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新しい発注方式 DB(Design build)方式「施工者が設計者になる」

written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)

過去の記事で病院を「設計」する「施工する」とは。について書きました。

今回その発注方法の一つであるDB(デザインビルド)方式について書きます。近年病院建築においてもDB方式は増加しています。

建築需要旺盛&物価上昇局面ではDB方式によって施工契約を早期にすることは施主とゼネコンの双方にとってメリットがあるからです。

日本の公共事業の発注では「設計」と「施工」は分離していました。

設計事務所が作成した設計図を元に入札をおこない、最低価格で施工するゼネコンを決定します。とてもシンプルです。
この方式は透明性が高く、競争原理にもかなったアメリカ式の入札方式です。

設計の仕様を確定してから発注するので、精度の高い工事費の算出が可能です

しかし価格のみを落札基準にしているため、総合的な評価がされず落札後の契約変更が頻繁に発生したり施工の品質が低い場合があります。

また詳細な設計が完了してからゼネコンを選定するため、工事が長期化するという問題もありました。

時間を掛けて設計したものの、予算内で施工するゼネコンが見つからなかった場合は「絵に描いた餅」になる可能性があります。またそうなるかどうかは設計者を決める最終段階になるまで分かりません。

そのような問題から、2014年には「公共事業の品質確保の促進に関する法律」が改訂されDB方式が基本的な方針として明確に記載されました。

被災地では早急な復興事業が必要とされます。また2020オリンピックの国立競技場建設のように、国の事業として早急に建築が必要な場合もあります。

新国立競技場もDB方式にすることでオリンピックに間に合いました。

必要な建築をスムーズに進めていくためにもDB方式は非常に有効です。

■DB(デザインビルド)方式とは何か


「設計施工分離」と「設計施工一括発注」
設計しながら施工の先行作業が可能

一括発注方式」にて発注します。設計契約と施工の契約を同時におこないます。

DB方式には大きく分けて2つのタイプがあります。

①基本設計からのDB方式


「基本設計」と「施工者選定」を同時におこないます。設計業務と施工の全てをゼネコン一社(あるいは共同企業体)でおこないます。

日本ではじめて基本設計からのDB方式を活用した公共施設は福島県大熊町役場新庁舎だそうです。

②実施設計からのDB方式

「実施設計」と「施工者選定」を同時におこないます。基本設計のみ設計事務所がおこない、実施設計と施工はゼネコン一社(あるいは共同企業体)がおこないます。

■DB方式のメリット

■工期の短縮が可能

建物を設計する段階から「施工すること」を考えるので、既存解体や仮設計画を含めて現実的な提案ができます。

また設計と施工を同時に受注することで、設計と並行して必要な施工材料を発注したり、人手を集めることができます。計画初期から設計と施工が連携することで、工期の短縮が可能です。

■ゼネコンから多くの技術提案を受けられる


設計施工が分離していると、ゼネコンは技術提案する余地はありません。しかしDB方式では設計が固まらない段階での発注になるので、ゼネコン独自の特許技術や得意工法など多くの提案ができます。

■コスト削減できる


工期が短くなるだけでも、コスト削減に繋がります。

また同時期の工事と連動して早期に無駄なく資材調達をしたり、自社の得意とする工法を取り入れるなど「自社に合わせて施工し易く実施設計する」ので不要なコストを削減できます。

このように多くのステップを省くことで時間や価格等の「コスト」を削減できます。

またゼネコンは全国各地で日々工事見積を出しているため、設計事務所よりコストに対する情報が最新かつ豊富です。

■責任の所在が明確


言わずもがなですが設計施工の両方をゼネコンがするため、責任の所在は明確です。設計施工分離のように責任が二分することはありません。

■DBのデメリット

■コスト変動リスクがある


設計施工分離であれば、設計書通りに施工するのみなので、金額は確定しています。

一方でDBは設計が固まらないざっくりした状態で施工者も同時に決めることになるので、施主の要望と取り入れながら進めることになります。

そのため計画変動に合わせてコストが変動する可能性があります。

しかし、この状況を避けるために仕様を固めすぎてしまうとDB方式のメリットである技術提案する余地がなくなるジレンマもあります。

■ゼネコン側に偏った設計になりやすい

ゼネコンは自社が施工しやすいように設計するので、工期を短縮できるというメリットがある一方で、利益追求を最優先にした場合はゼネコン都合の設計になるリスクもあると考えられます。

■立場によって見解が異なる

デメリットについては設計事務所、ゼネコン、CMそれぞれの立場から見解が異なります。

DBでは設計事務所の仕事がゼネコンに取られます。逆にゼネコンからすると早期に施工が決まるので、DBを一般的には好むためです。

こういった環境から、施主に建築に関するノウハウがない場合は、プロジェクトをマネジメントするCMの介在価値が高まってきています。

今回は新しい発注方式であるDBについて書かせて頂きました。

理解不足の面もあるかもしれないので、ご意見ある方はご指摘頂けると助かります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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