとんでもなく進化しているのです。楽しみにしてください!


さて、身の回りの「糊」製品としては、ポストイット、瞬間接着剤、セロテープ、スティック糊、テープ糊、両面テープ・・・主に文具ですが、本当にたくさんあります。それぞれについて、いろいろお話ししたいエピソードがありますが、今日はポストイットに焦点を当てます。

3Mのポストイット

ポストイットは、アメリカの3Mという会社で発明されました。現在では類似の付箋がいろいろなメーカーから出てきており、文房具店でも1コーナーを占めています。3Mの役員さんのインタビュー記事によると(注1)、3Mでは最初からこれを作ろうとしたのではなく、偶然から生まれたそうです。

3Mのある研究者が「よくつくが、簡単に剥がれてしまう」という接着剤を作ってしまい、最初、それは失敗作と見なされたそうです。ただその原因を詳細に調べてみると、面白いことに、ひとつひとつの接着剤が小さな「球」のようになっていて、くっつくときに平たくなり、剥がすと球に戻るのを見つけたそうです。そのため、「よくつくが、簡単に剥がれた」のです。その後、用途を探し当てて、現在に至ったとのことでした。私としては、単なる思いつきではなく、その原理を調べて明らかにしたことと、それを具体的な用途に結びつけたところに感動しました。


ポストイットは私にとっては何かと頼りになる存在でした。十種類以上の形のものを持っていて、その色違いまで合わせると何十種類にもなりました。今回定年退職で大学の机を整理したところ、未使用のポストイットがたくさん出てきました。


それらの使い道は多岐にわたり、

・(ノートに書くほどでない)ちょっとしたメモ
・急に入ってきた予定
・当日のTO DO
・購入予定の本や物品
・秘書さんへのお願い
・学生への連絡事項・・・などなど

それ以外にも、以前は資料送付や書類提出の際、1枚の紙で送付状(かがみ)を作成していましたが、最近はほとんどの場合ポストイットに代わりました。

変わり種の各種付箋


このように私がポストイットを頻繁に使用する様になったきっかけは、十数年前に読んだある本でした(本の名前、著者名を探しましたが、わかりませんでした。申し訳ありません)。要約としては、ポストイットにはいろいろな使い道があり、著者は1日に1冊くらい使ったそうで、あらゆる用途に使いなさい、という内容でした。そして私が特に感激したのは、最大のイベントはその用事が終わった時に、盛大にそれらを剥がしてゴミ箱に捨てなさい、そして完全に忘れなさい、ということでした。ストレス解消になるとともに、忘れることの重要性を学びました。


“私の好きな話で(こちらもどなたの話か忘れてしまいましたが)、「ノートは若い時には覚えるために書くものだが、年取ってくると忘れるために書くものだ」という話がありました。私の場合、その最たる物がポストイットでした”


私は、それ以降ポストイットの使い方を完全に見直しました。その結果、大学のデスクのMac画面の回りにずらっとポストイットが貼り付けられました(少し前のモニターは枠の部分が大きかったので、十枚くらい貼ってありました。パスワードまで貼っていたので、学生たちに笑われました)。

海外で購入(多分)した付箋


また、私の手帳(そのうち詳細を書きたいと思っています)は、沢山貼った小さなポストイットのおかげでかなり分厚くなっていました。いろいろな情報(街中、読書、テレビなどで仕入れたもの)を小さなポストイットに書いて貼っておき、それらを組み合わせて挨拶や授業中の小ネタに使いました。

小ネタ用ポストイットだらけの私の手帳


そして一番重要な使い道は研究の時でした。まず気づいたアイディアをすべて、1枚に「1つずつ」メモをしていき、机やノートなどに貼ります。そして頭を整理するのですが、剥がしては貼り付けを繰り返して分類分けをし、どんどんまとめていきます。ある程度整理できたら、それをiPhoneやiPadに撮っておくのです。これは、とても良い「一人ブレインストーミング」になりました。


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注1:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210426-1876988/より


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