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2019,J1第21節 鹿島vs湘南 ●2-3

【前半】鹿島ボール保持時

湘南:3-4-3で前からプレス

 プレスにかかるスイッチを入れるのは1トップに入る山崎。状況を見ながら鹿島の最終ラインでのベクトルが後ろor横に向いた時に、どこに追い込みたいのか意志を示すようにコースを切りながらチェイス。CBにボールが入った際は側のシャドーがアタックし、他の選択肢を山崎で消す。SBに逃げられた場合は即座にWBがアタック。もしロングボールを蹴り込まれても、白崎は別としてレアンドロ土居セルジで空中戦を挑んでくるのであればそれはそれでOK。実際にセルジをターゲットにしたロングボールが多かったが、坂を中心としたDF陣は慌てることなく対応していた。湘南の狙いとしてはざっとこんな感じ。

時々目の粗い囲み方をしてくるも、その穴を狙い大きく攻撃を展開して来ようとする可能性を見せた名古に対してはファール覚悟で潰して早々に攻撃の芽を摘んできた。犬飼などから何本か良い対角も見られたが、素早いスライドで密集(数的優位)を先に作られてしまう。鹿島が自陣でボールを奪った際も湘南のCH2枚にしっかりと中央に張られカウンターを外へ外へとうまくディレイされてしまった。

前半では明らかに存在するコンディションの差を活かし、湘南は『場所・人・時間』で言うところの「時間」を徹底的に支配してきた。鹿島としては強みである「人」を活かす攻撃がしたいところだが、時間を奪われてしまったが故に人が活きるための「場所」を作り出すことが出来なかった。前半チーム全体のベクトルが前を向いた機会はほんの数回であり、鹿島がボールを持っている時でさえ主導権を握っていたのは湘南だったといえる。これを受けFKでのチャンスや引水タイムを利用して、急ピッチでビルドアップについてベンチ前で再確認。しかし、40分の時点で最後列からのビルドアップは断念しロングボールを中心とした戦いにシフトさせた。

 ビルドアップの代案に関しては、個人的に昨年末から旋回からのこれが最も選手の判断を助けやすい形だと思っている。

→https://imgur.com/UBCZpIJ

CHの1枚が真ん中に降りつつフリーマン気味のアンカーとなり(健斗)、余ったもう1枚(レオ/名古)と降りてきたSHやFW (白崎や土居)の2枚が出口として待つ。うまく運べずサイド奥深くに蹴り込む事になっても局地的な数的優位は作りやすいし、ネガティブトランジションの局面でも中を締めやすくなる。

このあたりもピッチ上の選手達の判断で解決できるようになるのがあくまで理想ではあるが、選手が固定できずなかなか意思疎通が図れない今はある程度形を持って選手の判断に手を差し伸べるのも1つの方法なのでは無いだろうか。

【前半】湘南ボール保持時

鹿島:隠しきれないエネルギー不足

 湘南はボール保持側に立っても、とにかく鹿島の「時間」を奪おうという意図が見えた。鹿島のセットオフェンス(※攻撃側守備側ともに陣形が整えられたうえでのオフェンスのこと)の状態からボール奪取をした直後は、縦に早くかつ逆サイドのWBの駆け上がりを徹底して使ってきた。繰り返しになるが、守備でも攻撃と同じように「人」の質の土俵に持ち込みたい鹿島にとって、この勝負をさせてもらえない展開は最も響いてしまう。

と同時にこの展開になったことで、改めてコンディションの差を痛感させられた。守→攻→守→攻のトランジションのテンポが早くなればなるほど鹿島の呼吸は苦しくなる。そこを落ち着かせようとしても湘南は「時間」を支配する戦い方を徹底してくる。まさにこういう局面に陥った時に効くのが、攻撃にタメを作ってくれる選手である。昨年では西・遠藤・優磨がその役割を果たしていたが、昨日のピッチにボールを納め一呼吸置いてピッチ全体のペースをコントロールしてくれるような能力を持った選手は居なかったのが、前半全く鹿島の時間を作れなかった要因だと考えている。 (私はこの役割をひそかに、小池に期待したいと思っている。)

 そしてそれに加え、湘南はセットオフェンスでもしっかりと再現性のある攻撃を準備してきていた。最後列3枚で2FWを外し列超えの前進、そして山崎がサイドへ開くことでCBを1枚引っ張り出しながらサイド攻略。

https://imgur.com/Hz4EICt

何度かこの形を繰り返されたが、最終的に前半を0で凌ぎ切ったのはやはり健斗・犬飼を始めたとしたセンターラインの粘り強さが効いていたからである。7/28に戻ってきて成績を初めて見た時正直ピンと来ていなかった失点数の少なさの部分が、少しだけ垣間見えた。

後半

後半に入り試合は一気に動き始める。湘南が49分・52分と、サイドに山崎が開き縦にエリアを確保してから素早く逆WBを使うことでお互いの配置の噛み合わせがズレるポイントを突く、という前半から繰り返し狙っていた形を早いテンポで繰り出し立て続けに2得点を奪うことに成功した。あの攻撃のスムーズさからは、ハーフタイムを活用して前半上手くいっていた形を徹底するチームとしての共通意識を感じた。

