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安全保障の書評と評論

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書評:『習近平が尖閣を占領する日』(日高義樹)

書評:『習近平が尖閣を占領する日』(日高義樹)

米国共和党に近い日高さんの2021年の著書。Kindleで読んでみた。

まあ今回も刺激的な内容であるのだが、日高さんの著書の怖いところは、過去のものを見てもあながち間違っていないことである。おそらく、CIA系の米国の世論操作も混じっている(米国の共和党系シンクタンクからすれば、それが仕事であるし、ポジショントークでしかないが)とはいえ、米国の外交姿勢や、米国の軍事を考えるに日高さんの本を時々読む

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書評:『決定版 大東亜戦争(上下)』(波多野澄雄, 赤木完爾 , 川島真, 戸部良一, & 3 その他) その1

書評:『決定版 大東亜戦争(上下)』(波多野澄雄, 赤木完爾 , 川島真, 戸部良一, & 3 その他) その1

天皇陛下が、「先の大戦」として振り返る戦争を大東亜戦争とすべきであると言うようなことを含めて、総合的に先の大戦を振り返っている本である。結論すごくよかったので、今回、全体の書評を書きつつ、詳細の部分も力が及ぶ限り書いてみようと思う。

最初に、先の大戦をこの書評上、大東亜戦争と呼ぶことにする。 Greater East Asia War と書けば、間違っていないことがわかるであろう。この解説自体も

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書評:『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』(岩田清文, 武居智久, 尾上定正, 兼原信克)

日本の安全保障について学ぼうと、兼原さんの本を読んだ続きがこちら。どうも、安全保障論を読んだけど、軍事方面の内容が薄いのが不満。餅は餅屋ということで、陸海空の自衛隊の一番上だった人たちがOBになっていて、対談しているのがこの本である。この本は、自衛のリアルがわかってよかった。

ここで此処で対談している人たちは全て良いのだけれども、結論、日本の安全保障はかなりまずい状態であることがよくわかったし、

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書評:『安全保障戦略』(兼原信克)

書評:『安全保障戦略』(兼原信克)

日本の安全保障って大丈夫なんだろうか、と日々不安に思っている中、amazonさんがこの本を勧めてくれたので、ポチってみたのだが、結果、さらに不安になるという事態が生まれました。

著者の兼原さんは大変に活躍した外務省出身で、内閣府で働いた官僚のようです。日本の安全保障分野の第一人者だったのでしょう。

本の内容を辿っていくと不安になることばかりでした。まず、安全保障なのに、霞ヶ関から半径3km程度

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書評:『米中海戦はもう始まっている』 (マイケル ファベイ,赤根 洋子)

書評:『米中海戦はもう始まっている』 (マイケル ファベイ,赤根 洋子)

まあ、この本を1冊読むだけで、オバマ大統領が世界の平和を壊したということが良く理解できる。ノーベル平和賞をとったオバマ大統領であるが、少なくとも、日本の平和はめちゃくちゃに壊してくれたことが良くわかると思う。この本を読むと、いかにして、オバマが日本の平和を壊して中国の脅威を増長したいのかが良くわかる。

海と空の無法者である中国軍原著は、"Crashback"という。Crashbackというのは、

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南シナ海の覇権

南シナ海の覇権

日経新聞でも安全保障の記事が出るようになってきて、嬉しい。

社会面などと同じく、安全保障・外交の面をしっかり作って欲しい。よくわからない国際面ではなくて。

で、記事の内容である。

中国が前線を広げる動きに出ている。これは、北朝鮮を攻めつつ、チベットを奪ったことがあるなど、一種の陽動作戦であるから注意が必要である。現在の中国は、インド、南シナ海、東シナ海、黄海の4箇所で同時に緊張を生み出してい

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安倍ちゃんの置き土産:岸信夫さん

安倍ちゃんの置き土産:岸信夫さん

私は、政治家について不勉強なので、岸信夫さんを知りませんでした。

安倍前首相の弟さんである岸信夫さんが、防衛大臣になりました。

私は、安倍ちゃんは経済財政はともかく、外交はよくやっていたと思っておりまして、特に、中国の対策、韓国の対策、米国とのパートナーシップというのはうまくいったと思います。最近の米中の対立の中、日本が譲歩したわけでもないのに、中国もうるさいことを日本に言ってこない方向になっ

