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卒業に先立って

卒業の時期だ。何を隠そう私もある教育機関からの卒業を控えた身である。ここで、我ながら「教育機関」と言ってしまっていることに若干の違和感がある。というのも、私が通っているのは専門学校、より分かりやすくいうと「養成所」であるからだ。いわゆるお笑いの養成所に似た、放送作家の養成所である。

このnoteを書くにあたり、昨年大学を卒業した際のnoteを振り返ってみたのだが、なかなか面白い文章を書いたな、書いておいてよかったな、と思った。そのため、現状整理も兼ねてこの機会にこの一年を振り返ってみたい。

まず、丁度一年ほど前大学を卒業した後、大学院に進学すると同時に前述した養成所に通い始めた。つまりダブルスクールのような形である。養成所の講義は週に一回日曜日だけだからそれが可能だった。当初は大学院にも真面目に通い、研究も進めていたつもりだったのだが、夏季休業に入るかというタイミングで自分の中のモチベーションのベクトルの全てが養成所での活動に向けられることとなった。それは大学院に意味を見出せなくなったということでもあり、養成所である程度の手応えをつかんだということでもある。人間には上限量が定まっている熱量という名の原動力があって、それを様々に分配しながら日々生きていると考えている。私の中で、研究に対する熱量が全くもって失われてしまったと言うことである。しかし、これは大学院に進学する以前から始まっていたことであり、おそらく最初のきっかけは大学院合格の通知を受け取った時だった。過去のnoteを読んで頂ければ分かるのだが、私は推薦という形で同大学大学院の入試を受けたため、面接だけをこなし、その合格率は毎年ほぼ100%である。例に漏れずあっさりと合格した。無駄に長い所属先の学科の名前ももうろ覚えな自分ですら合格したのだ。推薦入試を受けられるのは大学在学中の成績が一定以上の学生だけであり、私もその資格を目指して四年間もの大学生活を送ってきたはずだったのだが、いざ合格してみると達成感は微塵も感じることはなく、ただ虚無感とのみ取り残された。「あ、このままだと俺一生不幸になる」と思った。ここじゃないどこかに行かないと多分自殺すると本気で思ったから、救いを求めて養成所へ通うことを決めたのだった。

養成所に通い始めた初日から、私は人生を賭けた覚悟を持っていた。それはこの先の人生を、という意味でもあり、そして同時に、これまでの人生を、という意味でもあった。今までの経験の全てを肯定するためにも、成功しなくてはいけないと思った。ここで言う成功とは、お金を稼ぐなどと言う他人から見た成功と言う類のものではなく、自分の人生を邁進できたと胸を張って死ねるくらい後悔がないようにしよう、分かり易く言えば自殺しない人生を送ろう、という至極個人的なものであって、一般的に見れば何ともハードルの低いようなものであったかもしれないが、それだけで十分だと思った。
養成所での生活は全てが新鮮で、刺激的で、未知なもので、1秒たりとも無駄にしたくはなかった。それは、ローンを組み学費を自分一人で負担していたと言う金銭的な背景があったことは否定できないが、そんな理由をも肯定することができた。今まで散々親に学費を払わせ、それに疑問すら持たず、ただただ当たり前のように進学を繰り返してきた自分が、初めて自分から本当に学びたいと思って通い始めた学校だからだった。

大学院の夏季休業が始まり、ただ実際は大学院生は研究を進めていかなければならないのだが、もう研究室に行きたいとは思えなかった。だから、ひとまず後期は休学をすることにして、養成所での活動に専念することにした。自分の中では退学に近い休学期間であり、この間になんとしてでも作家としての成果を上げるべく色々働きかけた。その内容についてはいつかまた書く時が来るかもしれないが、テレビ番組のリサーチの現場で働いたり、動画撮影・編集の案件をこなしたり、ライブのオペレーターをしたりなど、とにかく自分の可能性を広げられると考えられる全てに挑んだ。

そして、今に至る。これからの進路は自分の中で固まってきている。まず、作家として。これまでの活動が評価され、某大手芸能事務所から所属のオファーを頂いている。ただ、現段階ではあくまで口約束であり、3月中旬に正式な所属に向けた面接などがあるため、今はその準備をしながら、引き続き様々な活動をしている。オファーをいただいているのはYouTubeやSNSなどを主に活動の場とするデジタル部門と、ライブの構成や運営をするライブ部門の二つであり、どちらにするか検討している。ただ、これらはいずれかに所属したら他方の活動ができなくなる、と言うものではなく、やりたいことをある程度自由にさせていただけるという待遇になっているため、まずはどちらかの部門に所属することになるだろう。面接の出来によって両方落とされる、と言うことはない、と言うより、そんなことはさせないと言う確固たる自信を今では持っている。
そして大学院について。もう決心した。退学する。以上。

そんなこんなで、もうすぐお世話になった養成所から卒業すると言うわけである。そのタイミングでまた今回のような現状報告をしたいと思う。なぜわざわざ報告しなければいけないのだ、とも思うが、最初に述べたように、これは主に未来の私個人に向けたものであるから、まあいいだろう。

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