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悪いコンサル、邪悪なコンサル

コンサルタント。

相談(consult)を受けたクライアントの課題を発見し、解決策を提案すること並びにその実行を支援することに対し、対価をいただく存在。

大卒時、就活始めるまであまり馴染みなかったが、この職業が人気であることを知り、強烈な違和感を抱いたことを覚えている。

「え?人にアドバイスするだけで、こんなにお金もらえるの?」
「その事業って責任どうなるの?」
「自分で解決させんと相手の為にならなくない?」

バイトしかしたことないひよっこの感想だったが、今改めて思い返してみると、あながち全くの的外れという訳でもなかったようだ。

私は所謂、地方で働いているが、地域おこしの現場では「悪いコンサルタントに騙されるな!」というよくわからない言葉が飛び交っている。

正義の味方曰く「悪が栄えたためしはない」
「悪い」人が蔓延れるのは一種のバグだと思うが、なぜこのような状況がまかり通っているのだろうか。

改めてそんなこと考えていた矢先、「悪いコンサルタント」に関わってしまったという人に出会ってしまった。


地方とコンサルタント

「悪いコンサルタント」に関わってしまったというのは親身にしている地元の農家さん。

6次化に着手する為にコンサルに協力してもらった結果、1年近くかけて、売っても1円の利益にもならない、特別旨くもなく、別に不味くもない謎の産品が生まれたらしい。

在庫だけ抱えている現状はマイナスなので、それをどうやって売り払ってプラマイゼロにするか話し合っていた。のっけから撤退戦である。

地域おこしに関する本で勉強してみると、これはどうやら私の地域だけの話ではないらしい。
全国的にも同じような事例が大量生産されているようだ。

なぜこのようなことが全国的に起こるのか。
コンサルの業務形態そのものにもある原因があると思う。

私も所謂「悪いコンサル」と言われた人とも直に交流があるが、別に彼らは「悪人」という訳ではない。

むしろ正義感があってスマートな連中だ。

彼らからすると事業の成立支援を「依頼」されており、「依頼」分働いているに過ぎない。
いくら筋が悪いとわかっていても、依頼された以上は「何とか」するのが、ある意味彼らの仕事である。まさに今回のような事例だろう。
ただ残念ながら事業の結果そのものに対して責任を負う訳ではないので必要以上の場面では踏ん張れないし、踏ん張らない。
そこから先に踏み込むためには個々の関係性が重要となってくるが、成功させるためには時間もお金も信頼感も足りない。

これにより「クライアントの要望」に沿って「何とか」形にした、よくわからないものが生まれる。これは誰が「悪い」のか。
厳しいとわかっていても取り組んで報酬はもらうコンサルか、それとも、そもそも厳しい内容を持ち込んだ事業者か。

誰かに頼らないといけないが頼ると採算の合わないものはそもそも事業として破綻している。

そのような事業支援を依頼されたら、諭してお引き取り・再考いただくよう促すのも確かに人の道ではあるだろう。
自分の利益の為と捉えられても仕方がない。

コンサルも悪いと言えば悪いし、悪くないと言えば悪くない。

この問題は金貸しの問題に似ていると思う。

返済過多になったのは厳しい自身の状況をあまり顧みず、カネを貸してくれといった債務者が悪いのか、それとも「コイツ飛ぶだろうな…」と思いながらも利益のため、カネを貸し続けた銀行か。

契約上責任は当然、債務者にあるが、銀行が「汚い金貸しめ!」と罵られることがあっても仕方ないと私は思う。
恐らく地域のコンサルがらみの失敗は、このような内容のものも少なくないのではないだろうか。

少なくとも私の関わる周辺自治体ではこのような事例が多いと感じる。


「邪悪」なコンサル

コンサル絡みの地域おこしの失敗は必ずしもコンサルのみが悪いのではないと私は思う。

ただ、なぜここまで「悪いコンサル」という言葉が広まったのか。
それは「悪い」を越えた「邪悪」とも呼べるコンサルの暗躍が大きいのではないだろうか。

「邪悪」なコンサルとは、この構造に託けて金だけむしり取ろうとする良心のカケラもない奴らである。
地域が抱える「筋の悪い」事業に「自ら」飛び込み、特に貢献することなく、お金だけしっかりもらっていく連中だ。

私も以前、「邪悪」なコンサルに出会ったことがある。

私の所属していた団体が新規事業を始める際に、「ノウハウを伝授しますよ~」といって、どこからかのコネで入ってきたのが彼らだ。

「同じ事業をしているので、ノウハウを伝授する」といいながら、彼らはほとんど何も知らなかった。
最初の方こそ、ネットで調べればわかる程度の知識を披露していたが、早々にネタ切れした後は働きかけてもほぼ動きなし。
1年かけて相当額の報酬を、ほぼ何もせずして手に入れ、去っていった。

社員は無能だったが、社長はまさに「邪悪」な人間だった。

業務怠慢と契約違反を理由に私が契約解除の動きをすると業務態度は改善することなしに謎のコネを活用し、あらぬ方向から圧力をかけてきた。
そこには「クライアントのため」という意識はカケラもなかった。私個人としても非常に印象深い体験であったことを覚えている。

彼はとある地域で地元事業に携わる有名人だったらしい。
この手並みで盟主になれる地域も問題だが、仮にも盟主と呼ばれる人間がこの有様である。
これでは「悪いコンサル」というワードが地域で飛び交っても仕方ないだろう。

ただコンサル絡みの地域事業の失敗≒「悪いコンサル」のせいとするのも、違うなと「悪いコンサル」に騙されたという人に改めて会った中で感じた。

ある意味、就活時の私の世間知らずな疑問は的を得ていた。
やはり自身で取り組まないと事業は良い方向に進まないのだろう。

当然、全く人の手を借りるなという訳ではないが、その場合は余白を確保しておかねばならない。
地域の個々人がこのような意識をしっかり確保することで地域から「悪いコンサル」は少しずつ姿を消していくだろう。

もちろんそれでも「邪悪」なコンサルは存在する。
彼らは都合の良い状況を利用をして、自らのために働きかけてくるだろう。
そんな「彼らに騙されるな!」という警告はこれからも一地域人として発信していきたい。



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