じゅんこさん

30年前に標高700mに位置しまわりを山々に囲まれた過疎の町に移住しました。植物を種か…

じゅんこさん

30年前に標高700mに位置しまわりを山々に囲まれた過疎の町に移住しました。植物を種から育てるのが好き。 子どもとおとなのための童話、少年少女ファンタジー小説を書いています。 ほぉとこころがやさしくなるお話やわくわくする話がが好き。

最近の記事

サンジとギン

お日さまきらきらいいきもち。でぶねこサンジは、おひるねちゅう。 「おーいサンジは、いるかい?」 くろねこギンが、やってきました。 「イワシ、イワシ、イワシがきた。つりにいこうぜ」 「つりだって?おことわりだよ。ぼくは、水にぬれるのが、きらいなんだ」 「ホッホッホー、おいらが、水にぬれずにできるサカナつりをおしえてやるよ」 こういってサンジをやねのてっぺんにのぼらせ、空いっぱいにひろがるイワシ雲をゆびさしました。 「この世でいちばんうまいのは、空にうかぶイワシ雲。

    • 夢のたまご売り

      しんしんと雪がふりつもる森の中を、黒いコートを着たおとこの人が、歩いています。 ザクッザクッザクッ、きこえてくるのは、雪をふみつける足音だけ。 どれだけ歩いていたのでしょうか、おとこの人のコートには、うっすらと、雪がつもっています。 やがて、おとこの人は、葉をおとした大きなカエデの木の下で、立ちどまりました。 そして、もっていた古くて大きな革のカバンを肩からおろし、その中から四角い板をとりだしたのです。 そう、ちょうどハンカチぐらいの大きさのね。 おとこの人が、板の

      • 耳がない  その2

        おやっ、あれはなんだ? ネズミくんが、ワニくんのかおにある二つの穴にきがつきました。 「こんなところに穴がある。そうだ、これをひっぱって、耳のかわりにすればいいんだ」  ネズミくんは、穴のはしっこをもって、ぐーんとひっぱりました。 そのいたいこと、いたいこと。 「いたたたたっ」 ワニくんは、大きなこえでさけびました。 「もうすこしだから、ワニくん、がまんがまん」 ようやく手をはなしたネズミくんは、上から下から、右から左からと、ワニくんのかおをじっくりとみてみま

        • ワニくんの耳  その1

          ワニの耳って、どこにあるのかしってる? ワニはね、目の上にある小さなふたつの穴が、耳なんですよ。 でも丘のうえでワニくんをまっているネズミくんは、この耳のことをしりませんでした。 きょうはたこあげをするやくそくをしたのに、ワニくんは、まだきません。 「ワニくん、おそいなぁ」 たいくつになったネズミくんは、土のうえにワニくんのかおをかきはじめました。 「ワニくんの口は大きくって、目はぎょろっとしていて、トンネルみたいなはながあって、耳は・・・、あれっ?ワニくんの耳って

        サンジとギン

          さぼ子さん その18

            連載ファンタジー小説    十八 終わりよければ全てよし 笑天祭が終わった翌日、ぼくんちに来るなり卓也は 「あーくっそぉー、オレ失敗したよー」 とぼやいた。 「なにが失敗したんだ?」 「テレビ局だって、テレビ局。オレさぁ、次から次へといろんなことがおこったから、テレビ局に連絡するのをすっかり忘れていたんだよな。 昨日のあのすごい光なんて、ドンピシャテレビ向けだったのになぁ」 「覆水盆に返らず」 「なんだよ、それ?」 「過ぎてしまったことをなげいても仕

          さぼ子さん その18

          さぼ子さん  その17

             連載ファンタジー小説 十七  笑天祭 「ふーっ」 聖子が大きなため息をつくと、そのまわりのじいちゃんやばあちゃんたちも、同じようにため息をついた。  「健ちゃん、すごかったねぇ」 和子ばあちゃんは、まだ放心状態でぼーっとしている健の背中をさすりながら言った。 「なぁ、わし、夢をみているんじゃないよな?」 こうつぶやいた重じいちゃんの手を、花ばあちゃんが力いっぱいつねった。 「イテテテテッ。おいっ、なにしやがるんだ?」 「おや、いたかったかい?だったら

          さぼ子さん  その17

          さぼ子さん  その16

            連載ファンタジー小説  十六 笑いを糧とする 六年生になったばかりの4月、ぼくらは授業で【生命の神秘】っていうDVDをみた。 この中では、花が咲き始めるしゅんかんや、ゼミが羽化するしゅんかん、卵からヒナがかえるしゅんかんの映像が次々と流れ、最後にお母さんの子宮の中でうずくまっている胎児の映像が映しだされたんだ。 さぼ子さんの横には、あの映像の胎児のように小さな体に大きな頭をもち、全身が銀色にかがやく人のようなものがすわっていた。 「ぼく・・・ともだちだよ」

          さぼ子さん  その16

          さぼ子さん  その14

            連載ファンタジー小説  十四  カギ穴 次の日、よっちゃんの店に集まったのは、じっちゃんたちサボテン組と、ぼくたち子供グループだった。 まず最初にじっちゃんが、きのうまでのできごとを話し始めると、定じいちゃんが、つづいて庄治じいちゃんまでもがブルッとふるえた。 じっちゃんと玄じいちゃんは別として、こんな話は、年よりには刺激的すぎた。 「さて・・・」 話し終えたじっちゃんが、みんなを見回した。 「どうしたらいいと思う?なんかいい案があったら出してくれ」 「そん

