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名城線を1周55分にしてほしい話

名古屋市営地下鉄名城線・名港線は2020年5月にホーム柵設置に伴い1周あたりの所要時間が50分から60分に変更されました。しかし、名城線を常日頃から利用している方ならわかるでしょう。「明らかに各駅での停車時間が他線より長い」ということを。

東山線では、ホーム柵の開閉時間として1駅あたり5秒が追加された…と記憶しています。5秒×22駅=110秒、つまり2分弱所要時間が増大したことになります。現在の東山線の片道の所要時間は約40分ですが、ホーム柵設置前はどうだったか。2011年の地下鉄時刻表を開くと約37分と記載されています。しかし、実は日中ダイヤはこの当時から全く変わっていません。当時の最速は37分でしたが、停車時間の関係で既に約40分での運転が行われていました。

話が逸れました。1駅あたり5秒、という数字を信用して、名城線の所要時間を計算してみましょう。ホーム柵設置前の名城線は10分間隔運転に揃えるために1周50分が基本でしたが、最速は1周48分でしたので、この48分を用います。5秒×28駅=140秒、つまり2分20秒の追加になります。48分+2分20秒=50分20秒、となります。

あれ?1周50分で運転できるじゃないか、と。しかしこの場合、余裕時分がゼロです。余裕時分ゼロで運転するなんてあってはならないことです(実際に余裕ゼロで運転させたとある西の会社は2005年に…ね)。なので、1周50分に2分20秒足すと52分20秒となります。そもそも、1駅5秒が誤りの可能性もありますので長めにとって、1駅10秒だとすると4分40秒の追加、つまり1周55分弱になります。

今度は現在のダイヤから逆算して見てみます。現在の1周60分ダイヤでは、50分の頃から10分増加しました。つまり各駅に均等に停車時間を追加する場合、1駅当たりの追加は600秒÷28駅=21.42…秒となります。ホーム柵の開閉時間があれど、各駅に停車時間が20秒も追加されていれば当然長くなったと感じます。

ではそもそも、なぜ1周60分になったのか。これは先に少し述べたように、「10分間隔運転に揃えるため」です。例えば金山駅を10:05に発車する左回りがあるとしましょう。1周の所要時間が50分の場合、1周し次の左回りとして金山駅を発車するのが10:55となります。この場合、10:05,10:15,10:25,10:35,10:45と運転すれば、10:55からは10:05以降の電車が1周回って順に戻ってくるので、綺麗な10分間隔となります。しかし、1周の所要時間が52分の場合、1周し次の左回りとして金山駅を発車するのが10:57となります。こうなると、10:05,10:15,10:25,10:35,10:45と10分間隔で発車していたところ、次が10:57と12分開き、その後が11:07,11:17,11:27,11:37と10分間隔になり、また10:57が1周して戻ってくる11:49に12分間隔になり、と非常に不均等なダイヤが出来上がるわけです。

そこで各駅に停車時間を追加し、1周60分としたわけです。そうすると、金山駅を10:05に発車する左回りが1周し次の左回りとして金山駅を発車するのが11:05となります。この場合、10:05,10:15,10:25,10:35,10:45,10:55と運転すれば、11:05からは1周回った電車が順に戻ってくるので、綺麗な10分間隔となるわけです。

この改正で交通局はダイヤ改正の理由について次のように記載しています。

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1番目がここまで長々と見てきた10分間隔運転を行うため、ということです。2番目は冒頭で触れたホーム柵開閉にかかる時間が追加されるため、ということ。そして3つ目は、正直建前感が半端ないですが、朝ラッシュの遅延解消という面では頷けます。以前私は平日朝に名城線の東部側を利用していましたが、ホーム柵の設置前は遅れが頻発しており6分間隔の電車が5分遅れてくることもざらにありました。原因はおそらく東部の本山~八事付近での停車時間不足だと思います。それが1周60分になると遅れてくることは、ほぼなくなりました。各駅の停車時間が長いので、遅れていてもその停車時間を削ることですぐに回復するということもあるでしょう。ただ…高齢者等にも利用しやすいダイヤは間違いなく後付けでしょうね。本当に高齢者を考えるのであれば他線も同様の停車時間にするでしょうし。

さてここからが本題です。この停車時間がべらぼうに長い1周60分ダイヤ、どうにかならないものか。そこで考えられるのが表題の「1周55分ダイヤ」です。

冒頭部分で計算したホーム柵開閉時間を含めた1周の所要時間は、1駅5秒追加の場合52分20秒、1駅10秒追加の場合54分40秒となります。つまり1周55分にすることは可能なんですね。

ただし、ここであれ?と思うかもしれません。先ほどまで延々と述べてきた、等間隔運転を行えないじゃないか、と。確かに仮にそのまま1周55分にした場合、どこかで15分開くか5分しか開かない時間が発生します。

