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パフェ食う私の夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

「嫌じゃなかったから」

彼は結婚をそう語りました。断る理由がなかったし、嫌じゃないから結婚したと。それは何とも真理なようで、何とも寂しいと感じたものです。

奥さんと5年以上体を重ねていない彼は、ドロ沼にならない相手をマッチングアプリで探していました。それは、恋人ではないとすぐに分かりました。私は唇を重ねても、体を重ねても、彼に外では触れてはいけないからです。そして、夕ご飯の時間までに彼を解放しなければなりません。

彼は「嫌じゃなかった」彼女の家に帰らなければならないのです。

私が彼女なら「それなら私でなくても良かったみたいじゃない?」と思うのです。彼がそんな事を思いながらプロポーズした事など、忘れてしまいたいと思うのです。「嫌じゃない」は最強で、でも少し寂しいのです。

「嫌じゃない」彼女を家に待たせながら、彼は触れさせてくれる私に「好きだよ」と囁きます。彼が「好きじゃない」事を知りながら、小さな吐息で返事をします。

彼は私と会えなくなっても「不便」だとは思っても、寂しくはないでしょう。お金を払うサービス業の彼女たちを受け入れる事はできないのに、幾人ものボーイフレンドに触れる便利な私を受け入れます。

「嫌じゃない」彼女なら絶対に言わない事を言うおかしな私に「嫌いになんてならないよ」と言いながら抱きしめて、そんなどうでもいい事は忘れてしまうのでしょう。

彼らに何かを聞いてもらおうなど思っていません。彼らはすぐに忘れてしまうのですから。彼らの話をうまく相槌を打って、もの静かに返していれば良いのです。

どんなに「好きだよ」と言ったところで、彼らは死ぬ前に私の事など露ほども思い出す事はないでしょう。でも、それはそう言う事なのです。露にもならない水は、私の心が流した涙なのかもしれません。そんな水を心に少しずつ溜めて、今日も私はパフェを食べます。私の小さな世界はそれできっとチャラになるのです。彼らはきっとそんな私が便利なのです。

来年になるまで彼の事はもう思い出さないことにします。今夜は静かな私で眠りにつくのです。おやすみなさい。

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