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折々に

退勤時、職場の裏口を開けた途端、肺にスッと入ってきた空気は、えらくシンとしていて冷たかった。
夜はもう来ていた。
夏頃の同じ時間帯はまだ青白いまであった空は、胸に沁み渡るほど暗くなっていた。
そこに煌々と浮かび並ぶバイパスの街灯たちはまるで人工の星のように照りつけており、すっかり、とは言えないがほぼ暮れた夕焼けが、顔を赤くしたり紫にしたり、奮闘しながら夜空にしがみついていて、なんとも言えない良さがあった。
それを見た途端に
嗚呼、冬が好きだなあと思った。


冬も好きだし、秋も好きだ。
夏もたまらなく好きだ。

春だけが僕と仲違いしている。
春が嫌いなんだ、みんなが僕をおいていってしまうから。

でも、桜は来年も見たいなあ、なんて思った。

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