          さぼ子さん  その14

          さぼ子さん その13

             連載ファンタジー小説   十三 さぼ子さんを捨てる? 「さてと・・・、おい琢磨、わるいがお茶をもってきてくれ」 じっちゃんに言われ、ぼくは冷蔵庫からペットボトルの麦茶を出して、これを四つのガラスコップに注いだ。 「はい」 ぼくがテーブルにコップを置くと、じっちゃんは麦茶を一気に飲みほし、ふーっと深いため息をついた。 「ああなった原因は、さぼ子さんか?」 玄じいちゃんが聞いた。 「たぶんそうだ」 「さぼ子さんは、いったいどうなったんだ?」 「わしにもさ

          さぼ子さん その13

          さぼ子さん その12

            連載ファンタジー小説  十二 匂いがもれている? 8月2日まで、あと九日。 この日も朝からジリジリと太陽が照りつけていたけれど、ぼくはリビングでひたすら勉強にはげんでいた。 卓也から健はあいかわらずパソコンの前から動かない。オレは何をすればいいんだ?ってラインがきたけれど、ぼくだってわからないよ。 じっちゃんは、今日も玄じいちゃんといっしょに商店街の人たちの説得に歩きまわっていたし、聖子はやっぱり健の所だ。 ぼくだけこんなところで勉強をしていていいのかな?

          さぼ子さん その12

          さぼ子さん  その11

             連載ファンタジー小説    十一 笑天神社 そう、あれはぼくらが一年生のときのことだった。 みぞれまじりの雪がふる二学期最後の日、ぼくは聖子を泣かせたとおこられ、卓也は卓也でふすまに大穴を開けたとおこられたから、二人とも反抗心がむらむらとわき出ていたんだ。 だから大人のいいつけにさからって、笑天さんの社に入ってやることにした。 灰色のあつい雪雲におおわれた空の下を歩き、ぼくらが笑天神社に入ると、クスノキの大木をねぐらにしているカラスが、うすきみわるい声でギァギャァ

          さぼ子さん  その11

          さぼ子さん  その10

            連載ファンタジー小説        十 ねむれない  4Dメーターがとどいた日、8月2日になにかがおころうとしていることを知った。      なにがおこるのか?そしてあの甘い匂いはなになのか? まだなぞがたくさんあるけれども、日付が分かっただけでも、まずまずの成果だと思う。 「おじいちゃん、今日は子どもたちまでいっしょになって何の相談をしてたんです?もしかして、また変なものを作るんじゃないでしょうね?」 夕ごはんのとき、母さんが聞いた。 「えっ?う、うん、なんに

          さぼ子さん  その10

           さぼ子さん その9

             連載ファンタジー小説   九  交信 「け、健なぁ、いくらこの機械を買ったのがオレたちだからってな、おまえはそんなに気をつかうことはないんだぞ」 「あれ・・見て」 健が、おどり場においてあるさぼ子さんを指さした。 「さぼ子さんが、どうした?」 玄じいちゃんが聞いた。 「・・さぼ子さんの・・でっぱり」 でっぱり?ぼくはすぐにリビングを出て、おどり場にいった。 ぼくにつづいて卓也、聖子、咲、そしてじっちゃんたちもさぼ子さんのところにきた。 それからぼくは、で

           さぼ子さん その9

           さぼ子さん  その8

            連載ファンタジー小説    八  かんちがい 七月二十二日、今日は4Dメーターがとどく日だ。 今か今かと荷物をまっていたのは、咲をふくめたぼくたち子供五人と、シルバーメンバー代表のじっちゃん、玄じいちゃん、よっちゃんの三人だ。 「あっ、宅急便が来たよっ!」 二階の窓から商店街の入り口を見ていた聖子がさけぶと、さぼ子さんのまわりにいたぼくらはいっせいに階段をかけおりていった。 じっちゃんが代金をはらって荷物の受け取り印をおすと、横から何本もの手がのびて、すぐに包

           さぼ子さん  その8

          さぼ子さん  その7

            連載ファンタジー小説    七 ばれた 夏休みの初日、朝早く目が覚めたぼくが商店街に面した窓を開けると、古い街路灯の下に健が立っていた。 「健?こんなにはやく、どうしたんだ?」 「・・・あの・・さぼ子さんを・・」 「さぼ子さん?ああ、もうっちょっと待ってろ。今、下に行って戸を開けるから」 ぼくが部屋を出ると、おどり場では、じっちゃんがさぼ子さんに霧吹きをしていた。 「おっ、琢磨、早起きだな」 「う、うん、まあね」 さぼ子さんの例のでっぱりは壁にくっつく

          さぼ子さん  その7

           さぼ子さん  その6

            連載ファンタジー小説       六 ふしぎな匂い 一応解散して。それぞれが家に帰った。 家に帰ってから聖子はテレビのアニメを見はじめ、じっちゃんは夕刊を読んでいた。そして、母さんは夕ごはんの準備。父さんはいないけれど、いつもとかわらない夕方。 「いただきます」 ぼくらが夕ご飯を食べようとしたその時、とつぜんドンドンッと、事務所のガラス戸をはげしくたたく音が聞こえてきた。 「勘ちゃん!勘ちゃん!」 だれかがじっちゃんを呼んでいる。 階段をかけおりたじっち

           さぼ子さん  その6