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オリキャラ香水づくりのすすめ

きっかけ

 私の趣味の一つにクトゥルフ神話TRPG(CoC)があります。自分で作ったキャラクター(PC)を使ってシナリオを遊ぶゲームで、探索や謎解き、戦闘などあらゆる要素を持つ遊びです。二次創作として沢山のシナリオが有志により書かれており、遊んでも遊んでもシナリオは尽きることがなく、無限に遊べてしまう恐ろしくも楽しいゲーム。そんなTRPGはゲームの性質上、初見で遊ぶことを推奨されており、ネタバレ厳禁とされています。そのため遊んだことがあるシナリオの感想を話すときにも未プレイの人の目に触れないよう注意を払うことがマナーというのが一般的です。
 このマナー自体は必要な事でありもちろん私も納得して従っていますし、そこに息苦しさを感じたことはありません。

 しかし、私の子の話が出来ないのがつらい。
 私が練ったキャラクター設定や、遊ぶ中で育み獲得した友人関係、あるいは失ったもの、普段の生活や本人も気づいていない癖の話などのすべてを吐き出すところが少なすぎる。遊んだシナリオ内容に触れかねないものはもちろんですが、シナリオに関係のない部分も共有は難しいのです。なぜならこのキャラクターは私と、そして一緒に遊んだ同卓者にしか伝わらないキャラクターだから。もしかすると一次創作をしたり、あるいはマイナーな作品にはまっている人の中では、こういった苦しみは日常茶飯事なのかもしれません。愛好していた作品がメジャーなものばかりだった私にはほとんど初体験でした。

 もちろんですがグッズなんてものはありません。キャラクターグッズがあれば私の日常の中でも彼らや彼女らを身近に感じられるのに……といくら思っても脳内での解像度が上がるばかりで、それが具現化されることはありえません。なので作ることにしました。なければ作ろう!

 以前よりオリジナルの香水が作れるサービスに興味があったため、自分のPCの香水を作ることを決断。香水があると実在感が増しそうなところも決め手に。時間の経過で香りが変化するのもキャラクター性を表現するのに適しているように思います。ちなみに実際に予約してお店に行ったのは2022年10月です。せっかく始めたnoteなので書いておきたくて書きました!!

 そして香水のモチーフとなる私のPCは①アイドルと②落語家の2人に決定。どちらも男性のキャラクターです。人選をするにあたってたくさん考えたのですが、キャラクターの要素を香りにしたものかつ、そのキャラクターが普段使いしそうなものにしたいという願望から、実際に香水を使用しているとキャラクターシートに明記していたこの2人にしました。

香水作り当日

 利用したお店はD.Andaさん。都内にある完全予約制のお店でとても落ち着いた雰囲気です。20mlのボトルを2つ作るプランで予約をしました。

1.イメージを決める

 席につき、手順を説明された後に、全体的な香りのイメージを聞いてくれます。まだイメージが固まりきれていなくても、ざっくりとした方向性は共有しておきます。私の伝えたイメージは以下です。

①アイドル(20才 男性)
・マリンシトラス系の香りをいれたい
・万人受けする爽やかで清潔感のある印象
・男女どちらでも付けられるもの

②落語家(25才 男性)
・甘く華やかな香りと癖の強い香りを組み合わせたい
・大人で掴みどころのない雰囲気
・ギリギリ女性も付けられる範囲で出来る限り男性っぽく

 私は香料に詳しいわけではないので、こんな人がつけているイメージ、のような伝え方をしました。推し香水を作るお客さんも多いようで、かなり上手に意図をくみ取って方向性を一緒に決めてくれます。

2.香りを選ぶ

 イメージが決まったらいよいよ香りを選んでいきます。香水の香りはトップノート、ミドルノート、ベースノート(ラストノート)に分かれていて、トップノートとベースノートは4種類前後、ミドルノートは5種類前後選ぶことができます。
 目の前に約80種類の瓶が並べられて、ひとつづつ嗅ぎながらセレクト。複数候補を上げたなかで中心になる香りをひとつ決めて、調香師さんがバランスを考えて組合せを提案してくれます。
 初めは恐る恐る嗅いではメモを繰り返していたのですが、中心に据えるものを選んでからは驚くほどスムーズでした。
「こちらの2つだとどっちがイメージに近いですか?」
「この候補の中であればこれとこれが相性が良いですよ」
「癖がある香りにはなりますが調合次第で纏まります」
 調香師さんの言葉がなんとも心強く、素直に希望を伝えることができました。どうしてもこの香りが良くて…といった我儘も笑顔で承諾してくれて感謝しかありません。

 選んでいる最中、手伝ってもらえているとはいえ全部で80種類以上の香りが目の前に並ぶのは未知の体験でドキドキしていました。香りの割合も要望で変わるので組み合わせは言葉通り無限にあります。誰とも被らない香りだと思うととても特別な買い物をしているなあと贅沢な気持ちに。そして当然ながらモチーフとなるPCのことをたくさん考えることができるのが楽しくて仕方ありませんでした。そのPCをより好きになる、存在に奥行きを感じられる、そんな体験を求めている方には是非やってみてもらいたいなと思います。

3.調合

 香りを決めたら、香料の割合を調香師さんに伝えられてメモを取り、それ通りに瓶にスポイトを使って香料を入れていきます。学生時代の理科の実験みたいでワクワクする作業です。もくもくと完成に向かって手を動かすのも心地が良かったです。私の場合2つ作成するプランだったので、1つは手伝っていただきました。限られた時間できちんと完成させられるようスマートにサポートしてくれます。

4.ラベル作り

 最後に香水の名前を決めて、ラベルデザインを選びます。お店を調べた時に、ラベルにその場で印字できるのを知って驚いたのですが、ばっちり浮かれて事前に考えてきていました。印字してもらったラベルを自分で貼って完成です。

左が落語家、右がアイドルのPCをイメージして作ったもの
トップ・ミドル・ベースのメインの香りも印字してくれます

 2週間おくことで香りが馴染むとのことでした。香りを決めるときに使った紙(香りの種類と割合を書いたもの)はお店で保管してくれるのですが、写真を撮っておくと良いと思います。市販の香水を選ぶ時も、自分の好きな香りを探すヒントになりそうです。

PC香水をつけて出かけてみた

 2週間たってから、作った香水を実際に使ってみました。
これ!!!!!!!これだ!!!!!!!!!!!!!
自分が苦楽を共にしたPCとすれ違った人ってこの香りを感じてたんだあ……へえ……とニチャりながら休日を過ごせました。さっぱりとした爽やかさから時間が経ち甘さを感じるようになるとか、甘く華やかな香りをベースにふとスパイシーさがのぞくだとか、1日を過ごす中でふわっと存在を感じて非常に幸せで満足しました。
 加えて、今まで脳内に留めていたものを出力できたおかげでとてもスッキリできたような気がします。継続シナリオをやるときなどに使用してみるのも良いかもしれないと思い楽しみが増えました。

 悶々とした日々をお過ごしのTRPGプレイヤーの方、推しや自分のキャラを近くに感じたい方はぜひ、お試しください。

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