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「黄電復活」クラファンはなぜ人気がなかったのか。

名古屋市の市営交通が今年で100年を迎えます。その記念イベントの一環として名古屋市が打ち出したのが「黄電ラッピング列車の運行」。東山線と名城・名港線、それぞれ1編成ずつ懐かしの黄電を模したラッピングを施すというものです。その元手となる資金をクラウドファンディングという形で募っていました。

詳しくはこのサイトに書いてありますが、ふるさと納税形式のクラファンとなっており、簡単に寄付ができるようになっています。しかしながら、このプロジェクト、残念ながら支援があまりにも少なすぎるんですね。最終的な達成率がわずか14.9%と、非常に寂しい数字となっています。なぜここまで人気がないのか、見ていきたいと思います。

(「金も出さないのに文句だけ言うのか」と言われるかもしれないので、一応補足しておきますと、私はこのプロジェクトに対し支援を行っています。大きな額ではありませんが、出資者の1人としてこのプロジェクトに対する思いも含め語っていきたいと思います。)

問題点① 目標額大きすぎ

このプロジェクトの目標寄付総額は1,700万円となっています。いや、2編成ラッピングするだけにしてはあまりに大きくないですか…?というのが正直な感想です。

参考までに、現在の名古屋市営地下鉄の車両ラッピング広告のお値段を見てみましょう。

「交通広告メディアガイド2022」25ページ

名城・名港線のみですが、1カ月40万円程度です。制作費や取付・取外しにかかる費用が別にありますし、このラッピングは前面は入っていないので多少差があるとはいえ、1,700万円とは比にならないお値段です。しかも黄電ラッピングは「令和4年8月初旬~令和5年1月下旬まで(予定)」とのことなので、約半年と考えると、名城線の方の1編成あたりが200万円。東山線の方は注目度が高まるのでさらに高くなったとしても、2編成合わせて1,000万円もいかないでしょう。

問題点② 返礼品が正直ひどい

見てくださいこの返礼品。出資者全員に対する返礼品が手抜きのボールペンで、1万円以上出して名前を掲出。5万円出してもたった5組10人しか招待されないイベントへの抽選に参加できるだけです。さらに言ってしまえば、日進工場は事前に予約すれば見学ができます。今はコロの関係でできませんが、普通にこんなページがあるんですよ。これに5万円、しかも抽選制。これはいかがなものですか…。せめて記念ドニチエコきっぷとかでもつけるべきだったんじゃないですかね。

問題点③ そもそもプロジェクト自体が…

黄電を模したラッピングをする、という趣旨は分かりますし、100周年にふさわしいと思います。しかしそれがマニアに受けるかどうかはまた別問題なんですよね。ラッピングされる車両は既に調達情報で確認できます。東山線が5177編成、名城・名港線が2134編成です。

偉大なるファンサイトまるはち交通センター様より

これは12年前にあった愛知県の子育て応援の日「はぐみんデー」のPRラッピングが施された5050形と2000形です。黄電を模したラッピングというのは、要はこんな感じの電車になるというわけです。

正直言いましょう。まったく黄電らしさがありません。車両デザインがもろ1990年代の電車を1960年代の電車の塗装にしてもね…って感じです。さらに東山線の5177編成は前照灯のLED化済みで、名城・名港線の2134編成は前照灯がHIDの編成です。せっかく昔の塗装にするのにハロゲンではなく白い光の電車というのはなんとも微妙です。さらにさらに、両路線ともホーム柵整備済み。東山線は地上区間という救いがありますが、名城・名港線はどこで撮影すればいいんだって感じです。名港工場?

黄電のクラファンページより

これが本来の黄電のイメージです。どうですか、見比べてみると。ただ、昔の電車の塗装を現代車両に…というのはわりかし色々な鉄道会社でもやっており、関東では京王8000系の8713編成が昔の緑色の塗装になっていたり、東京メトロ1000系は車両コンセプトそのものが昔の車両の復刻です。関西では近鉄が様々な路線に復刻塗装の車両を走らせています。なのでこれも意外と現物を見たら大丈夫…というのを期待したいですね。

まぁこの黄電塗装と現行車両との合わなさ、そして根本的な名古屋市営地下鉄のマニアの少なさから、このプロジェクト自体の認知度も高くないように思います。また、実のところこのプロジェクト、クラファンが未達成でも実施されるんですね。これがイマイチ支援を集めない大きな理由だと思います。

個人的な本音

このクラファン、琴電の京急クラファンの成功を受けて局内で企画されたのかな、と個人的には思っています。しかしあちらは昔の塗装を現代の車両に復刻するのではなく、昔まとっていた塗装に戻す、というものですし、京急という屈指の人気私鉄で愛された旧1000形という形式の企画というのもあって成功を収めたんですよね。

となると同じ琴電に元名古屋市交通局の車両がいますから、ぜひ琴電と協力して真の"黄電復活"をしてほしかったな、というのが1つ目の本音です。

左の600形は元東山線の顔なので黄色一色がいいですね。琴平線のラインカラーとも合っています。右の700形は名城線の紫帯を加えた感じで…と妄想が膨らみます。やはり、黄電はこの顔です。

まぁでも色々事情があるとは思います。なにせ公営地下鉄なので、資金面では制約も多そうです。名古屋市の車両をイベントの一環でラッピングするのはいいですが、遠く離れた四国の地方私鉄の車両を名古屋市の税金でラッピング…と聞くと違和感がありますしね。また琴電をラッピングしたところで名古屋市には特に何の利益もないですから、実現しなかったのは仕方ないでしょう。

もう1つ。このクラファンの返礼品のクオリティを見たらわかりますが、もう少しグッズ展開をしてほしいです。せっかく100年という大きな節目を迎えるにもかかわらず、相変わらずネックストラップやら水筒やらハンカチやら、便利グッズしか出してくれないんですね。おそらく売れ残り防止だとは思うんです。ゴリゴリのオタク向けの商品を出しても売れるかわからないけれど、ワンポイントでバスや地下鉄が入った便利グッズなら一般の方も買ってくれる。事実それが成功しているんですよね。ここ最近のグッズはほとんど売れ残っていません。

しかしオタクとしてはどうしてもマニアックな商品も欲しくなります。1番アツいのはとことん地下鉄大名古屋の復刻です。議会でも取り上げられていますし、可能性はゼロではないでしょう。黄電ラッピングするよりよっぽどマニアは喜びます。ぜひお願いできませんかね。

というわけで黄電クラファンについて振り返ってみました。これだけいろいろ言いましたが、実車が出たらそれはそれで撮影に行くとは思いますし、少し期待もしてます。今後の100年祭イベントを楽しみにしつつ、この辺りで終わりたいと思います。