見出し画像

VOL1:特定非営利活動法人Learning for ALL代表理事李 炯植(り ひょんしぎ)さん

特定非営利活動法人 Learning for All 代表理事
李 炯植(り ひょんしぎ)
東京大学在学中、認定非営利活動法人Teach For Japanの一事業であったLearning for Allに参画し、常勤職員として全国の学習支援事業の統括業務に従事。その後、特定非営利活動法人Learning for Allを設立、同法人代表理事に就任。「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」幹事。

―この企画は教育の第一人者にお話を伺う企画です。教育の課題や展望、それからご自身の生きざまなどを主なテーマにして話していきたいと思っています。
李:僕第一人者じゃないですけど、、、なんでも聞いてください!

INDEX

1:「貧困の連鎖」を個人の努力に帰さないような社会の仕組みづくりを進めていきたい

2:自分で選んで、自分の夢を、自分の力で叶えていくようになった子ども

3:僕たちはあくまで「補助輪」のような存在。記憶に残らなくてもいい

4:子ども目線でいま一番必要な支援のあり方を考えたい

5:ゴールが実現された社会になれば僕たちの団体はなくなってもいい

6:社会のシステムチェンジまで見通しながら、目の前の事象にコミットする

7:市場原理との健全な距離の取り方が大切

8:それぞれの立場の正義を抱えながら葛藤する

9:同じ課題を抱えるソーシャルセクターとアライアンスの輪を広げていきたい

10:教育は「テーブル」で考えていく


1:「貧困の連鎖」を個人の努力に帰さないような社会の仕組みづくりを進めていきたい
―Forbes JAPAN 10月号において、世界を変える30歳未満の若者たち30人「30 UNDER 30 JAPAN」に李さんが選出された記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/22705)を見ました。この中で「貧困の連鎖を断ち切る力を育んでほしい」と語っていますね。この課題に対する社会の認知・理解は進んできていますか?
李:ここ10年で進んできているとは思います。10年というのは何かというと、岩波新書から阿部彩さんが『子どもの貧困』という本を出したのが2008年なんですね。あと、湯浅誠さんが年越し派遣村を立ち上げたのも2008年。僕が大学一年の時です。それで、お二人がその後、民主党政権の委員になって「子どもの相対的貧困率」の問題を取り上げました。ここから潮目が変わって、子どもの貧困の問題が日本社会の中でもイシューとなりました。いまはちょうどそこから10年なんです。メディアの報道、関連する政府の事業・予算も増えてきています。少しずつは広がってはいるのかなと。ただ、正直言えば、まだまだ足りないです

―いまは日本の子どもの7人に1人が貧困と言われている状況です。どういう状態になればこの連鎖は断ち切れたと言えるでしょう?
李:難しい問題です。分かりやすくいえば、その子どもが生活保護でなくなるというのは重要だと思います。あとは、遠いですけど、憲法に掲げられている「健康で文化的な最低限度の生活」が、実現できる状態になるということ。抽象的ですが、これは意識しています。

―憲法の理念が実現できた状態ってどういう状態なのでしょうか?
李:健康な生活とは?文化的な生活とは?というのは、広く解釈が開かれているものだと思っていて、時代ごとにその社会的な含意も変わっていいものだと思っています。国や各々の地域社会が想定しているものと、僕の想定は違うかもしれないですが、まずは目の前の子どもたちの生活保護が繰り返されないよう、貧困の連鎖を断ち切るための直接的な支援をしていくこと。それと同時に、これを個人の努力の問題だけに帰さないように、すべての子どもに十分な支援が行き届くように社会の仕組みが変わっていく状態も視野に入れたいと考えています


2:自分で選んで、自分の夢を、自分の力で叶えていくようになった子ども
―2010年にTeach for Japanの中の一つの事業として学習支援事業・Learning for All(以下LFA)が立ち上がって今年で9年目を迎えます。恵まれない環境で暮らす子どもたちに対する支援を通じて、自立していった子どもたちのエピソードをなにか聞かせてもらえないですか?
李:大学生がついに出ました。塩崎さんが大学生ボランティアとして関わっていた時代(※2011年)に、葛飾地区で支援を受けていた、当時小学生の、生活保護世帯の子どもが、いま大学に通っていて、なんとアメリカに留学までしているんですよ

―その子は小学校卒業後も、葛飾地区でLFAの支援を受け続けたんですか?
李:そうですね。中学時代はずっとわれわれが伴走していました。しかし、支援を続けるなかで、少しずつ自立をはじめて、高校になるともう、自分でいろいろと考えられるようになっていたので、なにか困ったことがあればうちにやってくるという状況にまでなっていきました。

