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自由律 #08


音が鳴り皆が向く

PCの排熱が暖房

トイレで自撮りしてる

小分けにしたLINEが来た

フライドポテトが美味しそうと感動する声

階段で声が響いている


家にいる。お腹が空いたので夕食を食べようと思うが、調理するのが面倒だ。
だからコンビニに行こうと思う。コンビニに行って帰って来る時間で食糧庫からパスタを取り出し茹でるところまでできそうなものだが、その面倒よりはコンビニ行くことの面倒の方を取りたい。
というのも、今日は久しぶりの休日だったので映画を観てたり本を読んでたりYouTubeを見ていたりしてずっと家に引きこもっていたから、外に出るための口実が欲しくなった。

そろそろ家を出ようかと思ったところで外で足音がする。階段を上がる音。どうやら同じ階の隣人が帰ってきたらしい。
すると声が聞こえる。どうやら誰かと談笑をし始めた。その声で私の隣に住む人だと分かる。名前はタナカだとかろうじて思い出す。引っ越した当初は簡単なコミュニケーションを交わしたが、何せ私はほとんど家にいないし、家を出るのは早朝で帰ってくるのは深夜という調子であるから全く会うことがないまま何ヶ月も経過した。
私の知らない間に、タナカは私の隣の隣の隣あたりに住む私の知らない誰かと仲良くなったようだ。会話が途切れる様子はない。コンビニに行くタイミングを逃した。今ここで思い切って家を出て階段を降りようとしたところでタナカと知らない隣人に気づかれ、「ご無沙汰です」と「初めまして」の会話をするのが面倒だ。
しかし妥協して家でパスタを茹でる気にはどうにもなれそうにない。だから、その会話が終了し、タナカが自分の部屋のドアを閉める音が階段で響くまでの間の時間潰しをどうにかする必要が生まれた。

と言うわけでこの文章を書き始めた。依然として終わる様子のない会話。もしかすると永遠に終わらないのかもしれない。永遠に終わらない場合、私は永遠に書き続けることになる。大変だ。でも、書き続けている限り、空腹を忘れていられそうな気がする。

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