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ブリジャートン家で結婚が重要な理由を、にわか知識で説明してみる

2月くらいに途中まで書いて放置していた記事が発掘されたので、改めて書き直してみます。近世イギリスの貴族事情にふんわりとした知識しかなかった私が初見時に疑問に思ったこと、それは…


クレシダに爵位はないってどういうこと?(5話)

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「あなたは夫もなく爵位もないまま」仕立て屋でダフネとクレシダが会話するシーンの字幕。女性であるクレシダに爵位なんてあるわけないでしょ?と思って不思議だった。調べてみるとどうやら「レディ」の称号のことっぽい。吹替だと「未婚でなんの地位もないまま」元の言葉だと「unmarried and untitled」なので字幕版の訳が失敗していると思う。

レディとレディじゃないってどういうこと??と疑問に思い調べはじめ、私なりに理解できたことは貴族の女性全員がレディではないこと。例えば7話のレディ・ダンベリー主催の既婚者夜会、ダフネのテーブルでレディ付きで紹介されたのはレディ・トローブリッジ(ダフネとサイモンがキスしちゃった舞踏会の主催)のみ。ルーシー・グランヴィル、キティ・ランガムはレディが付かない。なぜなら2人とも夫が爵位を持っていないから、ルーシーは夫が絵描きのミスター・グランヴィル(ベネディクトをスケッチに誘ったゲイの人)、キティの夫はランガム大将。なので2人には「レディ」が付かなくて「ミセス」。

貴族の継承をざっくり表にしてみました。

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レディは伯爵以上の家の娘に生まれるか、爵位を持つ男性の妻になるしかない(公爵、侯爵家は次男以下でも可)。公爵夫人はダッチェスと呼ばれレディより上の称号がつきます。
だから結婚後のダフネは「ダッチェス」と呼ばれている。クレシダの母親はレディ・カウパーと呼ばれていたけれど、クレシダは「ミス・クレシダ」なので子爵以下の家の娘だと推測ができる。

結婚市場の令嬢たちの第一志望は、結婚して爵位持ちの男性か有力な貴族とつながり「レディ」の称号をつけること、それが将来の保証なのです。なぜならイギリス貴族は基本的に長男が代々続く爵位や土地家屋などの財産を相続する。領地などを分割してしまわないように法律で決められている。
次男以下は各家の経済状況にもよるけど、軍人や聖職者になり自活できるようになるのが基本ルート。長男が後継を残さず急逝した場合は次男、三男の順に爵位継承する。だから、アンソニーが俺には弟がいる!と言えたのは結婚しなくても資産が知らない親戚にいく心配はなく、妹たちが路頭に迷う心配がないから。ダウントンアビーや高慢と偏見では、家族に息子が居ないからこそ相続人の問題で右往左往してたので相続問題はとても重要だったのだと思う。

爵位があると、どんなに貧乏貴族でも代々の屋敷と領地は保証されているので極端な話、生きている限り土地収入はある程度保証されているので無一文になる可能性は低い。これが次男以下の場合はその家の状況で相続される資金は変わるし、立ち回り次第では困窮する可能性が爵位継承者より高い。
ちなみに、ブリジャートン家は作中では有力な一族という設定なので次男以下でも充分な資産がある。次男ベネディクトも三男コリンもお金に困ったりはしない予定。それでも8人兄弟姉妹が余裕ってどんだけ収入あるのよ??と思う。

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ダフネは仕立て屋で喧嘩を売ってきたクレシダに対して「公爵夫人の友となるか敵となるかあなた次第よ」とふっかけます。
なぜならダフネが公爵夫人になった場合、敵対したら公爵家が主催する催しに呼ばれなくなります。貴族の中でもトップである公爵家と敵対関係というだけで、クレシダとの交友を控える家も出でくるかもしれない。だからダフネはクレシダに強気に出られた。もしクレシダが有力な貴族の娘だったら、効果はなかったはず。ダフネが口にしていた「長女の結婚は妹達に影響する」とか、評判が落ちることを気にするのもそういう理由。評判が悪くなると誰からも呼ばれなくなって家の衰退につながるから。

ドラマ内で一番結婚問題がシビアなのがフェザリントン家。姉妹のみで息子が存在しない。男爵である父はギャンブルで借金を増やしていて娘の持参金も使いこんでしまうレベル。シーズン1最終話でフェザリントン男爵が死亡したので、男爵家の爵位とともに代々の土地家屋は次代継承者のものになってしまうことが示唆されてた。シーズン2でその辺の部分が掘り下げていくのだと予想。ブリジャートン家が金銭的に安泰な分、フェザリントン家で当時の貴族の裏の部分やお金の問題を描写していく意図なんだろうなあ…。原作小説だとペネロペ以外のフェザリントン家の描写は、ドラマほど多くないので増えているのはそのためなのかなぁ?と思ってます。あと原作4巻に向けた展開へのカタルシを高める効果もあるよね。きっと。

思いのほか長くなってしまったので今回はこの辺で、にわか知識なので間違っている部分もあるかと思います。その辺の整合性含めて自分で調べてみるのも楽しいと思います。そして間違いを見つけたら教えてください。シーズン2に向けてお互い知識の水を分け合いましょう(ぺこぱ風)

色々調べるのに村上リコさんの書籍が役に立ちましたので、さらに色々知りたい方におすすめです。とても読みやすい。
ブリジャートン家の時代よりは少し最近の時代が中心なのだけどそれでも必要な情報はたっぷりです。


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