終わってスッキリ??4局横並びワイドな競争時代

17年朝の時間帯を彩ってきた日テレの番組、スッキリが終焉を迎えた。と同時に後番組のスタート時間も1時間繰り下がる模様だ。

その昔は8時半にNHKの朝の連続テレビ小説が終わるやいなや、在京4キー局が一斉にワイドショーをスタートさせ、日々熾烈な視聴率合戦が繰り広げられた・・・という時代もここにピリオドを打つ事になるのだろうか・・・・・

1980年代の初頭にそれまで業界底辺に甘んじていたフジテレビが派手な目玉マークを筆頭に大幅な変身を遂げ、その象徴的な番組の一つだったのが朝のワイドショー番組、おはようナイスデイでした。
それまでのワイドショーといえば主婦向けのホンワカした雰囲気の当たり障りのない番組・・・として元NHKアナの木島 則夫や落語家の桂小金治が司会を務めるアフタヌーン・ショーが定番のスタイル。指圧の浪越徳次郎さんのコーナーが人気を博したり、料理の人気シェフが腕を振るうといった家庭的なムード。

それがガラリと趣向を変え、芸能ネタを中心に事件や事故も扱うニュース・ショー的な色合いも帯びてきたのが80年代。
芸能では梨元勝という元週刊誌記者を専属レポーターに据えたり、俳優の山本耕一が(アフタヌーン・ショー)司会の川崎敬三に事件のあらましを詳しくスタジオで説明する様子がヒット曲の歌詞(恋のぼんちシート)にも登場したくらい・・他のワイドショーにも大きな影響を与えるモデルチェンジだったのです。

こうしたスタイルは70年代後半にほ日本テレビが土曜夜の娯楽番組として開発したウィーク・エンダー「テレビ三面記事」にそのルーツを伺うことができるのです。
漫談が得意な泉ピン子や桂ざこばといったギャラの安い若手芸人中心に写真資料を紙芝居のごとく見せながら講談師宜しく捲し立てながら事件を面白おかしく取り上げるといったレポーター・一人語りスタイルを確立していたのでした。

80年代に入り、小型で機動力の高い(しかも現像不要な)ENG機材が普及するとレポーター諸氏が全国各地の現場に飛び、現場でのレポート風景をスタジオで、あるいは現地と結んで報告するというワイドショーのフォーマットがあっという間にNHKを除く各局に普及・・・・
80年代はそうして幕を開けたのでした。

そんなワイドショーをある意味で妙に彩る形になった事件が続発したモノです。
週刊誌報道がきっかけになり、妻を労る美談が一転して保険金殺人容疑へと手のひらを返したミウラ騒動。
菓子メーカー社長を誘拐・監禁した挙句に毒入りの脅迫文を添え、全国の菓子・食品包装にまで多大な影響を残したグリコ森永食品強迫事件
美空ひばり、石原裕次郎といった大物スターの訃報はもちろん、松田聖子・神田正輝の挙式から新婚旅行まで密着した芸能レポート・・・

視聴率を調査するビデオリサーチ、ニールセン両社からは翌日に2分ごとの詳細な視聴率変化を記録した折れ線グラフが発表されます。番組プロデューサーはすぐさま、この解析に取り掛かりどの局のどの内容が視聴者の関心をつかんだか?同録された番組内容と首っぴきで翌日の番組構成プランを練ります。

冒頭から数十分もCMチャンスが巡ってこないこともしばしば。このタイミングで視聴率のカーブが大きく逆転することがあるからです。CM跨ぎという手法もこうした争いの中から生まれたノウハウ。CM直前に期待を煽るシーンを挿入してザッピングされるのを防ぐ狙いです。


日々の目まぐるしい競争の中にも、定番コーナーと呼ばれる人気の時間帯が存在しました。日テレが開発した人気企画「女ののど自慢」この時間だけは他局がどんな企画をぶつけてもかてません。豊原ミツ子レポーターが体当たり取材で様々なタスクに挑戦する「やるっきゃない」も同じく他局を圧倒していました。突撃、隣の晩ごはんも番組の枠を超えて出世した人気者でしたね・・・・

熾烈な競争は時としてワイドショー批判にもつながることが多く、事件取材で関係者に不躾な質問をぶつける姿はしばしば批判の的になったりもします。山下達郎の初期のアルバムにはこうしたレポーターたちを皮肉った歌詞の歌も存在しました。

この終わりなき戦争が行き着いた先は・・・・

オウム真理教をめぐる報道の過熱ぶりもそれまでと何ら変わるところがなく・・
いや、一つだけ違ったのは編集に入る前の未放送の段階で取材対象である教団側の介入を許してしまったこと。これは弁護士一家殺害事件とも関連する重大な不祥事として槍玉に挙げられます。
これを機にTBSは朝、昼のワイドショー番組のスタイルを激変させました。
芸能・事件取材からは事実上の撤退。在宅の主婦をターゲットにした生活情報に特化したはなまるマーケットを始めます。
レポーターのベテラン勢は他局に引き抜かれたり、独自に歩む道を探したり・・・

同じ時間帯がコロナ一色に染まったつい最近も昼時間帯を中心に同じような内容の番組が横並びで視聴率を競うシーンが見られましたが昔も今も、一つだけ変わらない構造が。

それは驚くほどの低予算で番組が成り立っている、ということ。
夜のゴールデン・タイムに比べたら一桁も少ない経費で作られています。
ゴールデンが欧州の高級スポーツカークラスなら朝ワイドは国産3ナンバー公用車。ギャラの高いタレントを毎日起用して数字がとれない番組では採算割れ必至です。

これから、朝の視聴スタイルがどのように変わっていくのでしょうか?
スッキリが終わって、小倉智昭さんの顔も忘れがちになった昨今、ワイドショーの始まる時間に在宅してチャンネルを合わせてくれる人がどれほどいるかの再認識も必要になってくるのでしょうか・・・・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?