―LFAとしては、具体的にどんな支援をしていたのですか?
李:その子は英語が好きだったので、英語が得意なボランティアスタッフの大学生がついていました。将来は英語を使った仕事に就きたいという話がその子から出てきたので、英語の先生、通訳、外交官など、スタッフが子どもと一緒にどんな職業が将来あるのかを調べて、子どものやりたいことに寄り添って支援をしていきました。こうした話をしていると、ある日、その子は英語特進コースのある高校に行きたいと自分で言い始めたんです。それでその高校に入って、そこからはもう自分で進んでいきます。高1のときに交換留学で1か月のホームステイを経験してきて、高2の時には、自分でバイトをしてお金を貯めてもう一度そのホストファミリーのところに行きました。嬉しそうにその体験を話してくれる表情がとても印象に残っています。大学進学に関しては、奨学金制度が充実していて、かつ留学ができるような大学を調べて、自分で選んで、自分の夢を、自分の力で叶えていくようにまでなっていきました。本当にすごいなあと思いますね


3:僕たちはあくまで「補助輪」のような存在。記憶に残らなくてもいい
―学習支援を通じて、自分で考えて人生を選択できるようになっていったというのが素晴らしいです
李:Forbesにも書きましたけど、僕たちの団体はあくまで「補助輪」であって、何者かになろうとしてはいけないと思っているんです。僕たちのボランティアスタッフは、Great Teacher鬼塚みたいな、強烈な個性を持つ先生のイメージではまったくないんです。極端な話、その子どもの記憶に残らなくてもいいくらいだと思っています

―気づけばひとりでに子どもが人生を走り始めている状態ということ
李:そうです。どんな子どもであっても、子ども一人ひとりには力があるし、その人なりの志向性があると僕たちは信じています。なので、地域社会や僕らみたいな支援団体を通してかかわる大人が、子どもたちをどう支えられるかが大事であって、支えたから見返りを、という話ではないんですよね


4:子ども目線でいま一番必要な支援のあり方を考えたい
―当初のLFAはTeach for Japanの中の「学習支援事業」でした。その後、LFAとして独立団体となって李さんが代表理事になってからは、活動領域が広がった印象ですが、どのような想いを持たれていましたか
李:子ども目線で、この子たちにとっていま一番必要な支援は何だろう?という視点ですべてを考えたいと思っていました。そうやって物事を考えていくと、学力支援ももちろん大事だけれども、その以前に、学習に向かう意欲や習慣の醸成だったり、キャリア観の育成だったり、あとは保護者さんを含めたご家庭の支援だったり、そういうこともしていかないと、「貧困の連鎖」という社会課題は解決していかないということを、思い始めていました。

―この時の原体験が、LFAとして独立したあとの、子ども目線を中心に置いたLFAの現在の事業コンセプトに繋がっていくわけですね
李:そうです。子どもたちの中には、生活習慣が昼夜逆転していたり、毎日お風呂に入れていなかったり、ご飯が十分に食べられていなかったりなど、勉強を頑張るとか夢を描くとか、そういう話以前の、「育ちの課題」を抱えている子どもたちも多くいます。彼らのような、「学習支援事業」に至る段階以前の子どもたちの支援を目的にして、2014年から「子どもの家事業」を始めたのもそういった背景があります

―「学習支援事業」と並ぶ、LFAの柱の事業として「子どもの家事業」が生まれたんですね。今後の事業構想はありますか?
李:はい。実は今年から、この2つの事業を合体させた「チャイルドエコシステム(CES)」と呼ぶ新たな支援モデルのあり方を構想しています。地域の6-18歳までの子どもたちのなかで、何かしら社会の支援を必要とする状態にあって、かつニーズがあるような子どもたちについては、「子ども家事業」で支援してきたつながりの場と、「学習支援事業」で支援してきた学びの場を、切れ目なくセットで提供できるようなモデルを始めていく予定です


5:ゴールが実現された社会になれば僕たちの団体はなくなってもいい
―現在のLFA組織では、20人の正規職員のほかに、400人もの大学生ボランティアが現場を支えてくれているとのことですが、昔と比べてかかわってくれる大学生の気質などには変化はありますか?
李:これはありますね。昔の方がどちらかというと自分の成長や経験を軸に置いた、挑戦心や野心のある学生が多かったかもしれません。これはこれでいいことだと思いますが、LFAとして独立して以降は、「子ども」を中心に置いた事業コンセプトにシフトし、対外的なブランドメッセージも変えてきたので、子どもたちの目線に立って、彼らが本来もつ力を発揮できる環境をいかに支援のなかでつくりあげていくか?という、僕たちが大切にしたい考え方に共感してくれる大学生ボランティアが来てくれるようになったのかなとは思います。女性比率もかなり多くなりました。そういう人を採用して、育成できるような研修にもしているというのもありますしね

