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喜多山駅高架化後に新設される待避線をどう運用するのか考えてみよう

名鉄瀬戸線の喜多山駅付近が絶賛高架化工事中です。駅東側にある国道302号線、通称名二環にある踏切が交通渋滞の原因となっているからです。3月19日からは上り栄町方面が高架化され、上り仮線の部分に下り高架線の建設が始まりました。そして喜多山駅は高架化後2面4線の待避可能駅となることが既に判明しています。ではこの喜多山駅が瀬戸線初の待避可能駅となるわけですが、ダイヤはどのように変わるのか、いろいろ考えていきたいと思います。

瀬戸線の運行形態

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まずは簡単に、現在の瀬戸線の運行形態を整理します。停車駅は上図の通りで、特別停車などの例外はありません。

現在の日中ダイヤはいたってシンプル。栄町~尾張瀬戸全区間の普通が毎時6本あるのみです。優等列車はありません。昨今の情勢による利用者減でこうなりました。以前の日中ダイヤ、そして現在の夕方以降のダイヤは全区間の急行・準急・普通が毎時2本ずつと、栄町~尾張旭の普通が毎時2本加わる形です。尾張旭行きの普通は終点の尾張旭で後続の急行尾張瀬戸行きに接続、さらに尾張瀬戸発の急行から接続を受け、折り返し栄町行きの普通となります。

最も利用者が集中する平日朝ラッシュは、下手に優等を運転すると前の列車に追いついてしまうため、全列車普通で4分間隔の運転です。

このままだとほぼ使用機会なし?

冒頭で「喜多山駅が瀬戸線初の待避可能駅となる」と言いましたが、正確には誤りです。というのも、喜多山駅は仮線切替の際に下り線に待避線が新設されているからです。上り線高架化後は構内踏切の関係で本線側の線路が使用停止になり、終日待避線側を使用するようになったので、現在は待避可能とは言えませんが、その前までは待避設備を持っていました。

ではこの下り待避線をどう運用していたかというと、ほぼ使用していませんでした。夜間と日中に留置線の役割はしていましたが、本来の待避線の役割である追い越しはおろか、待避線側のホーム自体を営業ではほぼ使用せず、定期列車では夜間停泊→翌朝の始発の1本だけでした。

ではなぜ使用していなかったのか。1つは「上りに待避線がないのに下りだけ待避線運用するダイヤを構成する必要があるから」でしょう。名鉄は多くの路線は上りと下りはほとんど同じ列車構成、同じ駅で緩急接続、待避で回しています。そのため上りで待避ができないならば待避線を運用しないという方針もあるでしょう。

しかし運用すること自体は不可能ではありません。ではなぜしないか。2つ目の理由、「そもそも下りの待避線は必要度が薄いから」です。先ほどの停車駅図を見ると、喜多山駅から下り方面で通過駅があるのは急行だけ、しかもわずか2駅。現ダイヤでは、急行の前を走る普通は基本的に尾張旭で急行に接続するダイヤを採りますので、わざわざここで待避させる必要はないんですね。

そもそも、現在の瀬戸線は待避線なしを前提としたダイヤなので、現在のダイヤそのままでは使用機会はもちろんありません。現在のように待避線として使うか、せいぜい回送や試運転などが使うかぐらいです。当然ながら、待避線を使用するとなればダイヤが変わることになるでしょう。どのようなダイヤとなるか、いくつか候補を挙げて見てみましょう。

①朝ラッシュだけ待避線使用

これは概ね現在のダイヤを踏襲する場合です。全列車4両固定の瀬戸線では増結が行えないので、朝ラッシュは運転本数を増やして対応しています。しかし、運転本数を増やすと列車間隔が狭くなってしまい、優等列車が運転できません。それを解消するのがこの喜多山駅です。

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これが栄町基準の所要時間表です。栄町~喜多山は急行・準急が普通より5分速く走っています。現在は普通が4分間隔ですが、これを急行・準急と普通それぞれ8分間隔にすれば、本数そのままで優等列車化できます。普通はこの駅で待避を行い、急行・準急の1分後に普通を発車させれば、後ろの急行・準急とは7分開きますので、ギリギリ栄町まで逃げ切れます。ただし1分続行だと次の小幡で追いついてしまうので、実際には2分続行にして、後続の急行を少しゆっくり走らせたりする配慮は必要かと思いますが。

日中は列車間隔もそこまで詰まっていないので無理にダイヤを変更しない、というのであればこのように朝ラッシュだけ活用する方法も考えられます。これが一番現実的な待避線の使用の仕方じゃないかな、と思います。