そこで注目するのが現行の夕方ダイヤです。現在の平日夕方は名城線周回運転と名港線直通がそれぞれ7分間隔で、大曽根~金山では3.5分間隔になるダイヤです。あれ?7分間隔の場合、1周60分に合わないじゃないか、と。例えば金山駅を17:00に発車する右回りがあるとしましょう。7分間隔の場合、17:07,17:14,17:21,17:28,17:35,17:42,17:49,17:56と右回りが運転されますね。ところが17:00に出ていった右回りは1周して18:00に金山駅に戻ってきます。前の17:56から4分しか開いていません。7分間隔に則れば次は18:03に発車させなければなりませんが、3.5分間隔で1駅に3分も停車させるわけにはいかず、これでは等間隔運転になりません。

そこで交通局が採ったのが「名港線直通と一体化させる」ということです。現在の平日夕方のダイヤは、左回り方向が「大曽根→金山→(左回り1周)→金山→名古屋港」、右回り方向が「名古屋港→金山→(右回り1周)→金山→大曽根」という運転方式になっています。

当時の改正内容を見た私のツイートです。このように図にするとどのような運行方式か理解しやすいでしょう。この運行方式にすることでどんなことが起きるか。先ほど同様、金山駅を17:00に発車する右回りを想定します。17:07…17:56と右回りが出ていき、17:00の電車が18:00に戻ってきます。これをそのまま右回りとして運転すると、先ほどのようにおかしくなります。ではこの18:00の電車を大曽根行きにしたらいいじゃないか、ということです。この時間の西部区間は3.5分間隔ですし、17:56の次の右回りは7分間隔なので18:03。18:00の電車はその間に入ることができ、3.5分間隔になりますよね。

では18:03の電車はどうするかといえば、もちろん名古屋港から来た電車を使うわけです。7分間隔の場合、名古屋港発を大曽根行きではなく右回りとし、金山から名城線を1周させると、先ほど見たようにちょうど名古屋港発の右回りの間隔があいているところに到着できるんですね。で、この右回りの間に戻ってきた電車を大曽根行きにすれば、1周60分で7分間隔が可能なわけです。

左回りも同様で、大曽根発を名古屋港行きではなく左回りとし1周させるとちょうど大曽根発の左回りの間隔があいているところに戻ってきますので、その戻ってきた電車を名古屋港行きにするわけです。まぁ実際には左回りの場合、新瑞橋から名古屋港行きに、右回りの場合はナゴヤドーム前矢田から大曽根行きに変わっているんですがね。

さてこの平日夕方の運転方式について詳述しましたが、本題に戻りましょう。この方式が1周55分と大いに関係します。ここまで内容をおおむね理解できていれば、55分という数字だけでわかると思います。そうです、この平日夕方の方式を日中も行うことで、1周55分ダイヤが可能となるわけです。日中の金山駅は名古屋港行きが00,10,20,30,40,50分発、左回りが05,15,25,35,45,55分発となっています。05分発の左回りを55分で1周させると、ちょうど00分発の名古屋港行きにできますよね。

では逆に夕方はどうするのか。1周55分は日中の10分間隔は運転方式の変更で対応可能だが、夕方の7分間隔、そして朝ラッシュの6分間隔には対応できるのか、というところです。

それが可能なんですね、割と簡単に。まず夕方の7分間隔。7分間隔の場合、00分に発車する駅だと00,07,14,2128,35,42,49,56,03…分発と運転されます。当然ながら7の倍数なので、55分とわずか1分差の56分後に発車する電車があります。この1分は夕方の利用者増に伴う余裕時分とするか、ドームで時間調整するかでどうにでもなります。つまり夕方は今のように名港線と一体化させなくても、環状運転と名港線直通で対応可能なわけです。

では続いて朝ラッシュ時…ですが、実はこちら現行ダイヤも旧ダイヤもあまり規則性はないんですね。というのも、朝ラッシュは夕方のラッシュに比べると短時間で、ラッシュの始めごろ、7:50頃に出て50分~60分で1周しても次は8:40~8:50頃になります。この時間になるとラッシュのピークは越えていますので、一部は順次車庫へ入庫し、日中ダイヤへの移行時間となります。それゆえ東部側では大曽根行きとナゴヤドーム前矢田行きが続行したり、急に左回りのナゴヤドーム前矢田行きがあったりと不規則な運転方式になっています。なので55分ダイヤでも規則的な運転を行うとは思えませんが、ピーク時は6分間隔なので一応見ておくと、6分間隔の場合、6の倍数ですので54分後に出る電車があることになりますので、1周54分で運転すればぴったりはまります。まさかの1分短いんですが、現実的にはおそらく無理でしょう。朝ラッシュは利用者が大幅に多くなります。先に述べたように、名城線は都心部以外にも混雑する区間がありますので、朝ラッシュに日中より短い時間で運転するのは望ましくありません。となると、現在の平日夕方、55分ダイヤの日中のような名港線との一体化で1周57分とすることがよいでしょう。もしくは7分間隔とし夕方と同様1周56分とするか、です。