―僕たちのような、いちビジネスパーソンからすると、まだまだNPOというもののイメージが十分ではないかもしれません。NPOという組織について簡単に教えてください
李:まずNPOの形態を少し整理しますと、事業形態によって、大きくは「寄付型」と「事業収入型」に分かれるんです。フローレンスさんなんかは完全に後者ですね。フローレンスさんは20億事業になってますからね。ソーシャルな課題を市場の論理を介在させて解決していく形です。一方、僕らのような団体は、市場に任せているだけだと支援が行き届かないような子どもを対象にして運営をしていますので、「事業収入型」だけではなかなか難しいところがあり、「寄付型」での運営が中心になります

―「事業収入型」でないLFAのような団体の場合、組織はどういう指標で成功や成長を確認していくんですか?
李:実はそこが明確に置けていないNPOが多いのが実情かと思います。実際、僕らも作り上げている最中です。いま考えているのは、さきほどのチャイルドエコシステム(CESモデル)のように、地域社会の中で、支援から取り残されてしまった子どもたち―たとえば貧困の子、外国籍の子、発達障害の子―のセーフティネットを整備し、社会の中で自立する力を得てもらう状態になることがゴールだと思っています。かつ、これをある特定の地域だけで実現している状態ではなくて、支援を必要とする子どもたちに対しては、すべからく切れ目ない形で支援が行き届くよう、行政へ働きかけて、法制度化までもっていきたいと考えています。極端な話、これが実現されて僕たちの団体が不要になって解散、となったとしてもそれはそれでありなんですよ

―あくまでゴールは社会課題ベースであると
李:はい。社会のシステムチェンジを起こして、全国津々浦々、それぞれの地域に合った形で支援が切れ目なく実現していくということが、いま構想している僕たちのゴールです

―ともに働く従業員には共有しているのですか
李:TOC(theory of change)という変革のストーリーのひな形があって、これを使って整理しながら共有していっている途中です。これは、NPOとして掲げる社会課題が解決されるプロセスをどう考えるか?を、考えるのに適したモデルです

―具体的なTOCの枠組みとは
李:最終的には「すべての子どもたちが自分の可能性を感じ、貧困を脱している社会」を創りたいのですが、これだけ置くと遠すぎるので、一つ手前の状態を「いまコミットできるアウトカム」として言葉にして置くんです。それが先ほどお話しした「支援の必要な子どもたちに対して、必要な育ちと学びの環境を整備する」ということですね。次に、この環境構築を置いた時の実現プロセスとして、まず僕らがその理想状態を一つの地域をパイロット拠店にして創っていく。次にこれをモデル化してほかの地域に広げていく。最終的には法・制度化していく。ここまでいけば、また次のプロジェクトを起こして、あくまで最終的に目指したい「すべての子どもたちが自分の可能性を感じ、貧困を脱している社会」へと向かうアクションを取り続けていく。これがTOCの考え方の枠組みです。いわゆる経営戦略の考え方に近いと思いますが、NPOにはあまりこういう考え方がなくて、これをいま僕たちの組織でもつくっていっているところです


6:社会のシステムチェンジまで見通しながら、目の前の事象にコミットする
―LFAの組織の特長として、昔からリフレクションを起点に自己変革を続ける文化が根付いた組織だと感じています
李:その通りですね。現LFA理事の熊平美香さんが「学習する組織」の第一人者であるということが大きいと思います。僕ら経営陣が彼女らから直系でずっと学ばせてきてもらったのもあって、僕が組織作りをするときにも、学習やリフレクションを、LFAの重要なカルチャーとしてつねに言語化して置いているのは大きいんじゃないですかね

―なるほど
李:あとは、経営者が、目の前の事象だけを見ているのか、目の前の事象にコミットしつつ、社会のシステムチェンジまで見据えているかどうか。ここは大きな違いなのではないかと思っています。そこまで見据えているからこそ、組織を変えていかなければいけない理由が見えてきます

