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音の嗜好

ご挨拶

張り切っております、noteという新たな媒体。
思いついたことを好きなだけ書く、というのは気持ちが良いものです。
これからも肩の力を抜いて色々書いていきたいなと思っております。
今回はこちら、ギター弾きとしての音の嗜好について。

思い描く音≠いい音

ギターを弾いている方なら経験あると思います。
好きなギタリスト、好きなバンドの曲を聴いて「かっこいいなぁ、こんな音自分でも出したいなぁ」という奴。
そして、情報探して機材集めて、模倣するんですよね。

俺ももちろん同じです。
最初にそう思ったのは思い返せばX JAPANの名曲、DAHLIAだったのではないかと。

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重厚なディストーションサウンド、トリッキーな空間系、サスティナーを駆使したソロ…とっても痺れた覚えがあります。
そして、こんな音を出したいと思って、当時のさらに拙い知識と経験に、別売の設定集!みたいな本を買い込んで、頑張ってみたものです。

でも、案外ここに落とし穴があることに、当時の俺はまだ気付いていないのでした。

そもそも「いい音」とは

ギターの出音に関して、一言で「いい音」と言っても千差万別。
爽やかなギターロックやるのにゴリゴリのメタルサウンドを作っていく人もいないでしょうし、HR/HM系のバンドをやると言う時にペッケペケの音で挑む人も少ないでしょう。
細かいことを言うのなら、同じHR/HMだとしてもLed ZeppelinやDeep Purpleのようなハードロックをやるのか、Guns N' RosesやMötley CrüeのようなLAメタルなのか、Judas PriestやBlack Sabbath、IRON MAIDENといったオールドなメタルをやるのか、Djent系の歯切れの良いモダンなメタルをやるのかでも、答えは違ってきます。

このように演奏するジャンル、内容、人数、メンバー構成などによって実に様々な「いい音」が考えられます。
ですがそもそもの大前提として、「バンドのギタリスト」としていい音というのはどういうものなのでしょう。

ギターが担う部分


よく「そのバンドがうまいかどうかはリズム隊で決まる」とか、「ボーカルはバンドの顔」などと言われることがあります。
俺も概ね同意です。が、じゃあギターは?というとあんまりこのような格言がないような気がします。

俺が思う各楽器がバンドで担う部分は
・ドラム…曲のリズム、曲の土台
・ベース…音圧、ボトム、曲の基礎部分
・ボーカル…メッセージ、メインメロディ

こんな感じじゃないかと捉えています。

ではギターはなんだというと、乱暴な言い方をすると「曲のドラマ感」「曲の色」です。
もっと端的にいうと「かっこいいかどうか」「いい曲かどうか」の雰囲気はギターが担っていると思っています。

上記三つを見れば、音楽の三大要素である「リズム、メロディ、ハーモニー」はギター以外で完成します。
つまり曲としてはギターがいなくても成り立つ上に、「言葉」というエッセンスまでお届けできるのです。
では、この3ピースのバンドを想像してみてください。
オーディエンスがバンドマンばかりで3名が全員目を見張るほど上手だとしても、世間一般にそれがウケるかと考えると、疑問ですよね。

ギターの音に求められるもの

ギターというのはボーカルが歌っていない部分では曲の顔となり、バッキング時にはボーカルの支えに徹しつつ、様々な音色で曲を彩り、ソロなどここ一番ではバンドの一番前に出ていく。
こう書くと意外と忙しいことがわかってもらえるかと思います。

さて、そんなギターの音作りですが、前述のようにDAHLIAの音色に憧れて真似をしてたりすると、痛い目を見ることがあります。
「何をしているか分からない、ギターが聞こえてこない」という、非常に本末転倒なことを指摘されがちなのです。
先述した重要なポジションを占めるギターがこのようでは、バンドにとってマイナスは計り知れません。
ではこれは一体、なぜ起こるのでしょうか。

聴いた音をそのまま出すという危険

もちろんプロが使用するシステム、先ほどの例えで言うとHIDEとPATAの機材を丸ごと集めてくるのは非常に困難です。
個体差なども考慮に入れると、不可能と言ってもいいでしょう。

それを、例えばアンプシミュレーターやコンパクトまたはマルチエフェクターを駆使して、CDで聞こえてくる音にかなり肉薄できたとしましょう。
そして満を侍してバンドのスタジオに持っていって、自慢の自作サウンドをドラムの4カウントに合わせて力いっぱい奏でました!

