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通りすがりの小学生に、心配されて、ありがたかった話。

 月に1度、歩いて30分かかる場所に行く。
 少し前は、街を通って歩いていくだけで、もう少し恐さがあったが、今は、以前と変わっていないように感じている。

 昨日までの連休で、しかも、政策での旅行のキャンペーンのためか、あちこちの観光地に人がたくさんきた、という映像を見て、2週間あとの感染増加の可能性を思うと、憂うつになる。

 街はいつもと同じように見えるが、台風が近づいているので、雨が少し降ってきていて、空も暗くなっている。歩いている途中で、午後2時過ぎで、小学校の下校時刻らしく、おそらく小学校低学年と思われる子供たちが学校が一斉に歩いていて、あちこちに小さな固まりになって、中には走っている男子と何人ともすれ違う。少し前と違うのは、みんなマスクをしていることだった。

 小学生くらいは、やたらと走るけど、どうしてだろう、などと思っていたら、すれ違っている子供たちの口から、「あの先生は一番恐い」という言葉を何人もが発していて、ただ楽しくて走っているのではなくて、逃げているような理由もあるのかもしれない、と思った。

 小学生が向かってきて、その逆の方向に歩いているから、大勢とすれ違い、そして、その列の中に、大人が一人いた。今の時間の下校は、小学校低学年ばかりのようだから、大人はとても大きく見えて、目立った。

 だんだん近づく。
 その女性は、教師のようだった。それもベテランで、子供たちを見る目は、どこか鋭く、何人かの男子が、「こわい」と言っていたのも肯けるような気配で、子供たちに混じり、歩きながら、「お勉強し直さないと、いけないわね」と、誰に向かって、具体的には何に対して言っているのかわからないけれど、確実に周囲には届く声で、ちょっと笑いながら言っていて、すれ違う私にまで聞こえて、やっぱりこわかった。



 そこから、さらに道を歩いて、小学生たちが出てくる小学校に近づいて、その塀ぞいに右に曲がって、さらに歩いて、今度は左に曲り、ゆるい坂道を降って、あと5分くらいで目的地に着く。

 そこは、ガードレールに守られた歩道はあるのだけど、その歩道は狭くて、人がすれ違うのがやっと、くらいしかの広さしかない。
 その先には、校門があるから、まだ小学生が出てきて、この歩道にも歩いてくるはずだった。

 急いで、そこを通ろうとしていたら、小学生たちが来た。
 一人が走ってきて、私は歩道の左端の縁石に足をかけて、目一杯よって、それでスムーズにすれ違えた。
 
 今度は、5人も6人も集団が歩いてくる。
 全員が女子で、やはり、小学校3年生くらいに見えた。みんなマスクをしている。
 もっと、スペースを開けないと、と思って、また左端に寄ろうとして、歩道の隅の縁石に足をかけたら、さっきよりも前に移動していて、位置が変わった場所は、雨が降って、濡れていたせいか、滑って、よろめいて、ちょっと体が傾き、左ひじがフェンスについた。


その瞬間、ちょうどすれ違っていた小学生の集団の一人から、

「大丈夫ですか」
 
と、声をかけられた。

 それは、何か他の意図があるような感じはまったくなく、ただまっすぐに心配してくれる声に聞こえた。しかもタイミングも完璧だった。

 「ありがとうございます。大丈夫です」。

 恥ずかしかったせいもあって、とっさにそれだけを返して、目も合わせられずに、通り過ぎた。

 遠ざかる集団の中から、「知らない人」という単語が何回も聞こえてきて、振り向くこともできずに、そのまま遠くなっていった。

 相手にしてみたら、まったく見知らぬオジサンであって、人との接触を、より気をつけなくてはいけないと言われるような時代に、よく、すぐに声をかけてくれたと思うと、それだけで、すごいことだと感じた。かなり、よろよろに思えたということだから、おじいさんに見えたのかもしれないが、それでも、少し時間がたって、その行為が、より有り難く、うれしい気持ちになった。

 笑顔は無理としても、少なくとも目を合わせて、きちんと御礼を言うべきだったとも思うけれど、それもかえって迷惑になったのかもしれないと思った。

 そんな風にゴチャゴチャと考えたけれど、何しろ、そういう場合に、すぐに声をかけることが出来る小学生がいたことは事実だったし、その時は小学生の方が、私より「大人」だったし、久しぶりに素直に未来が明るいと思えた。そういう人間の将来が、より幸せになるような社会になればいいと思った。でも、そのためには他人事でなく、微力だけど、自分もベストを尽くさないと、とも考えた。



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