一応深夜にも触れておきましょう。深夜は名港線が金山折り返しになり、名城線は全区間で10分間隔の運転となります。さて、名港線と一体化させることができない時間にどのように運転するか。答えは9分間隔もしくは11分間隔で運転する、ということです。現在のダイヤは深夜の時間帯は綺麗な10分間隔ですが、旧ダイヤでは8~12分間隔と均一化されていませんでした。なので、9分間隔で6本使用すればほぼ同程度の本数になります。この場合、54分で1周になりますが、1分足せば55分になりますので、どこかの間隔だけ10分にすれば55分になります(00,09,18,27,36,45,55,04…ということ)。

そしてもう1つの方法、11分間隔です。こちらは単純で、00,11,22,33,44,55,06…と運転していくだけです。このご時世なので深夜の時間帯は利用者も少ないですし十分対応可能な本数じゃないかと思います。

つまりは60分ダイヤ→55分ダイヤとする場合こうなります。

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あくまで推測にはなりますが、55分ダイヤへの移行が現実的に可能であることがお分かりいただけるかと思います。

このように1周55分にすることで、現在のような長時間停車が減り、わずかですが所要時間を短縮できます。名城線の場合1周5分の短縮になりますので、利用者的には1-2分の短縮になります(名城線を1周乗り通す物好きは鉄オタぐらいなので)。現在の1周60分よりは余裕時分が減りますが、それでも1周50分の時からは増えていますし、何より現在各駅であれだけ時間を余らせているぐらいなので問題ないでしょう。

この1周55分化は、利用者側のメリットに留まりません。交通局側にも十分メリットがあります。現在の名城・名港線は日中20編成が使用されています(左回り:6,右回り:6,名港:8)。それが55分化すると、1運用が名城線55分+名港線直通32分程度=片道90分弱、往復+折り返し時分も含めると180分程度で同じ運用に再度戻ることになります。もちろん名城線は10分間隔なので180÷10=18本程度の使用と、運転する車両を1~2本節約できます。運転する電車が減れば、その分の乗務員が減らせますので人件費も浮きますし、車両にかかる検査費用や、検査までの走行距離の節約などでも大きなメリットになります。

ではデメリットはないのか、と言いますと当然あります。1つは上に挙げた余裕時分が減ること。そしてもう1つが、日中の運行方式が複雑化するということです。先に述べたように55分の場合は現在の平日夕方の運行方式になります。この方式だと東部側の各駅で行先が分かりにくくなるんですね。現在の平日夕方もそうですが、左回りは新瑞橋から名古屋港行きに行先変更します。これはまだいいでしょう。問題は右回りです。大曽根行きに変わるタイミングが1度目の大曽根を発車した直後、つまりナゴヤドーム前矢田で既に大曽根行きに変わります。これが非常にわかりにくいんですね。砂田橋や本山なんかで大曽根行きが来たらナゴヤドーム前矢田方面へ走ると思うじゃないですか。実際は八事や新瑞橋を経て名城線をほぼ1周して大曽根へ行くんです。

現在は平日の朝の一部と夕方の全列車、そして最終付近にこの現象が見られますが、これが平日の場合は日中時間帯、はたまた土日の場合はほぼ全時間帯へ拡大してしまうことになります。現在は朝夕深夜なので慣れた利用者、つまり定期利用者が多いという無理やりな理由付けもできますが、日中や土日となると高齢者を始め非定期利用者が多くなります。そうなるとこの運行方式はとても望ましくない。混乱を招くだけです。

ではどうするか。答えは簡単、行先変更の駅を変えればいいんです。バカ真面目にドームから大曽根行きにしなくとも、大曽根の半周先から大曽根行きに変えればいいんです。名城線は環状路線なので利用者が乗るのは最大半周なんですから。大曽根と丁度対になる、つまり左回りでも右回りでも所要時間が同じになる駅は堀田です。ですが堀田はただの中間駅ですから、2駅前の新瑞橋から大曽根行きに変えることが望ましいでしょう。ナゴヤドーム前矢田行きの場合も同様です。

というかこれは55分ダイヤにする以前に平日夕方を全部これにするならやってほしかったんですけど、特に何もありませんでした。各駅にわざわざ反対回りの大曽根行きに注意する掲示物が多く貼られている辺り誤乗は多いようなんですがね。個人的に推察すると、駅の案内表示器などのシステムが関係しているのかな…?なんて思います。実際、右回りの最終電車は大曽根行きなんですが、ご丁寧にナゴヤドーム前矢田から"大曽根行き最終電車"という案内があります。このあたりの設定の関係上次の周回の終点を前もって出す必要があるのかな…と(左回りのドーム行きも大曽根からドーム行きに変えますしね)。ただ右回りの最終の金山行きは東別院から金山行きではなく、市役所から金山行きにしている辺り不可能ではないと思うんですが…。もしかしたら連動駅の関係もあるかもしれませんね。

というわけで、名古屋市交通局さん、名城線のダイヤと行先案内どうにかしませんか。交通局さんにも十分メリット有りますし、今後コロナ減便するぐらいなら本数維持しつつ経費削減しましょうよ、というお話でした。