②停車駅変更を行い終日待避線を使用

現在の瀬戸線は全列車とも尾張旭以遠は各駅に停車しますが、2004年以前は急行が水野と瀬戸市役所前の2駅を通過していました。今でも三郷・新瀬戸・尾張瀬戸に比べこの両駅は利用者が少なくなっています。そこで、待避線完成と同時にこの両駅を準急停車駅あるいは普通停車駅へ降格させ、急行と普通の緩急接続を喜多山で行う、というものです。瀬戸方面主要駅は所要時間の短縮につながります。この場合、ダイヤは現在の物とは全く異なる形になるでしょう。

なぜ停車駅変更が必要かと言いますと、現行ダイヤは、急行と普通が走る時間帯には尾張旭で緩急接続を行うように組まれているからです。現行ダイヤそのままに喜多山で待避を行うと、普通が7分以上停車することになります。もちろん現在はその時間で尾張旭まで走り切っているわけですから、当然ここで待避をする意味がありません。そこで急行を利用者の少ない水野と瀬戸市役所前を通過させ、両駅の本数確保のために普通を尾張瀬戸まで延長することで、喜多山以東の停車駅差を増やし、待避に意味を持たせる、というわけです。まぁ7分停車は非現実的なのである程度の時刻調整は必要だとは思いますが。

ただ、これはまず実現しないでしょう。このご時世に大掛かりな停車駅変更を行い、本数を増やす必要のある改正を行うとは思えません。というより、正直こうでもしないと終日待避線を使用する見立てがつかないんですね。

そもそもの話、全長わずか20km、東山線と同距離の路線で待避を行う必要があるか、ということです。喜多山駅は路線のほぼ中間点にあり、待避を行う立地は悪くないんです。しかし、先に述べたように、喜多山駅から下り方で通過駅があるのは急行だけでそれも2駅、所要時間にして3分の差があるだけです。上り方も通過駅は多いですが、駅間が短い上にカーブによる速度制限が多く、こちらも4分の差しかありません。

現在日中がすべて普通で回しているように、路線が長くないため無理に優等をねじ込まなくても所要時間がかかりすぎることはありません。なので次は、待避線を別の方法で活かすことを考えてみます。

③待避線ではなく折り返し線として活用

高架化後の詳しい配線は分かっていませんが、渡り線や入換信号があれば喜多山折り返しを日常的に行うことができます。例えば、普通の一部を喜多山止めとし、喜多山でその先各駅に停まる準急に連絡させ、普通は折り返し栄町行きで瀬戸から来た急行や準急から連絡を受ける、という現在の尾張旭に近い形態も採れます。当駅止めを待避線側に入れ、先へ行く連絡の列車を先発させた後本線上で折り返し、反対ホームの待避線に入れ換えて連絡を待つ、という具合です。名鉄では東岡崎などでこの方法が行われています。

ただこうなると大森・金城学院前駅の本数が減ります。瀬戸線では栄町、大曽根、小幡の次に利用者が多い主要駅で、特に通学時間帯は非常に混雑します。また、その先の印場と旭前も名古屋市内の普通停車駅に比べると利用者は多いです。それならば入換が必要なく、車庫があるため車両交換などもしやすい尾張旭まで運転した方がいいじゃないか、となる可能性が高いですが、やはり昨今の利用者減における減便ダイヤを踏まえると喜多山折り返しを行う可能性もあるんじゃないかな、と。

④結局ほぼ使わずじまい

この可能性もゼロではありません。以前の下り待避線のように、留置や回送・試運転などが使用するだけで、ダイヤ自体は変わらず、となってもおかしくありません。やはりこのご時世ですから利用者が減っています。現在日中には優等列車がないぐらいですから、待避線を造ったが使わない、という判断がされてもおかしくはないでしょう。

個人的な予想

今後の感染状況とそれによる利用者数次第にはなりますが、①のラッシュのみ活用する可能性はあるかなと思います。ただし、②のような大幅なダイヤ変更を行い日中も含め終日使用する可能性は相当低いと見ています。なにせ現行ダイヤが日中普通しかないので待避線を使いようがないんですよね。そして先発先着ダイヤで慣れている瀬戸線の利用者が緩急待避ダイヤへと移行すると混乱が起こることも考えられます。候補には挙げましたが③の可能性も低いでしょう。結局のところ④の非常時にのみ使用しダイヤはそのまま、に落ち着く気がします。見れば見るほど瀬戸線に待避線の必要性がわからなくなってきましたし、やはり瀬戸線は独立線区なんで先発先着の平行ダイヤでいいんじゃないですかね。というわけで喜多山の待避線について考えてみました。