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ポンペオの演説で思い出すこと:トランプ政権の対中国戦略は4年間一貫している

ポンペオの演説で思い出すこと:トランプ政権の対中国戦略は4年間一貫している

さて、ポンペオの演説である。

私からすると、あまり驚くところはない。その要旨の要旨を語るとすれば、

・今まで中国と話してきたが嘘ばっかりで「もうたくさんだ」
・よって中国と話しても時間の無駄だ。話にならない
・で、中国共産党を潰すしかない
・同盟を結んで中国をぶっ潰そう
・中国市場へのアクセスを恐れて中国との経済をシャットダウンしない国があるけど、なんだかなあ。NATOなのに香港を批判しないド

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書評:『空母いぶき(1)- (13)』 (かわぐちかいじ, 惠谷治)

書評:『空母いぶき(1)- (13)』 (かわぐちかいじ, 惠谷治)

ついに完結。空母いぶきということで、早速読んで見た。今回は、13巻だけでなく、全シリーズを通して感想を述べてみる。

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『空母いぶき(13)』について
まずは、最終巻の13巻。漫画なので、ネタバレしない様に進めていく。

12巻までがとっちらかった形になったので、最後の1巻でどうまとめるのか、興味津々であった。「どうやっても、あと1巻ではまとまらない

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書評:『世界ウィルス戦争の真実』 (日高義樹)

共和党に近い米国シンクタンクであるハドソン研究所の主席研究員日高さんのコロナウイルス事件後の初の本。

相変わらず過激に聞こえる米国共和党寄りのハドソン研究所の日高さんの主張であるが、これはこれで聞いておくのが良いと私は思っている。

本の内容新型コロナウイルスであるが、これは、生物兵器として開発されたものではない。だけれども、それを生物兵器のように使ったのは習近平。2019年11月よりウイルスの

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書評:『アメリカの大楽観時代が始まる 中国とイランはすでに敗れた』 (日高義樹)

書評:『アメリカの大楽観時代が始まる 中国とイランはすでに敗れた』 (日高義樹)

毎度、ハドソン研究所の研究員の日高さんの本。北朝鮮の情勢が怪しくなったので、改めて買って、読んでみた。

第1章は、トランプの政策で株価が上がってて米国は楽観的になっているよね。この楽観はすごいという話になっている。まあ、感想はあとで。

第2章はアメリカは中国に勝った。米国は中国と通商戦争しているけれども景気が折れることもなく成長している。中国はしぼんでいて、米国の勝ちだねという内容。ついで、米

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書評:『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 (大木 毅)

書評:『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 (大木 毅)

グデーリアン将軍、ロンメル将軍と来て、ソ連側の戦線が気になり、この本も買って読んでみた。例によって、私は戦史に詳しく無いので、大変な新しい知識を得ることとなった。

甚だしかった私の勘違い私は知識が少なすぎ、大きな勘違いをしていた。ソ連とドイツの戦争は、西側の戦線がどうでもよくなるぐらい大きな戦争だったのであり、第二次世界大戦の中心だ。太平洋戦争などとは、比べ物にならない被害が出ている。

ソ連だ

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書評:『「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨』(大木 毅)

書評:『「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨』(大木 毅)

グデーリアンさんに引き続き、ロンメルさん。こちらは、名前は知っていた。こちらも、スラスラ読めて、良い感じであった。

私は戦史に詳しく無いので、初めて知ることが多くて面白かった。

ロンメルさんがなぜ砂漠にいたのかもよくわからないでいたのだが、ロンメルさんの最近の伝記を読んでよくわかった。あまり文学部の人が戦争ものを翻訳しないみたいなので、ロンメルさんの神話というのが多かったのだけれども、この本は

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『戦車将軍グデーリアン 「電撃戦」を演出した男』 大木 毅

あまり第二次世界大戦というものに興味がないのだが、戦略好きとしてはこういう文献に目を通してしまう。そして、面白かった。

私は戦史に疎いので、グデーリアンという人を初めて知った。電撃戦という言葉は聞いたことがあるが、なるほど、インチキであることがわかった。電撃戦などというものはなかった。

グデーリアンはいいところに生まれた坊ちゃんで、お父さんが軍人で、まあまあえらい。これからは通信の時代じゃない

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