―経営者の組織観の違いが大きいということですね
李:民間企業だと当たり前のことなのかもしれないですけどね

― 活動に共感する人はLFAに対してどんな支援ができますか
李:僕たちの事業の軸は「寄付型」ですので、寄付を通じて僕たちの活動を応援してくださるのであればとても嬉しいです。あとは、NPO1団体だけでは社会課題の解決はできないと思っているので、たとえば塩崎さんが働かれているような民間の教育関係企業と連携をさせていただくなども大事だと考えています。実際、僕たちの組織で学生時代に学習ボランティアを経験した卒業生が、就職先の企業の社長さんをつないでくれて、その社長さんが僕たちの人事制度を支援してくれていたりもします。あとはもちろん、職員になるなどして僕たちの組織に飛び込んできていただければそれは本当にありがたいです。


7:市場原理との健全な距離の取り方が大切
―いま正規の職員が20人ということですが、どんな方がいますか?
李:もちろん大学生のときから学習支援事業にかかわってくれて、そのまま職員になった人もいますし、電通や日立、アクセンチュア、JTBなど民間企業出身者も増えています。こうして考えてみると、ビジネスセクター出身の人が半分以上にはなってきましたね。多様性があるのが特長です。ビジネスの手法を嫌うソーシャルセクターもありますが、僕は分けて語れるものではないなと思ってるんですよ。目標達成のための手法として、いわゆるビジネス的な思考プロセスがあると思っているので、それって社会課題の解決をゴールに掲げる僕たちのようなNPO団体にも必要なことです

―ビジネスの手法やそこで経験を積んだ人材も活躍できる環境だと
李:ただ、気を付けないといけないのは、僕たちのようなNPOセクターが市場の論理だけで動くようになるとおかしなことにはなります。たとえば、いま休眠預金を政府が活用しようとしていて、何十億というお金がNPOセクターに流れてくることが決まってるんですね。こういう大きな規模のお金が流れてくると分かると、民間企業などは素早く参入の動きも見せてきます。プレイヤーが増えるのは悪いことではないのですが、市場化論理が強くなりすぎると、本当に支援を必要とする苦しい環境にある子どもたちを、カバーできなくなる可能性が出てくるという課題があります。こういうことが起こりつつあるんです

―LFAの立ち位置はどのようなところですか?
李:バランスです。市場原理との健全な距離の取り方が大事です。経済合理性で説明できないものがすべて排除されてしまうということは非常に危険で、そうはならないように気をつけたいです。ただ一方で、市場原理を取り入れて、団体を大きくして事業規模も充実させていかないといけないとも思っています。正しいことをやり続けてお金がまわらなくなって従業員が疲弊してしまうようなことは絶対したくないんです。両方のベクトルを持って経営しているかどうかが大事だと思っています


8:それぞれの立場の正義を抱えながら葛藤する
―経営者・李としてこの自己規律を保つというのかバランス感を保ち続けることができる源泉はなんですか?
李:内的な葛藤を認識して抱えながら経営をすることだと思います。僕が経営者になりたての頃は、大学院の基礎教育学研究科にも所属していました。この立場から、経済合理性にからめとられない教育や社会のあり方をずっと考えていたのですが、そんな自分と、経営者として目の前の従業員を幸せにしていかないといけない立場の自分というのが、全く違う自分のように思えたんですよね。正義がそれぞれの立場にあって、それぞれに違うんですよ。2,3年経って、その2つのスイッチを両方持ちながら、事業運営できるようになってきたというのが大きいんじゃないですかね

―経営者として大事にしていることは?
李:やっぱり従業員の生活を守ることです。そして顧客に対して、その顧客が求めるレベルのサービスをしっかりと提供して、その結果からリフレクションをして僕たち自身の組織を磨き続けることです。「学習支援事業」だけではなくて「子どもの家事業」を始めるとか、さらにこれをシームレスにつなげてさきほどのチャイルドエコシステム(CES)構想を動かしていくといったように、僕らの事業のあり方は変わり続けています。同時にこれに付随して、一緒に働いてくれている従業員の生活を安定させていくために、従業員の賃金も高めていきたいと思っています

―従業員によく発信しているメッセージは?
李:「リフレクション」の重要性は、月1くらいでは言ってますね。みんなでよくやりますし。あと多様性です。いろんなメンバーいるじゃないですか。オ-ルマイティじゃなくてよくて、それぞれの強みを活かして、もっとも貢献できるポイントで活躍してくれればいいと。よくいるじゃないですか、営業できるけど細かい作業無理とか、戦略得意だけどコミュニケーション弱めとか。それぞれがそれぞれの強みと、あとはLFAに飛び込んできてくれた理由が大事だと思っているので、自分の強み、LFAにいる理由、これらが紐づいて、LFAでの仕事が、従業員一人ひとりの人生の糧になっていってほしいと思っています。いま僕たちの組織には、この仕事を金銭的な価値の交換のジョブだと認識して働いている従業員は一人もいないと思っていて、ここはこだわっているし自信を持って言えます