正直湘南のプランとしては、前半のうちにこのような展開になることを理想としていただろう。そのくらいコンディションの差を活かすサッカーを試合開始直後から前面に押し出してきていた。しかし実際に形になったのは52分であり、この誤算がこの後の試合展開に響いてしまった。2-0とした湘南はそれまでの3-4-3前プレをやめ、5-4-1撤退守備を敷いてきた。これにより鹿島からこれまで奪えていた「時間」を明け渡すことに。

対して0-2となった鹿島は、すぐに伊藤翔(←レアンドロ)と山本脩斗(←小池裕太)を投入。ロングボールでの陣地確保に長けた2人をピッチに送り込み、ゾーン3への侵入を狙った選手交代を行なった。そして投入直後から、GKスンテからロングボールを左サイドに送り、相手右WBの鈴木冬一(165cm)と山本脩斗の完全なミスマッチを作ることで56分,60分と立て続けに陣地確保に成功する。まさにその60分、山本の空中戦勝利によって得たスローイングから左サイドを侵略し最後はセルジーニョが決め一点差とする。これまで作り出せなかった「場所」を獲得することで生まれたゴールだった。

さらに1点差となったことで湘南の守りの意識はより強まり、鹿島のCB,SBどころかCHが余裕を持ってボールを持つ状況が多発するようになる。こうなると鹿島が絶対的に優位をとれる「人」の土俵で勝負が始まる。選手同士が絶妙な距離感を保ちつつパスを回し、一気に湘南ゴールに迫る時間が続くようになった。

湘南は1失点後もなお押されたままの右サイドを修正すべくミスマッチを作られていた鈴木に変え岡本を投入するなど、対抗策を練ったが、結局そのサイドでのロングボールによる陣地確保からの崩しで(PKを獲得し)鹿島が2点目を決める。

鹿島がここで2得点し試合を同点に戻せた要因としては、先程述べた湘南の誤算が響いているだろう。負荷のかかる3-4-3前プレを52分までやり続けてしまったことによるエネルギー消耗、そして残り時間が35分だったことにより強まり過ぎた「守りの意識」。これら2つの要素により、これまで消せていた人を活かすための「場所」を鹿島に与えてしまうことになった(これが「人」の勝負に繋がった)。俗にいう2-0は危険なスコアの典型的な現象が起きていたといえる。


この時点で時計は73分を刺しており、ペースは完全に鹿島。逆転ゴールを奪うに時間は十分、のはずだった。が、ここで再び立ちはだかったのが、コンディションの差。幾度となくゴールに迫るも時間を重ねるごとに出てくる1つ1つ細かい部分での技術的なミス、判断のミス、そしてそれら含めた集中力の欠如が隠しきれない。一方湘南も身体的なものに加え、2点あったリードの消失による精神的な消耗が重なりなかなかうまく試合を運べない。

そんな両チームが最後に勝敗を分けたのは「もうひと頑張りが効いたか」だと考える。ここまでグダグダと長ったらしく書いたが、この試合を現地で見て、そして改めて見直して辿り着いた結論がこれだ。

もうひと頑張りが湘南にはできて、鹿島にはできなかった。

確かに鹿島が中2日で、湘南が中13日だったことは要素として非常に大きく影響したのは間違いない。敵将である曹貴裁監督も触れたぐらいだ。だが個人的な見解だと、それはあくまで「要素」に過ぎない。原因のなかの1つ でしかなかった。

勝ち筋はあったか?

個人的なものであげるとするならば

・山本脩斗の、早い段階での起用

は現実的に考えられる数少ない勝ち筋だったのではないかと考える。2失点とも「右を突かれ左で決められた」わけであり、これは前節浦和戦の失点と同じで最後は左SBの目の前でゴールが決められている。そして小池の疲労は前半から感じられるものだったし、もちろん試合前にも予測できる現象だった。そして攻撃面でも山本脩斗投入のメリットがわかりやすく大きかったのは、0-2になってから実際に行ってることからも言えるだろう。

しかしツイートにもしたが、試合前の段階では小池とともに名古も疲労によりクオリティ落とすのではないか?と私は予想していた。が、名古のあのパフォーマンスを見ると、試合が終わってから小池だけの起用を責めるわけにもいかない。さらに山本脩斗は復帰ということもあり出場時間の制約があった可能性もあることから、スタメンでの起用ができたのでは?とは個人的に考えづらい。よってより厳密に示すなら、

・ハーフタイム or 1失点後(2失点目を喫するまでの3分間) での山本脩斗投入

と表現するべきだろう。うん、狭い。

まとめ

ここまで読んでくれた方はいるんですかね?長々とわかりづらいものになり反省してます。勝ち筋を示そうとしてもこんなもん。なんかすみません

選手のみなさんお疲れ様でした。今週末のマリノス戦も応援しに行きます。次こそ勝ち点3を!

(3失点目の永木はGELマガさんで指摘されてたのと同じく、自分も坂-永木のマッチアップの時点で間違ってたんじゃないだろうかと失点振り返りで考えました。そのうえでサイズ順に整理したところ不自然ではなかったので、あれが正解だとも思いませんが個人的に納得はできました。ので触れませんでした。)