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「居場所」「共感力」……(俺達の日常にはバッセンが足りない)

この方の小説を初めて読みました。
なので、他作品との比較はできません。純粋に、この作品についての感想を書きます。

あらすじをひとことで=バッティングセンターをつくるお話です

ひとこと感想=夢のある、励まされる小説です。

(1)どこだろう。
私も東京の多摩地区に住んでいて、この小説の舞台になっている地域の土地勘がゼロではないので、どのあたりが舞台なんだろう、と思いながら読んでいました。
たしかに、多摩地区にあった大きいバッティングセンターはいくつか消滅しました。ひとつは「あの大物プロ選手が通っていたんだぜ」と噂にもなったバッティングセンターでした。
そのバッティングセンターは2階にあって、1階はゲームセンターとパチンコ屋でした。今は2階がなくなり、パチンコ屋しか残っていません。
「2階には何か別の施設ができるのかな」と思っていたのですが、何もつくられぬまま。

だったらバッティングセンターを残してくれたらいいのに、と思いました。

(2)「居場所」
このお話のひとつのテーマが「居場所づくり」かなと思いました。
私も、もし会社をやめてしまえば、家以外にいる場所がないことは確実です。
いろいろな立場の人がいて、そういう人たちが集える場所は大事だなと思います。

(3)主人公の重みを感じる言葉

「役に立つか立たないかなんて、そんなに重要か? あった方が面白いかどうかなんじゃね?」

というセリフがありました。読み進めるともう少し多角的な理由が書かれているのですが、上記のひと言は、物事を進める上でとても重要なのではないか、と思ったりします。今の私に欠けているところです。

(4)考えさせられた

子育ての場面でこんな事が書かれているくだりがありました。

ユズカ(=母親)がやっていることは、病的と言っても差し支えない。見ようによっては虐待だ。
「ケント(こども)のためじゃなくて、お前自身の自己満足のためなんじゃないか?」
(略)事実だが、ユズカを目覚めさせるどころか火に油を注ぐ言葉違いない。

ケントの父親のセリフです。
無事に育ってほしい、その思いは強くても、それが行き過ぎると束縛になりかねない。その匙加減は難しい。当人は一生懸命やっているわけで、そこに対して「それは違う」とは言いづらい。
人を育てるのは難しい、もっと言えば、その方向性で折り合いをつけるのはもっと難しい、つくづく感じます。




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至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。