浴衣を買うなら今すぐに

本当は着物着始めるのにどういうものが必要か、みたいな話が先だと思っていたけどちんたらしてたら浴衣の季節になってしまったので浴衣の話をする。実はもう新作浴衣は4月の頭から出始めているので。いきなりサビから入ると「浴衣の選択肢が一番多いのは今なので、この夏の浴衣に賭けたい人は早く動いて」ということなんだけれども、順を追ったり何が必要かとかを踏まえたながら書こうと思う。

1. なぜ春に新作の浴衣が出るのか?

2. なぜ春に浴衣を買わなければいけないのか?

3. 浴衣を着るのに必要なものは最低限で良い。

4. 浴衣+αで差をつけろ。

1. なぜ春に新作の浴衣が出るのか?

これを読んでいる人は「もう浴衣の話?」「気が早いよ!」とお思いだろうと思う。なぜこの時期に浴衣が出るのかを話す前に、まずは着物の種類についてざっくり説明しておきたい。

私たちが夏にキャミソールの上から半袖Tシャツを、冬にヒートテックの上からセーターを着るように、着物でも季節ごとに着る物が違う。秋冬は袷(あわせ)という裏地がついたもの、春夏や初秋には単衣(ひとえ)という裏地のないものを着る。これらを着るときには襦袢という着物と同じ形の肌着のようなものを下に着るのが一般的だ。襦袢にも素材が色々あるので、夏には涼しい素材のものを選ぶが、それでも日本の夏は暑く厳しい。なんか蒸し蒸しするし。そこで、暑さが厳しいときには浴衣を着る。浴衣は襦袢を着ずに着ることが出来るので、単衣を着るより1枚減って快適になるという寸法だ。(最近は気候の変動や後述の浴衣の着方の変化があるため、上記のことが決まり・ルールというわけではない。)

つまり、Tシャツに該当するのが単衣でありセーターに該当するのが袷である。洋服/和服の溝がなんとなく深いため意外かもしれないが、和服・着物も服でありアパレル業界と同じ見方をしておよそ問題ないと思う。(昔ながらの格調高い呉服屋は別にしての話だが。)
夏物の服が春にアパレルショップに並ぶのと同じく、夏用の単衣や浴衣も春に並ぶ。そう聞くと、春に浴衣の話をするのは何もおかしくないとわかっていただけるのではないだろうか。

2.なぜ春に浴衣を買わなければいけないのか?

浴衣が春に店頭に並ぶのはわかったが、なぜ今浴衣を買わなければならないのか。これはその人の年齢や浴衣を何のために買いたいのかに寄る。別に浴衣を今買わず、友人に花火大会などの夏のイベントに誘われてから買うのもいい。ぜひあなたの好きにしてほしい。ただタイトルや冒頭にある通り、これから数年のためにいい浴衣を1着持っておきたいという人や、浴衣に並々ならぬ意気込みをもっている人はぜひ今買うのが良いだろうというのが私の意見だ。これに説得力を持たせるために、私がいつも行く店(KIMONO by NADESHIKO)のスタッフさんから聞いた、浴衣を求めてやってくる客層についてまとめておきたい。

4月〜 常連客や普段から着物を着る人

6月〜 夏の季節に複数回浴衣を着たいと思って探している人

7月中旬〜 来たるイベントに向けて浴衣を探している人

 売り始めはDM等を見て来店する常連や浴衣が春に出ると知っている人たちから始まり、6月ごろになると、浴衣を着て散歩したいというようなイベント以外でも浴衣を着たいと思っているような人たちが来店するという。私がこのお店で初めて買い物した時も、だいたいこんな動機で浴衣を探していた。そして夏休みになると店がイベントで着る浴衣を求める人たちで賑わうらしい。ここに、春のあいだに浴衣を買っておくべき理由がある。

春から初夏にかけて浴衣を買いに来る人たちはもちろん浴衣ガチ勢だ。浴衣ガチ勢とは、日常・準日常的な衣服としての浴衣に並々ならぬ情熱を注ぐ人たちである。浴衣ガチ勢がどのような浴衣を好むかは人それぞれであるが、この浴衣だけは絶対に買わないだろうという浴衣がある。参考画像が手元にないので、私の貧弱な語彙で描写させていただくがご容赦願いたい。例えば黒地にピンクの牡丹、白抜きのアゲハ蝶のシルエット、みたいな柄の浴衣である。誤解を避けるために言いたいのだが、人の好みはそれぞれなのでこういったタイプの浴衣が悪だとはまったく思わない。こういう浴衣が好きで好きで仕方がなくて、自分の信念を貫いて着たいという人もいると思う。だがもし、あなたがこういったデザインの浴衣を望まないのであれば事態は変わってくる。早急に動き出すべきだ。

