お日さまきらきらいいきもち。でぶねこサンジは、おひるねちゅう。

「おーいサンジは、いるかい？」

くろねこギンが、やってきました。

「イワシ、イワシ、イワシがきた。つりにいこうぜ」

「つりだって？おことわりだよ。ぼくは、水にぬれるのが、きらいなんだ」

「ホッホッホー、おいらが、水にぬれずにできるサカナつりをおしえてやるよ」

こういってサンジをやねのてっぺんにのぼらせ、空いっぱいにひろがるイワシ雲をゆびさしました。

「この世でいちばんうまいのは、空にうかぶイワシ雲。いい風ふいて、きょうは、ぜっこうのつりびより。サンジ、これがエサだぞ」

ギンが、ゆびさしたカンの中では、モソモソと、なにやら黒いものがうごいています。

サンジは、これをひとつつまんでみました。

「うひゃぁー、クッ、クモ？」

ギンが、クモをいっぴきつまんで、ぱぁ─となげると、クモは、風にのって、ぐんぐーんと空のうえまでのぼっていったのです。

「あっ、クモがにげた」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

ギンは、クモの糸をしっかりにぎっています。

「クモの糸が、つり糸のかわりなんだ。ほら　サンジもやってみな」

「ぼ、ぼくも？だいじょうぶかなぁ？」

サンジが、おそるおそるなげると、クモは風にのれず、ぽとんとおちてしまいました。

「だめだめ、もっとどひゅーんとなげるんだ」

「どひゅーん、か。よーし」

サンジは、ぐるぐるぐるっと手を大きくまわしてから、ぱぁっーなげました。すると、こんどはうまくいって、クモは、すーいすいと　空たかくのぼっていきました。

キラキラときもちよさそうにゆれているクモの糸をみているうちにコックリ、コックリとサンジも、いねむりをしはじめました。

ぐいっぐいっ、なにかがサンジの糸をひっぱりました。

「わっ、わっ。ひっぱる、ひっぱる」

「おっ、かかったな。サンジ、糸をゆっくりひくんだ」

ひっぱれ、ひっぱれ。どんどんひっぱれ、

サンジが、ありったけの力をだして糸をひっぱると、空のうえから、イワシ雲がピンピンとはねながらおりてきました。

よっと、ギンはとびついて、あたまのうえのイワシ雲をつかむと、雲は、ギンの手からにげようと、パタパタとはねました。

「おっ、このイワシ雲は、いきがいいぞ。ほらサンジ、たべてみろ」

「えっ？たべる？こ、これを？」

ギンは、サンジの口に、イワシ雲をつっこみました。もごもご、ごっくん。

もこもこのイワシ雲は、ほんのりお日さまのかおりがします。

「うまいっ。ほっぺたがおちそう」

「そうだろ？これをたべると、もうほかのサカナなんてたべられないんだ。おっ、おいらのもかかったぞ」

ギンは、糸をひきよせて、ぱくっとイワシをたべました。

「イワシ雲がきえないうちに、どんどんつろうぜ」

サンジとギンが、イワシ雲をつってはたべ　つってはたべしているうちに、空のはしから　ゆうやけがはじまりました。

すると、空いっぱいに広がっていたイワシ雲が、赤色にそまりながら、くっつきはじめました。そして、おおきなおおきなサカナになったのです。

「あっ、タイだ！きょうはタイ雲もでてきた。うーん、うまそうだ」

おおきくてまっかなタイ雲が、西の空でおよいでいます。

「さいごは　おおものだ。よーし　おいらが　つってやる」

ギンは、のこっていたクモをぜんぶひとまとめにしてから、空にむかって

「えーーいっ」

と、なげました。

びゅんびゅんびゅーん。

すごいいきおいで、クモボールが、とんでいきます。

「あっ、もうすぐタイ雲にとどく」

ぱくっ。

タイ雲が、エサのクモにくいつきました。

そのとたん、ぐいっと、ものすごい力で糸がひっぱられました。

「ほっほっほっ、かかったぞ。さあこいどっこい。そらきたどっこい。サンジもてつだってくれ」

サンジは、ギンのしっぽをつかんで、いっしょうけんめいひっぱりました。

「よっこら、ひっぱれ。ひっぱれ、しっぽ」

力いっぱいひっぱるギンとサンジのうえに、　でっかいでっかいタイ雲が、おりてきました。

「もうちょっと、もうちょっとでとどきそうだ」

「えいっ！」

パクッ。

サンジがタイ雲のしっぽに、ギンはあたまにくいつきました。

むしゃむしゃむしゃ、ごっくん、

「ふーっ、うまかった」

おなかはぱんぱん　はちきれそう。もう　うごけません。

おやっ？

サンジとギンが、やねのうえで、ぷかーりぷかりとうかびはじめました。

「うわーっ、ぼく、うかんでる。たすけてくれー」

サンジが、おおごえをだしているのに、ギンは、へいきのへのじ。

ぷかぷかうかびながら、すーいすーいと、ひらおよぎをしています。

そして、やねのはしからはしまでおよいでから

「さてと、オナラ、オナラ」

といって、ぷぅーと大きなオナラをしたのです。

そのとたん、ギンのおしりから、もわもわっと白いけむりがでてきました。

ぷっぷっぷぅー。

ギンが、オナラをするたびに、おなかがしゅるしゅるしゅるっとしぼんでいきます。そして、さいごにぶーーーっと、とくだいオナラをしたとたん

ストン

ギンは、やねのうえにちゃくちしました。

「あーおもしろかった。ほらサンジもオナラ、オナラ」

「オナラ？」

「オナラをして、雲のもとをだせばいいんだ」

「うーん、うーん。でろでろオナラ」

ぷぷぷーっ。

サンジのおしりから、白いけむりがでてきました。

白いけもりは、空にむかって、ぷかーりぷかりとのぼっていきました。そして、ふわふわの雲になったのです。

「うひゃあ、ぼくのおなか、雲でいっぱいだったんだ」

「おならをださないと、おいら、空までとんで　ネコ雲になってたな」

いつのまにかゆうやけもおわり、空にはいちばんぼしがかがやいています。

それなのに、サンジとギンは、空をみながら　まだペロペロとしたをなめています。

この世でいちばんおいしいイワシ雲って、どんな味がするんでしょうね。