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梅干し作りから考えるデータ社会での家庭科の可能性

1 梅干しとデータ社会

夏休み、どんな時間を過ごしていますか?
私達、みらい家庭科ラボのスタッフ2人がお届けしている音声配信でも
先日の収録では夏休みの過ごし方についての話題になりました。

スタッフの1人は初めての梅干し作りに挑戦!
もう1人のスタッフの私はオンラインセミナーで「データ✖社会科学で持続可能な未来を創る ~ソーシャル・データサイエンスの重要性~」についての講義と対談を聞くなど学びの多い時間を過ごしました。

そんなお互いの近況を配信でおしゃべりしている時、私がどうしても音声配信でリスナーの皆さんにお伝えしたかったこれからの時代の学生に求められる3つの事もう1人のスタッフ木村が梅干し作りで経験した事が、これからの家庭科の可能性としてつながったのです!

なぜ、梅干し作りとこれからの社会で学生に求められる力が家庭科でつながるのか? それをこれからお伝え出来ればと思います。

2 セミナー受講で印象に残った事

私が先日、gacco LIVEでの「データ✖社会科学」をテーマにしたオンラインセミナーは膨大な情報のシェアとそのスピード感、七丈先生のとてもわかりやすい講義でいろいろな面で学びの多いものでした。
中でも、今後学生に求められる力として下の3つの力の説明をしていただい事は強く印象に残り、音声配信でも、もう1人のスタッフに伝えました。

・時代の変化を許容する事が出来るレジリエンス
・時代の変化に対応して行動を変えていける俊敏性
・時代の変化を察知できる洞察力

受講したセミナーでは、データサイエンス、ビッグデータ、インターネットの現状、デジタル社会の拡大などの説明をふまえ、ソーシャル・データサイエンスの登場とその説明について拝聴しました。さらに一橋大学の2023年度新設ソーシャル・データサイエンス学部、研究科の概要などの説明もあり、新しい学部に未来の希望を感じました。

でもやはり強烈に印象に残ったのは3つの力! これは時代のニーズに合ったこれからの家庭科を考える鍵になると確信したからです。

3 初めての梅干し作りと情報利用

一方、音声配信の収録時、もう1人のスタッフ木村が提供してくれた話題は初めての梅干し作りについてでした。なぜ梅干しを自分で作るに至ったかの詳細な話は割愛しますが、青梅という梅作りで有名な場所で梅干し作りのベテランの農家の方に自分で漬けた梅干しを見てもらえる機会を得て感じた事などを語ってくれました。

初めて梅干しを作るにあたり、梅干し作りについての情報を収集し、情報を取捨選択し、試行錯誤を繰り返しながら作っていったそうです。
梅干し作り一つとってもネット上には多種多様な情報があり、時として情報が矛盾している事もあり、家庭科教師としての経験から情報を精査し作業を進めていったそうです。
その過程で何か違和感を感じれば、情報をうのみにせず自分の経験値をもとにして作業を進めたと聞きました。

4 梅干し作りを通して感じた力

この梅干し作りの話は、単に家庭科の先生だから「夏休みに保存食作りに挑戦したのね。」という内容ではありません。

最初の話題として提供した「データ✖社会科学」のセミナーで聞いた学生に求められる3つの力と結びついていると、木村は話してくれました。

初めての梅干し作りに挑戦して、最初は自分で選んだどこかのサイトのレシピ通りに作り始めます。でも各工程の手順や作業の内容、その作業にかける時間などに違和感を感じれば、すぐに軌道修正して自分が「こっちの方がいいかも」と感じた方向に切り替えます。
これは規模は違いますが変化に敏速に対応する俊敏性にあたるかもと話してくれました。

さらに梅を干すなど、どこかの工程で自分が予想していた結果にならなかったら、すぐにどうすればいいかの手立てを考え実践したと聞きました。これは変化に柔軟に対応するレジリエンスとも言えるのではと語ってくれました。

