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HDRIを作りたい!【02.撮影編】

38912 DIGITALこと、三宅智之です。前回の準備編に引き続き、HDRIを作るノウハウを記事にしていきます。今回は第2回「撮影編」です。

HDRIは「暗いところから明るいところまでの幅広い光の情報を持った画像」です。3DCGで使う全天球のHDRIは、露出違いの画像を角度ごとに撮り、ソフト側で1枚に合成するという手順で作ることができます。今回は、その撮影側のお話です。

(撮影場所は株式会社スカイダイニングさんです)

1. 露出と段

HDRIの撮影に入る前にちょっとカメラの「露出」の話をします。HDRIはカメラをある程度理解していないと撮影できないのです。
カメラの明るさ(露出)はシャッタースピード、絞り、ISOによって決まります。HDRIの撮影では、基本的にこのうちのシャッタースピードだけを変えます。これは、絞りを変えると明るさとともに被写界深度(ピントの合う範囲)が変わってしまい、ISOを変えると明るさとともにノイズが増減してしまうため、写真ごとに違う絵になってしまうからです。のちのち一枚に合成するHDRI撮影では明るさ以外の絵の違いはエラーの原因になります。

また、露出は一定の「段」飛ばしで決める必要があります。段ってなんだ?って話なんですが、平たく言うと明るさの指標のことです。
「1段上げる」というと「光を2倍」にすることを意味し、今回はシャッタースピードのみを変えるので「シャッタースピードを2倍」にすることを意味します。シャッターを開けている時間に比例して像が明るくなるわけです。逆に「1段下げる」場合は1/2倍にします。
例えばHDRI撮影で「2段ごとに3枚撮る」として、1/2秒からはじめた場合、2段下げる[1/2×1/2=1/4(倍)]ので1/8秒、もう2段下げる(同じく1/4倍)ので1/32秒…と言いたいのですが、一般的なカメラで1/32秒は設定できないので、近い値の1/30秒といったようになっていきます。ちょっとややこしいですね…。

ここに深入りすると大変なのでここではこれ以上語りませんが、HDRI撮影のシャッタースピードの決め方には決まりがあるという事だけ理解してもらえればOKです。ちなみに英語の「EV」も日本語の「段」とほぼ同義です。

屋内や曇りの日の屋外など、直射日光が当たらない場合は、およそ12段分の明るさの範囲を撮る必要があります。3段ごとに5枚撮る、または2段ごとに7枚撮ることで12段分撮ることができます。
私は普段3段ごとに5枚(具体的には1/2秒・1/15秒・1/125秒・1/1000秒・1/8000秒)で撮影しています。
画像の合成(スティッチ)をする際に、この段の飛ばし方がズレているとソフト側で上手く認識してくれません。

2. ノーダルポイント

前回ご紹介したパノラマ雲台はレンズと三脚の軸のズレを無くすために必要な機材でした。もちろんレンズやカメラによって中心の軸の位置が変わってくるため、カメラの位置を調整し、ノーダルポイント(焦点の中心)を合わせる必要があります。パノラマ雲台のNodal Ninjaの場合、調整自体は難しいものではなく、2ステップで完了します。

STEP.01 カメラを下向きにし、カメラのビュー画面で回転軸が中心に来る位置に調整します。

STEP.02 カメラを横向きにし、左右に振った時に奥行きのあるもの(柱とペンなど)で位置のズレがないか確認します。

また、Nodal Ninjaの場合、調整した位置の印になる留め具も付属しているので、一度合わせてしまえば撮影のたびに合わせる必要はありません。使うカメラやレンズを変える場合は調整し直します。

3. 撮影してみよう

撮影のおおまかな流れは動画を作成したのでこちらをご覧ください。

STEP.01 段飛ばしの写真を撮る
パノラマ雲台でカメラを横向きに、角度を0°に設定し、段飛ばしの写真を撮ります。例えば、先述の通り3段ずつ1/2秒・1/15秒・1/125秒・1/1000秒・1/8000秒で5枚撮影します。カメラにブラケット機能(自動で段飛ばしの写真を撮影する機能)があれば使います。

STEP.02 水平方向を撮る
パノラマ雲台を少しずつ回転させていきます。レンズの種類によりますが、重ね合わせたときに大体30%程度被っていればスティッチの精度は十分なものになるようです。私のレンズ(8mm魚眼)では、45°ずつ8枚で横一周を撮影しています。例えば、最初の0°の位置で段飛ばし5枚撮影、0°から45°ずらし(45°の位置)で5枚撮影、さらに45°ずらし(90°の位置)で5枚撮影、というように各角度ごとに段飛ばしの写真を撮影していきます。

STEP.03 上下を撮る
水平一周を撮影し終えたら、カメラを上向きにして同じく段飛ばしで撮影し、下向きでも同じように段飛ばしで撮影、天と地を撮影します。

動画でもわかるように、ブラケット撮影ができるカメラでリモートコントローラーもあると、慣れれば1分もかからずに撮影できます。

4. まとめ

私はHDRIの学習の中でまずカメラの段(EV)という考え方につまずいたので、今回の撮影編では段の話を中心に書きました。段が理解できれば、HDRIを作る中で(おそらく)最難関である太陽光の撮影もそこまで難しくありません。

次回はいよいよ画像の合成=スティッチ編です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!ではまた!

参考文献
Adaptive samples「How to Create Your Own HDR Environment Maps」2019.1 最終閲覧
Adaptive samples「What Makes a Good HDRI and How to Use It Correctly」2019.1最終閲覧
HDRI Haven 「FAQ」2019.1最終閲覧
グラフィックス社「Image-Based LightingのためのHDRI制作ガイド」
CGWORLD.jp「撮影現場を再現するHDRIを用いたライティング技法(白組×映画『寄生獣』&『寄生獣 完結編』)」2019.1最終閲覧
clockwork「パノラマHDRIを作る」2019.1最終閲覧
「Direct HDR Capture of the Sun and Sky」2019.1最終閲覧

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