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ガンバ大阪vsジュビロ磐田

昨年3月に書いてから、ちょうど1年振りのガンバ戦観戦。



守備時は互いにトップ下の選手を前に出し、4-4-2のミドルブロックを保つ陣形。

そしてボール保持については、両チームに共通して、自分達の形でじっくりボールを動かしそこから試合のリズムを掴んでいきたいという意志が強く感じ取れた。

そのスタンスはスタッツにも表れており、1試合平均のスプリント回数はJ1全20チーム中、ガンバが18位。ジュビロが20位となっている。
その他17位にセレッソ、19位に新潟と続くように、この指標からはいかにボール保持から試合のペースを掴もうとしてるかがわかる。

じっくりとボールを動かしながら、相手ブロックにズレを生み出し、その空いた所から列を越えて着実に前進していく。そうしてボールと共にチーム全体が動く。
なので選手単体のスプリントが減る、という仕組み。

そういったスタンス同士の試合なので、両チームともに一旦掴んだボールは安易に前線に蹴り出したりせず大切に握るため、試合は当然スローなペースで進んでいく。

しかし、スタンスや手段は同じと言っても、その色,手法は全く異なり、
いわば

・相手ブロックの網目の狭い間を狙ってくぐり抜けようとするジュビロ

・相手ブロックの網目の大きさを広げてくぐり抜けようとするガンバ

と対照的だった。
そこがこの試合の面白い部分だったかなと。



チームごとに触れていく。


ジュビロ ボール保持

まずはジュビロ。

基本の形は4-2-3-1。

CBが前を向いてから、CHは列を降りることなく3列目に残りサポートするが、これが派手さはないものの相手の前プレ隊を困らせるポジショニングで良い。
受けてそのまま出せる角度、そしてボールホルダーに近付ぎ過ぎず離れ過ぎない距離感。

これはかなりやってるなという感じ。

そうしてCHが時間と場所を作りながら、今度はSHがハーフスペースへ降りてタイミング良く浮き、菱形形成。

これも角度。
ずっと角度が良いので、ボールの場所や人に依らず常にボールの行き先を2つ3つ作れているような感じ。

そうして降りたSHを含めた4人で、相手の側FW・側SH・側CHの3人との数的優位な状況を作って前進を図り、相手がそれを解消するために逆FWやSBを出張させて来れば、その選手が元々居た場所を突く。


この一連の流れもスムーズで、かなり練度を感じる。

そして、降りる事でボール循環を助ける両SHや、裏を突いたり最前線で相手を背負って深さ作りを担うFWジャーメインに対し、
明確なロールがない山田大記が全体の空気を読みながら要所に顔を出し効果的なプラスワンとしてズレを生み出す。
というのが理想の形。

実現のための仕込みもめちゃくちゃ感じるし、さすが補強禁止のシーズンで昇格しただけあるなという感じ。


ガンバ ボール保持

続いてガンバ。


間受けのための細かいポジショニングを繰り返すジュビロに対し、ガンバのボール保持設計は立ち位置ベース。

各選手がポジションごとに役割を担い、そのポジションから動かない事で利益を得る。

組み立ての基本的な軸はネタラヴィであり、守備時の2CH式からラヴィだけが降りて最後方で3vs2の構図を作りビルドアップを開始。


ダワンは前へ残り、トップ下の山田康太は降りて結局は4-1-2-3のような形。


そこから選手が「相手が突かれたら痛い場所」へ広がって立つ事で、相手ブロックはそれをカバーするため縦横に間延びせざるを得ない

それによって空いた場所から前進していく。

相手がそれを嫌がって形を変えれば、元々立ってた「相手が突かれたら痛い場所」へスムーズにボールを届け、一気にスピードアップして相手ゴールへ迫る。

この大筋は昨年と同じだが、今年になって異なる点がいくつか。

まずはWGについて。
前述の通りこのサッカーは、ポジション毎に与えられた役割をそこに配置された選手がしっかりと果たすことが重要となるが、その点WGとしての働きには改善の余地アリという印象だった。
WGというポジションが果たすべき役割の重要度よりも、その時WGに入った選手の判断への自由度が優先されてしまい、幅や深さが創られない。それらが足りないので、相手ブロックを広げられず思うようにボールを動かせない、という流れ。

しかしこの日のウェルトン・岸本の両WGはしっかり役割を果たす動きをしており、ボール関与は少ないながらしっかり後ろを助け機能していた。

これまではポヤトス監督のなかで「どこまで選手を縛るべきか」という葛藤のなか、WGの自由度は高くしておいた方が上手く回るという判断をしていたのかもしれないが、シーズンオフを跨いだことで求めるピースが集まりつつあるぽい。

