トンネル解消、道なかば??

乗用車のリアシートから再び忌々しいトンネルが姿を消そうとしている
マイカー元年と呼ばれた1966年に新登場したスバル1000が前輪駆動車のメリットとしてフラットなリア・フロアを謳い文句にして1500ミリに満たない車幅の後席の3人が、全員凹凸のないフロアをシェア出来るとPRしていた。

そもそもリアエンジンだったスバル360も、リアエンジンに主旨替えしたスズキのフロンテもやはり本来ならフロアトンネルとは無縁の存在だった。

そのスバルも四駆を仲間入りさせることでフロアにトンネルを設けざるを得なくなりフラットなフロアは昔話になってしまった。スバル1000に追随した多くのFFも触媒マフラーや排気系などを置く為にフロアのトンネルの膨らみは依然として残っていた。
スバル1000の翌年登場した510ブルーバードがリアサスに四輪独立のセミトレーリング形式を用いたのもデフレンシャルギアの位置を固定してプロペラシャフトの揺動をなくしてトンネル径を小型化するためだったと聞く。

一方でフロアを高い位置に置けるワンボックスワゴンだけはずっと例外、ミニバン優勢の現状ではそもそもトンネル論議は起きないか?
広い室内とフラットなフロアはワン・ボックスからミニバンに至るピープルムーバーの十八番でもある。

電気自動車の出現は再び完全なフラットフロアの再来を可能にしている。床下には電池を敷き詰めてはいるものの、トンネルの様な突出した部分が無く一様に敷ける為フラットフロアを再び目にすることが出来るのだ。

他方でトンネルの使い道にはプロペラシャフトや排気管だけで無くもっと別な利用法もあった。

日本最初の本格ミッドシップ・スポーツだったトヨタMR 2ではセンターコンソールの高く盛り上がったトンネルの中に燃料タンクを置いていた。重心位置にも近いことから重量変化で重心が変化することもなく、数十キロ単位のマスを重心が点に置けることはスポーツカーとして理想的な手法だった。

この発想は燃料電池車のホンダクラリティorミライでも反復されていて水素タンクの一本はコンソール内にある。

背の高いトンネルが逆に前後曲げ剛性を上げる補強材として役立ったのがホンダS2000、マツダロードスターのトンネルも内側にはパワープラントフレームという大きな補強材を包むように形成されている。
このほど刷新されたシビック新型のフロアも四駆がないにも関わらず微妙な盛り上がりを見せているのは何故か?実はタイプRの存在抜きには語れないのがこの膨らみ。剛性を上げるためにタイプR前提で設計されたのがこのフロアだそうだ。タイプRを買わなくともフロアの剛性だけはタイプR並み、というが今度のシビックのフロアなのだそうな。

縦置きエンジン車を考えた場合、大きなフロアトンネルにトランスミッションを押し込めるのでエンジン位置を後退させることもでき後輪の重量配分適正化にも役立つ。つまり、二人しか座らない前席ならトンネルは邪魔者ではないのだ。
いすゞエルフに昔存在したFFトラック(マイバック)では大きく張り出したコンソール(というかダッシュボードの下)が運転席に食い込むような形でエンジンの後ろ半分を包み込んでいた。

さて、EVの時代を迎えて、このスペースをどうするのか?
水素タンクとまではいかなくても、電池の一部でもここに置ければ重心にも近く、運動性能からも歓迎すべきポジションになるのではないだろうか?

これからもデビューラッシュが予想されるEVのニューカマーたち、発表会の折にはぜひこの空洞にも注目して見たいところ・・・・・・

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