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『エルピス』シナリオブックを読んで

2022年に見た中で1番心に突き刺さったドラマ『エルピス ―希望、あるいは災い―』のシナリオブックを借りて読みました。


自分の関心が生きるときがくる(かもしれない)


巻末に、脚本の渡辺あやさんとプロデューサーの佐野亜裕美さんの特別対談が収録されていました。

このドラマが紆余曲折を経て実現に至ったことは以前から目にしていたのですが、
この本では、企画の初期段階で、そもそもなぜ冤罪というテーマを取り上げるに至ったのかという経緯が書かれており、面白かったです。

渡辺さんは、企画の初期段階で、相手(この場合佐野さん)と同じ熱量で取り組めるものを見つけるようにしているそうです(p.297)。

「どんなにいい企画だったとしても、その企画を持ってきてくださった方自身にとって情熱を注ぐことのできる題材でなければ、必ず途中で行き詰まるんですよ」

渡辺あや著(2023)『エルピス ―希望、あるいは災い―』河出書房新社, p.298.

佐野さんはこのやりとりを受け、冤罪というテーマに行き当たったそうなのですが、元々、仕事とは関係なく冤罪のルポルタージュを読んだり、裁判の傍聴に行ったりしていたことが素地としてあった、ということが書いてありました(p.298)。

私は仕事に関係する事柄以外にも、関心を持っていることがいくつかあり(知識は大して深くありませんが)、
でも「仕事に直接役立つわけでもないしなあ」と思って、そんなことに時間を使うくらいなら、仕事関係の勉強をするべきでは?などと思ってモヤモヤすることが時々あります(マジメか)。

でも、意外と、巡り合わせと自分の努力次第で、こんな風に思いがけず自分の関心を仕事に生かせるようなことがあるのかもしれない(そしてその時の威力はすごい!)と思うと、少し前向きな気持ちになれました。
(そもそも、「なんだって仕事に生かせなければいけない!」みたいなコスパ重視の考え方がまずそもそもどうなのよ、という話もありますが。「何を人生の目的とするか」みたいな話ですかね。)

おまけ

シナリオブックってあまり読んだことがないのですが、実際のドラマとはセリフや場面設定など結構違っていて、面白かったです。

たとえば・・・

実際のドラマになくて、シナリオブックにあったセリフの例

恵那「会食って、なんなんだろね。なんでみんな仕事の話と食事を一緒にしたがるんだろ。そもそもランチって会社員が唯一ひとりになれる時間なのにさあ……」

渡辺あや著(2023)『エルピス ―希望、あるいは災い―』河出書房新社, p.18.

私も昼休みはほっといてほしい派なので共感。笑

あと、ドラマを見ていて思わずフフッとなってしまった、斎藤(鈴木亮平さん)からの浅川(長澤まさみさん)宛てのLINE連打に村井(岡部たかしさん)が「刻むな~、こいつ」って言ってたセリフ(6話)は、シナリオブックにはありませんでした。笑

ちなみに、たくさん名セリフ・名フレーズのあったこのドラマで、私が結構好きなセリフは、岸本(眞栄田郷敦さん)ナレーションの

そうして僕はついに 自転車を買った。

5話(渡辺あや著(2023)『エルピス ―希望、あるいは災い―』河出書房新社, p.139.)

です。
ちょっとコミカルな扱いのセリフではあるのですが・・・
どんなことだって、「自転車を買う」みたいなちょっとした、ひとりの一歩(ひと漕ぎ?)から、始まるんだよなぁ・・・なんて。

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