朝起きたら、３度目の緊急事態宣言について、コメンテーターが、テレビで話をしていた。そこには、微妙な怒りが含まれていたように思う。

　その言葉の内容は、効果の測定もないのに、飲食店や映画館や百貨店などの時短や休業ばかりを要請するのは、おかしいのではないか、根拠を示してほしい。視聴者としても、そうだと思った。司会は、その話に対して、なんだか微妙に慌てて、妙な言い訳をしているような気配になっていた。

春の空

　午前９時前には家を出る。
　同じように軽快な格好でサングラスをした男女のカップルがジョギングをしていて、すれ違う。もう1人、走っている人がいる。さらに、また駅に近づくと、ジョガーがいる。土曜日のせいなのか、やたらと走っている姿が目につく。

　駅前の１０００円カットの店の前には、男性が2人待っている。

　天気はいい。
　あったかいと思ったが、歩いていると、少し肌寒い。

　上を向くと、ほうき雲とか、すじ雲と言われるような、空模様になっている。
　反射的に春っぽいと思ってしまったけれど、それは、清少納言の表現している「春」に、ぼんやりとした影響を受けているだけかもしれない。

　電車のホームには20人くらいいて、電車が来て、乗り込むと、駅を進むほど、人が多くなってきて、終点一つ手前の駅では、立っていて、隣とくっつくギリギリくらいの人口密度になった。

　少し遠いところで、７分袖くらいの若い女性が、たぶん、日焼け止めをチューブから絞り出して、腕につけて、そこから、手のひらまで、全体に丁寧に伸ばしている。

　窓は開いている。

　もうすぐ終点だったが、強く減速したと思ったら、また少しスピードが上がったりと、やけに不安定な運転に感じる。

車両の乗り換え

　駅に着いた。

　終点だから、全員が降りる。人の流れが早く、立ち止まることはできないくらいで、改札を抜けて、次の改札を入ったところのアルコール除菌のボトルに行くには、いったん流れから離れてないと届かない。今日も使っているのは、私だけだった。

　電車が来る。
　乗り込んだ車両の窓が開いてないように見えて、ちょっと怖くもなって、まだ発車していないので、内部のドアではなく、何もさわらなくて済むように、いったんドアを出て、ホームづたいに隣の車両に移った。

　その車両は、人も少なく、窓も開いていた。

新聞を読む人

　ドアのそばに立っていたら、少し遠いところに立っている男性が、日経新聞を広げて、読んでいるのが見えた。電車内で、新聞を読んでいる人を見たのは、本当に久しぶりだった。その１面に「緊急事態宣言　３度目発令」という文字が大きくのっているので、ここからでも見える。

　車内の広告は、美容整形、エステ、占いなどベストセラー系の本が多い気がする。奥で目立っていたのは、エステ＋トレニーングで５７歳でも衝撃的変化、という写真だった。

　静かな車内のまま、進んでいく。
　たくさんの人が降りていく駅で、スーツケースを転がして、男性が降りていく。

横断歩道

　電車を降りる。
　駅の構内につながる陸橋みたいな場所に、待ち合わせらしき人が壁に寄りかかり、一定の距離を保って、並んでいる。

　駅の階段を降りて、歩く。

　横断歩道の前で、バスが待ってくれている。
　向こう側から、小さい女の子を2人つれている女性が渡りながら、1人をおんぶして、「ホントに重い」と笑いながら繰り返している。渡り切って、振り返ったら、3人で一緒に歩いている。穏やかに笑っていた。

夕方のニュース

　午後４時過ぎ。
　また同じ駅に戻ってきて、朝とは逆の方向に走る電車に乗る。

　夕方の電車内は、マスク以外は、コロナ禍の前の土曜日と、変わらないように見える。

　電車のドアの上の小さい画面でニュースが流れている。
　
　ホンダ　４０年はガソリン車　ゼロ
　高知　ワクチン予約で混乱
　
　写真では、完全に「密」になっているのが分かる。
　ワクチン接種については、予定から大幅に遅れて、いつになるか分からない。
　これだけ不信感がふくらむとは思わなかった。

　さらに、CMなどをはさんで、ニュースが続く。

　路上飲酒　やめるよう、呼びかけ
　３回目の緊急事態宣言。
　約１０ヶ月ぶりに死亡ゼロ　　イスラエル。
　星出さん　３度目の宇宙へ。
　親子パンダ　一緒に。

　窓が少し開いている。
　静かな車内。
　人は、それなりに多い。

不信の声

　電車を乗り換える。

　駅ビルが休みになるらしい。
　そのことで感染予防になるとは、とても思えない。その根拠をやっぱり示してほしい。
　それよりも、ワクチン接種を早くして欲しいし、コロナ病床を増やしてほしい。
　最初の緊急事態宣言から、もう１年も経つのに、どうして、まだこんななんだろう。

　駅で降りる。
　踏切の前で、メガホンを持って、政党の人が、演説をしている。
　その内容は、現政権への不信の声だったが、結構納得のいく内容だった。
　もう1人が、チラシを配っている。

　ほぼ最小人数での政治活動だった。

　だけど、自分が歩いている場所からは、少し遠いので、チラシも取りにいかず、歩きながら、遠ざかりつ、その言葉を聞いているだけだった。

　誰も足を止めていないようだ。

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