そして、最後に自分で漬けた梅干しをベテランの農家さんに見ていただき梅干し作りに対するアドバイスやいろいろなお話を伺い、自分なりの梅干しの作り方(概要)をつかむ事が出来たと感じたと話をしてくれました。
これは3つの力の最後の洞察力とも言えるのではないかと話が進みました。

これらの3つの力を梅干し作りと結びつける事が出来たのは、スタッフの木村の長年にわたる家庭科教諭や家庭での調理の担い手として経験に基づくものかと思います。
その経験は数値化された目に見えるものではありませんが、木村の中に経験に紐づいた確固としたデータとして存在するのだろうと思います。

5 データ社会と家庭科

音声配信収録の終盤は「変化していく社会、特にAI技術が劇的に進化していく時代を生徒達が生きて行くために家庭科はどう役に立つのだろう」とテーマに移りました。
さらに言えば、多種多様なデータが収集され、その活用がさらに進んで行くデータ社会での家庭科の意義とは何かという事につながります。

みらい家庭科ラボを立ち上げた木村と私は半世紀以上家庭科の世界と何らかの形で携わって来ました。
目を見張るほど想像も出来なかった位の進歩を遂げていく社会を目の当たりにして、2人に共通する家庭科の役割についての思いは「リアルな体験の重要性」「泥臭くても失敗をしても大丈夫な経験の場の提供」という事で
一致しました。

何か今までやった事がない事に挑戦しようと思った時、データ社会では膨大な情報を手に入れる事が出来、自分なりに取捨選択して実践してみる事が可能です。

ただ、梅干し作りに挑戦した木村も言っていたのですが、それが完成した時に「それが正しいのかどうかが分からない」「正解なのか自分で判断する事が難しい」という事でした。
実践結果に対する信ぴょう性の手ごたえを得るという意味では、ネットの中で疑似体験ばかりするのではなく何らかの実体験を積み重ねている事が強みになると私達は考えます。

その意味では家庭科はホームプロジェクトという学習活動も高校で取り入れる事が出来ます。身近な生活の中で自分で課題を考え、解決に向けプランを立て実践し振り返りをするという経験を積む事が出来ます。
以下はホームプロジェクトの説明です。

生活の中から問題点や課題を見いだし,これまでに学んだ知識や技術をいかしてその課題解決にむけて計画を立て主体的に実践していく学習活動

6 これからの家庭科への期待

こうして「梅干し作りがこれからの社会を生きていくための力を育む事へとつながる!」と実感した時、昔から受け継がれてきた食品保存や加工の文化について深い感動を覚えました。

家庭科はともすれば受験に不要な副科目として扱われます。その存在意義についても学校によっては疑問視される場合があります。
でも家庭科は今のような変化の激しい社会だからこそ必要で、生徒達が自分の身近な生活の中で何かを実践し経験値を高め、試行錯誤を繰り返しながら思考力を深めていく事が出来る科目として可能性に満ちていると思います。

私はすでに学校を退職し、教育現場の外側から実情を伺い知る事は出来ません。でも今も学校現場で家庭科を担当する木村に学校の様子を聞きながら、家庭科のみらいにために「みらい家庭科ラボ」として何か少しでも役に立てる事があればと微力ながら活動を続けています。

今回の音声配信は収録時のノイズがひどく、残念ながら公開出来ませんでしたが、可能であればさらにブラッシュアップした内容でとりなおし公開出来ればと思っています。

これまでの配信でもいろいろなおしゃべりをしています。
もし興味を持っていただけたなら、よろしければお聞き下さい。

https://stand.fm/channels/600abd3e2b4a4592fee6e251

「みらい家庭科ラボ」の活動などについてはこちらからご覧いただけます。

ラボの詳細については下記のHPをご覧ください。

最後に長文にお付き合いいただきありがとうございました。受講したセミナーの内容などはこちらの解釈で書かせていただきました。どうぞご了承下さい。(終わり)