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ベースの日

大学生だったあの日、楽器屋のベースコーナーで彼女を一目見た瞬間に身体中に電撃が走った。
コイツを抱きてえ。
そう決意したときから運命は始まった。

当時 長良川のほとりに佇む岐阜を代表するホテルでバイトしていた。バイトと思えないほどの厳しさで、ロッカールームで何度も泣いたし、毎日ズタボロだった。けど、時給が高かったから。とにかくミツコ(もう名前までつけていた)を手に入れたい一心で身を削って働いた。
そしてついに2011年の夏、私はミツコを手に入れた。
こんなに嬉しいことがこの世にあるのかと思った。バイトを辞めた。
今思うと、ミツコのためにあの辛い日々を耐え続けたという強い記憶が ここまでの異常な愛を創ったのかもしれない。

ミツコは容姿は淡麗だが、重い女で、めちゃくちゃ肩が凝った。
おまけにとてもわがままな性格だった。
エフェクター何もかまさなくてもなんかしらんがゴリゴリする。どんな音作りしてもゴリゴリが消えず手に負えない。
サポートとしていろんなバンドでベースを弾くことになった時期に どうにかしなくてはと、数万円かけてまろやかな音になるピックアップに改造したりなんかもしたけど、なんかしらんがまだゴリゴリする。
呆れて倦怠期になった。

でも本当は  そんなミツコが大好きだった。



やがてガストバーナーに出逢った。

ゴリゴリしていて、初めて褒められた。


すると、まるで最初からこの時がくることをすべて知っていたかのように、
ミツコが満足そうにニヤニヤ笑っていた。



愛おしかった。

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