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「○○世代」というネーミングでワタシが見えますか?

「最近の若者は……」

はるかソクラテスの時代から言われてきた言葉であり、いつの時代も若者はオトナからひと言言われてしまう存在のようです。
現代の「最近の若者は……」として言われるのは、

・熱意がない
・物欲がない

といった辺りでしょう。

車や家をほしいと思う人が少数派であるわりに、写真映えのためには惜しみなくお金を使うように見えて不思議です。
そんな、「ワカモノ消費の今」を語るイベントに行ってきました。

パネラーは電通若者研究部の奈木れいさんと、株式会社ウツワの社長であるハヤカワ五味さん。そしてモデレーターの最所あさみさんも入れると、登壇者は3人とも「ミレニアル世代」。

Tik Tokやファッション、結婚のことについて交わされたトークは、盗んだバイクで走り出す人が周囲にいっぱいいて、バブルの最後の花火をギリギリ見ていた世代であるわたしにとって、とても刺激的でした。


「最近の若者は……」と言う時の、「若者」って誰だ?と、話を聞いたいま、思います。

そこで、イベントの中で特に印象に残った話の覚え書を作っておくことにしました。


「○○世代」なんてくくりに意味はない

先に、“登壇者は3人とも「ミレニアル世代」”と書きましたが、この言葉への違和感を訴えたのはハヤカワさんでした。

最近よく耳にする「ミレニアル世代」とは。
2000年以降に成人した世代を指す言葉で、それでも30代後半から20代前半くらいまでと幅広い構成です。
主にアメリカで使われていましたが、日本に入って来てからは、18~25歳の若年層を指すことが多いようです。

ここではアメリカ型の年代のとらえ方で話が進んでいたようです。で、ふと気が付きました。

このイベントの会場名も「ザ・ミレニアルズ」じゃん!


巷は本当に「ミレニアル」に溢れているようですね。
ですが、ミレニアルど真ん中のハヤカワさんは、「いま20代前半の自分と、30代後半の人と、考え方や嗜好性が同じ訳がない」とバッサリ。

確かに!!!

マーケティングの手法であるクラスタ分類。
でも、これだけ多様化が進んだ社会では、年代でくくることに意味はないのかもしれません。


なぜワカモノはお金を使わないの?

ハヤカワさんが語る「なぜワカモノはお金を使わないの?」の答えはとても明快でした。

ずばり、「お金がないから」です。

平成元年と平成27年度の年収や物価を比較し、若者の一例として元カレの支出グラフまで提示。

え!? いいんですか???

と、オドロキながら思わず写真を撮ってしまいましたが、さすがにここにはあげられません……。こちらは、比較のまとめです。

ハヤカワさんの世代では、CDも本も映画も、タダが当たり前。そもそもお金がないし、無料のモノがいっぱいあるからわざわざ「買わない」という選択になるのですね。

とはいえ、「ゲームやマンガには課金するじゃん?」と思いますが、それは「そういうもの」という認識が最初からあるので躊躇がない。

そもそもの出発点がオトナとは違うことがよく分かる説明でした。

そして、フリマアプリが台頭したことで、ショッピングのあり方も変わったとのこと。つまり、「売る前提で買う」わけです。

ネット前:買えないものもある
ネット黎明期:なんでも買える
現在:なんでも売れる

このフェーズになっているので、フリマアプリは今後重要な“収入源”になるのでは、と指摘されていました。
インフラとしてのネット環境が整い、稼ぎ方も多様化したいま、

①お金がない状況を楽しんで攻略
②なんでも売って稼いで攻略

と考える人が増えるのは自然な流れなのかもしれません。


マンガで説明 若者の変遷

一方、仕事柄、若者へのヒアリングをよく行うという奈木さんが気をつけていることには、上から目線ではなく、「寄り添い目線」があるとのこと。

「上下関係」ではなく「フラットな関係」を好む様子は、博報堂・若者研究所の原田曜平さんの本『若者わからん! - 「ミレニアル世代」はこう動かせ』には「横から目線」として紹介されています。

一方的にオトナの価値観を押し付けても耳に蓋をされるだけなので、彼らのメリットになるようなプレゼンをしないと動かないぞ、という指摘は奈木さんもされていて、これからの管理職はかなりの努力が必要になりそうです。

数年前に「ワンピース型人間関係」が話題となりましたが、今回のイベントにも若者の姿勢をマンガで説明する資料がありました。
曰く、

30歳以上:ドラゴンボール<競争>
30歳未満:ワンピース<協調>
学生:弱虫ペダル<全員主人公>

上記のような特徴があるので、「仲間が大事だから目立ちすぎず、でも要領よくやりたい」という志向があるそうです。

世代の特徴には揺り戻しもあるので、やんちゃな世代の後にはおっとりが来るし、個性が重視されれば今度は仲間意識が強くなる傾向があります。
奈木さんが挙げておられたマンガは、見事にその特徴をとらえたものでした。


ワカモノの今=「コミュニティの時代」

生きてきた背景が違うんだから、自分たちの価値観を押し付けないで。
○○世代だからと決めつけないで。

思い返せば、わたしも20代の頃にそう感じていたような気がします。現代の「最近の若者」の気の毒なところは、人口が少ないので社会的にはマイノリティであることです。
でも、早くからさまざまな情報に触れているせいか、賢い人が多いような気も? キャラ作りに成功しているせいかもしれませんが……。

お金の使い方にもメリハリがあるようで、「インスタに3投稿できる程度だとコスパが悪い」という基準は、衝撃的でした。

“ハレ”と“ケ”のバランスを意識しつつ、自分の見せ方に気を使う。また、平均して7つのLINEグループに入っているそうで、しかもその間には情報の共有がない。自分自身のキャラも違う。

3人のトークを情報の届け方という視点から見た時、最初に頭に浮かんだのは「コミュニティの時代」という言葉でした。コミュニティの熱さは、やはり消費のきっかけになるのかも。


「新人類」「ゆとり世代」「ミレニアル世代」… 理解しづらい「最近の若者」を分類して分かりやすくネーミングすることは、安心・納得を生むのかもしれません。

「だからこうなのね…」

と、ため息をつけば済みますから。
でも、それはオトナの事情。分類される側が、実態とかけ離れているように感じるのは当然です。

SNSなどで“個”としてのつながりに慣れているのが「最近の若者」です。理解できない層として距離を置くのではなく、しっかり“個”として向き合う勇気が「最近のオトナ」には必要なのだと感じました。



奈木さん共著の本はこちら。「若者の○○離れ」よりもむしろ、「オトナの若者離れ」の方が問題なのでは?という指摘は示唆に富んでますね。


ハヤカワさんの講演内容が分かるnoteはこちら。


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