上記のような浴衣の在庫は4月から7月頭にかけてはあまり動かない。店頭に並ぶことすら稀だ。だから、夏真っ盛りの駆け込み需要がある時期めがけて売り出される。その他のデザインの浴衣がなくなるわけではないが、その前に購入されているため在庫が少なく、競争が激しい。しかも、駆け込み需要でにぎわう売り場での競争である。店員さんに試着させてもらいながらゆっくり買い物というわけにはいかない。ちょっといい浴衣を買おうと思うとだいたい2、3万円くらいは覚悟しなければいけない上に帯も買うとなればその金額に5千から1万円くらいがプラスされる。店員さんが捕まらない状況でその値段の買い物に踏み切るのはかなり難しいのではないだろうか。また、着付け用の小物をそろえるとなればもう少しかかるし、なにより店員さんに相談した方が買い忘れも少なくて済む。

春のうちに浴衣を買うメリットをまとめると、選択肢がたくさん残っている状態で店員さんと話しながら安心して買い物が出来るということである。ちなみにKIMONO by NADESHIKO では反物からの仕立てサービスがある。値段は既製品とそれほど変わらない。オプションで簡単に着られる形での特別な仕立ても始まったと聞いたので、「自宅で着たいけど、うまく着られるか心配」と思っている人は考えてみてほしい。

3. 浴衣を着るのに必要なものは最低限で良い。

読んでいる皆さんがそろそろ飽きてくる頃かと思われるので、ここから先は実用的な情報を手短に伝えていきたい。まずは、浴衣を着るにあたってこれさえあれば問題ないというものを挙げる。

・浴衣→思い思いに好きなものを買ってください。2万から高いものだと5万くらい。生地はたいていポリエステル。小千谷縮など生地が高いものだと7万くらいする。(家賃)

・半幅帯→浴衣に合わせる帯です。着たい浴衣に合わせて選ぶといい。だいたい1万円前後。作り帯だともう少しするかもしれない。

・着付け小物→私は腰紐3本(うち体型補正のタオルを留める用1本、浴衣用2本)、伊達締めくらいしか使わないが、他にも帯板とかいろいろあるのでお店の人に聞くのがいいかと。着付け小物セットもネットなどで売っているが持て余す場合もあるので一概には何とも言えない。

以上です。これだけ。

4. 浴衣+αで差をつけろ。

私は「着物警察にならない」ことを心に誓っているので、浴衣を着て帯を締めたらそこから先は着る人の自由だと思っている。だから、履き慣れなくて痛い思いをするくらいなら下駄なんか履かないでサンダルでもいいし、かごバッグの代わりにクラッチバック合わせても可愛いと思う。着ていく場所・状況と予算を照らし合わせつつ自由に買い物してほしい、。一応、考えつく小物とだいたいの価格帯を書いておくことにする。

・下駄→1万円弱から高くて2万円くらい。いわずもがな消耗品。

・かばん→巾着やかごバッグが一般的。今まで見た中で3万が一番高かった。(東南アジアの方の手工芸品のかごだった)

・浴衣用の肌着→キャミソールでもいいけど、浴衣は生地が薄いので透ける。透けると残念に見える。(傍目に見ているととてもハラハラしてしまう。)なので、肌着を持っておいた方がいい場合もある。

・帯締め→半幅帯に重ねて使う紐。指し色として。髙くて3千円。

・帯揚げ→本来は半幅帯よりも太い名古屋帯でお太鼓を作るとき等に使う布だが、指し色になるので半幅帯でも使う。5千円くらい。

・帯留め→帯締めに通して使うブローチのようなもの。ピンキリと言わざるを得ない。手持ちのブローチを帯留め風に使える金具も存在する。

・根付→帯の上の隙間から指して使うストラップのような形状のアクセサリー。私が持っていないものでどうにも言えませんが、歩くときにゆらゆら揺れるので非常に魅力的に見えるのでは。

また、浴衣の下に夏用襦袢を着て夏着物風に着ることもできます。

・襦袢→セパレートタイプでも普通のやつでもどちらでも。涼しいものを選んだ方がいい。

・半襟→浴衣の襟の下に襦袢の襟が見えるのでこの半襟という布で飾りる。レースや可愛い柄のものなどいろいろあるので浴衣にあわせてどうぞ。付けるのが至難の業。私はKIMONO by NADESHIKOでお金払ってつけてもらっている。

最後に

楽しく選んで楽しく着るのが一番だと思うので、気楽にやってください。前回から、KIMONO by NADESHIKO の回し者めいた発言が多いですが許してください。本当にいいお店です。新宿店が好き。

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