―従業員の個性や強みを発揮してもらうという部分と、組織として向かっていく方向性を合わせていくということは簡単なことではないと思いますが、このあたりで大切にしていることは?
李:セオリー通りかもしれないですけど、採用段階で組織の方向性と、応募者個人の想いをしっかりと確認することですね。あとは、組織規模がある程度大きくなってきたので、先ほどお話ししたように、一人ひとりの強みを生かす配置ができるようになってきているのも大きいです。この辺りは規模が大きくなってきたからこそ、できるようになったことです


9:同じ課題を抱えるソーシャルセクターとアライアンスの輪を広げていきたい
―改めて、今年の活動の展望はどんなところですか?
李:まずチャイルドエコシステム(CES)構想の実現に向けて、大きなファンドレイズが決まりつつあります。今月プレスリリースできると思いますが、ある企業さんとともに、さきほどお話した「学習支援事業」と「子どもの家事業」とをシームレスにつなぐモデルづくりを本格的に進めていきます。8月から葛飾区を拠店にはじめ、来年4月からは拠点を3つに拡大してやっていきたいと思っています。

―このモデルを日本全国に広げていくのが当面の目標ですか?
李:そうですね。ただLFAがやるのは僕らが見えている地域だけでいいと思っています。できればいいなと思っているのは、同じフォーマットなのかマニュアルなのかを、同じ課題を抱える地域のソーシャルセクターと共有しながら、フランチャイズ的な形で一緒に課題解決のモデルを見つけていいかなと思っています。地域の課題は地域のことが良く見える組織が解決していく形が望ましいと思うんですよ。なので、LFAの中で何拠店か形になっていけば、あとはアライアンスですね。このアライアンスの輪が広がっていくと、厚労省なり文科省なり、行政への政策提言も行いやすい状況になってくると思っています

―LFAがどう広がるかというよりあくまで社会課題解決ベースですね
李:その通りです。あと今年のこだわりは、僕ではない社員のリーダーをどんどん創っていくことです。実はさっきお話ししたチャイルドエコシステム(CES)構想の話も、社員みんなで話をして、「学習課題と生活課題とを分断させず、切れ目のない支援を子どもたちにしていきたい」という話が出てきたところが始まりなんです。ただそうはいっても、これはまだまだ僕がデザインして仕立てていった部分も大きいプロジェクトです。一方、従業員には多様性があって、それぞれのバックグラウンドも違うので、それぞれがやりたいことや社会に対して持っている違和感には違いがあると思っています。これをどんどんチャレンジできるようにしていきたいんですね。そのためには、彼らにマネジメントを託していったり、組織をどうしていきたいのかというビジョンを考えてもらうことが大事だと思っているので、僕自身は一歩引くというか、ファシリテーターの役割にポジショニングを移していきたいというのはありますね


10:教育は「テーブル」で考えていく

―やーほんと楽しい時間をありがとうございます
李:あと一個話していいですか。この前、ある社員から、僕たちの組織がエスタブリッシュメントになりすぎてると言われてハッとしたんですよ。ここにいるのはみんな大卒じゃないかと。このように、気づいたら同質的な集団で固まっている状態って、気を付けないといけないなと思っていて。ある種心地いいんですけどね、同質的な集団に閉じこもるのは

―自分の知らないものや、気づいていない人や価値観に触れないと、学びは始まらないということですね
李:血を入れ替えたいですもんそろそろ

―動かないと血は固まってしまう
李:そういうことです

―最後に、今後の教育を考える上でのキーパーソンは誰ですか?あなた自身でもあると思いますが
李:教育のキーマン。難しいですね。ただ、一人に求めるっていうのではなくて、キーパーソンというより「テーブル」なんじゃないかなって僕は思うんですよね。教育を語らうテーブル。これがいま足りてないんじゃないかという気はしますね。文科省の審議会は文科省、経産省の審議会は経産省になっちゃってますよね。あとはトップではなくて、僕らみたいなレベルで会話していくのがいいんじゃないですね。それこそ、LFAの卒業生というくくりでいくと、文科省、経産省、リクルート、ベネッセ、、、いろいろいますし

―アラムナイ的なね
李:そういうのうちでイベントやります?いいかもしれない!

―ぜひよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました!

Learning for ALLに興味を持たれた方はこちらへ

https://learningforall.or.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?