十中八九、抜けてこないです。

抜けてこないとは、音がバンドアンサンブルに埋もれてしまって、ギターが何してるか分からん状態のことです。
あるんです、よく。
で、「あれ聞こえないな…」でマスターボリューム上げまくってハウリングしまくるか、「これ設定集を読んで作ったXの音だぞ!間違ってるわけないだろ!」と意固地になって不貞腐れながらその日を乗り切るか…

はい、ご察しの通り俺の実体験です。

なぜこういうことが起こるか?

ではなぜこうなってしまったのでしょう。

原因として考えられるのは「音を鳴らす環境の違い」「音を鳴らす人数の違い」「真似をしたのがCD音源」
この3つがあります。

音を鳴らす環境の違い

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大体のアマチュアギタリストは、音作りのアタリを家でつけます。
今でこそラインで出すだのヘッドフォンがアンシュミに直接刺せるだの、助かる機能がてんこ盛りですが、それでもです。

自宅にスタジオにあるようなアンプがあり、それをスタジオと同じような大音量で鳴らせるなら話は別ですが、大方の人は家庭用小型アンプか、集合住宅の方はそれすらも難しく、ヘッドフォンオンリーで演奏していることと思います。
この状態でベストな音を作ったとして。

実際大音量でライブをする時にはこれとは比べ物にならないほど大きなアンプです。

センドリターンで出すとしても、出力とキャビネットの違いは無視できません。
ここでの響き方の違いを計算に入れる、というのはなかなか難しいですね。

これはもうこういうもので、仕方がないです。
一度1人ないしメンバー少数を誘って、音作りのためにスタジオを利用しましょう。
実機で鳴らさないと分からないことは、実機で鳴らすのがいちばんの解決方法です。
もちろん、ここで完成ではありません。アンサンブルの中での微調整は全体練習の時にしかできないですが、8割程度の大まかな音色作りに加え、音の方向、大体のアタリ、音色間の音量調整、ハウるポイントなどはこれで抑えられます。

音を鳴らす人数の違い

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家で演奏するときは当然ながらギタリストひとりです。
せいぜいCDでもかけて、合わせて練習するくらいでしょう。
弾ける曲リストを作って、それに合わせるという方もいるかもしれません。
しかし、この状況で無意識ですが意識的に聴いているのは自分のギターです。
設定したサウンドの事ももちろんですが、「このフレーズが弾けているか?」や「ここのフレーズはこうでいいのか?」など練習時に気にする箇所は枚挙に遑がありません。
もちろんこれはこれでいいのです。むしろ個人練習なのですから、こうでいないといけません。
が、気にしたいのは自宅練習の際は、自分で自分の演奏が聞こえていればよく、そのためにボリュームを上げることや周りの音源を下げること、弾きやすいように設定をいじることは自由自在です。

しかし実際バンドで合わせるのは、完成し切ったCD音源ではなく、ほぼほぼ同じくらいのレベルの生身の人間が奏でる生楽器です。(同期音源などは別として…)
当然CDの、調整まで済んだ音源と比べれば、ヨレますしミスります。
さらにバンドアンサンブルの場合、自分の音だけ聞いているわけにはいきません。
ここで家では気付かなかった(または気にしなかった)帯域被りが出てくるわけです。

ギターという楽器は、美味しい帯域はミドルにあります。
が、それはただでさえボーカルやギター、キーボードと被りやすく、だからと言って極端に低音重視にするとベースとかぶり、高音重視にするとシンバルと被ります。
で、ロックバンドなら大体そうでしょうが、ディストーションなどをかけ、音を意識的に歪ませているので、往々にして音の競り合いに負けて埋もれるのはギターです。
で、先ほどの通り単純な音量で音を出そうとしてハウリング地獄。
実によくあることです。

これが先述した微調整の肝となる部分です。
アンプ部、または外付けなどのEQで調整をかけます。
基本的に歌物は歌が聞こえなければ何の意味もありません。
だからと言ってボーカルに帯域を明け渡し過ぎれば、ギターの美味しい部分もかき消えます。
プライオリティがあるだけで、こちらにも役割があります。
無理に犠牲になることはないのです。
なのですが、これも配分が難しく、譲りすぎれば無個性or変な音、頑な過ぎればボーカル食っちゃう独りよがりになってしまいます。

時間をかけて10band EQなどで、他のギターやボーカルとの棲み分けは調整できますが、ギターはまだしもボーカルは性別はもちろん、声質や声量、歌い方も絡んでくるのでこれもなかなか一概に答えを出すのは難しいところです。
根気よくベストを探る以外にないでしょう。

真似をしたのがCD音源

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で、最後にこのお話を。

CDで出ている曲、音というのはもちろん、我々の敬愛するプロのギタリストがこだわりの機材を用いて完璧な演奏をします。
なので、ぜひ真似てみたいと思うのも真理です。

ですが、CDで聞こえる音をそのまま生バンドに持ち込むとどうなるかは先述した通りです。
そこには、案外見落としがちな手順が隠されているからです。

レコーディングというのは、ライブ盤も含めて音を撮り終えた後に演者の手を離れミックス作業マスタリング作業を経ます。
X JAPANで言うYOSHIKIのように、同バンドメンバーがその作業をやったとしても、演奏時と調整時は頭のチャンネルを変えるでしょう。
ここで音圧を稼ぐためにゲインをあげたり、各パートの音量調整、時としてはノーマライズという、本来聞こえ辛い音を引き上げたりしています。
その手順の再現は、ギタリストの手元、足元では追いつかないことがしばしばです。

結論から言うと、CDから出てくる音をそのまま真似て生演奏に加わる場合、まずゲインが高すぎます。
このゲインというのが曲者で、上げると非常にロックなドライブサウンドを得ることができるのですが、上げすぎると聞きづらくなります。
これは、音を歪ませすぎる=音の輪郭がなくなるということです。
シャーシャーとか、ガーガー言ってるのはわかるんだけど…細かく今何したか分からない音というのは、大方これが原因です。

で、ここがポイントなのですが、「あげすぎ」のボーダーは我々が思っているよりだいぶ下にあります。
「こんくらいは欲しいぜ!俺様はロックだからな!」と、ギタリスト本人が満足するくらいまで上がっていると、もう手遅れなことが多いです。

また、音圧という意味で本来あまり出ていない帯域もこの手順で上がっていたりします。
なので、この全て出ている状態をそのまま真似すると、周りの全演者に戦いを挑む形になります。

もちろん全帯域に満遍なく、は単体として見れば理想的な音の出方なので、これ自体はいいのですが、周りと馴染ませるのは大変難しいです。
さらに言うとCDの特定の曲の音と言うのは、「その曲のその部分を担う」前提なので、融通が効かなくなることも多いです。

最終的にどうすればいいか

では、以上を踏まえた上でどうすればいいのか。
これはもう、根気よく折り合いをつけるしかないのです。

自分の納得のいく、ではありません。
自我と周りとの折り合いをつける、です。

高性能なペダルボードや、俺の所有するHELIX LTのような、「その気になればなんでもできる」機材というのは非常に魅力的です。
事実俺も、HELIX LTのおかげで機材は「足元にこいつがいればいい」状態になりました。
しかし、なんでもできるし、追い込めるとなると、欲が出てしまいがちです。
こうして、ギタリスト自慢のサウンドは自宅で生まれるのですが、それがそのまま通用するかは合わせてみないとわかりません。
また、いくらかっこいい音だからって、気を抜けばハウリング、歪ませすぎて細い音…なんてのも避けなければなりません。
あなたは1人の大切なあなたですが、バンド演奏するときはそのバンドの何分の一かの構成員であるということを忘れてはいけないのです。

ですので、まずは自宅で納得のいく音色を作りましょう。
そしてその後、スタジオで実機を使って鳴らしてみましょう。
そこで問題なし、もしくは起こる問題を解決できたら初めて、バンドに持っていくのです。
そこでアンサンブルを録音して確認しながら、最終調整をしましょう。

そうすればきっと、長く使えるそのバンドのあなたにとっての、いい音ができますよ!


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