特にウェルトンは役割を守りつつ、そのうえで「縛られている」という印象もなくプレーしていた。自分のやりたいプレーと、チームから求められているプレーがしっかり合ってるように思える。

特に、大外に張って立つだけじゃなく、対面DFと1vs1上等なスタンスなのが良い。
WGがナメられてしまうと、相手SBに捨てられてしまい、ただ遠くで孤立するだけで効果を得られない。

この試合のようにはブチ抜けなくても良いので、今後もこのスタンスを貫き、相手SBに放置されないことが大事。
あんまり放っておくとヤバいと思わせるだけで十分効くので。



さらにCFがジェバリではなく宇佐美である点。

ジェバリはどうやら負傷離脱らしいが、この日の宇佐美のCFは十分機能していた。
その要因は、先ほどのWGの変化が大きく作用している。

というのも、昨季はWGがボールに寄って行き、その分CFのジェバリが単体で身体を張って深さを作らなければならない状況が多かった印象があるものの、
今季はWGに変化があったため、宇佐美がジェバリのようにタフな仕事を担う必要がなくなり、その分自らが得意とするような降りてボールに触るプレーを取り組む余裕が生まれて良さが存分に出せるようになったように思える。
また、山田康太がトップ下としてかなり気の利いたポジショニングができるため、宇佐美のFW以外の仕事量は軽減される。

なので厳密に言えば、宇佐美のプレーが劇的に変化したというより、両WGやトップ下といったような周りの選手が本来の役割に則ったプレーをするようになったのがプラスに働いていたという印象だ。


そして、当たり前のように撤退守備時の2CH式とボール保持時の1アンカー式を併用できているのも、ダワンの機動力あってのもの。決勝ゴールも流れの中からダワンがヘディングで合わせたものだし。




完全に疲れた。もう飽きたのでメモそのまま貼り付ける。

前半の印象は、
ボールを持ってる側が、立ち位置やボールの動かし方でやりたい事をしっかり表現しつつ、守備側も無謀な前プレ特攻などを仕掛けたりせず大きな穴を作らずにキッチリ守ったという感じ。

だからこそ、エラーで動いたスコアが重かった前半。


この試合では、じっくりボールを握りたがる、いわば互いに対話を重んじるタイプだったからお互い良い所が素直に出たけども、
野性的なパワーだったり、理屈じゃないパッションの前にあっけなく沈んでしまうむことはあるだろうなぁ

特に磐田。
技術的なエラーとか、ワンウェポンでそのままばこーん行かれちゃうみたいな。

だからガンバがあの新潟とこの磐田に勝って、町田にには勝てなくて。
磐田があの柏とあの神戸に負けて、川崎には勝ってるってのがめっちゃ納得。
対話かパワーか。

鳥栖とかヴェルディも凄く良い積み上げしてるけど、やっぱりこれと似た特色を感じる。

そんななか、気になるのはセレッソ。去年からこっち方面の良い積み上げがありつつ、ちゃんと野生的なパワーにも押し負けない感じが出てきた。ガンバの話のなかでこんなんいうのもアレだけど。
ガンバもジェバリが戻って来て色々噛み合えば。全然そういう勝負もできると思う。俺はマジでどっちも好き。



後半になって、1点ビハインドの磐田は勝ち点3を目指し、ボール循環に効いていた2列目の平川・山田を下げて、古川とペイショットを投入。
これによりバランスが崩れる。

前半は両チームともにボールと同時に集団が動いていたものの、
ジュビロが縦に速く攻める雰囲気が出てから、試合展開がややオープン気味に傾いていく。

集団のなかではなく、広大なスペースのなかでボールの取った取られたが繰り返されるようになったが、そういった網目が広くなった状態をより好むのはガンバの方。顕在化する個の馬力の差。


後半開始早々からウェルトンが対面をDFを圧倒しガンバが立て続けにチャンス創出。そこから追加点。



本筋からズレるけど、このサッカーで片側のWGが一気に前進させたシチュエーションでは、逆WGには絶対に自分が決めるという立ち回りをしてもらいたい。

48:30かな。その前後にもほぼ同じ現象あったけど、左でウェルトンの馬力と黒川のオーバーテイクで左サイド深くをエグって、中へパス送るも誰もおらず…みたいなシーン。あそこは右WGが待ち構えて押し込むべきだと思う。

去年までちょくちょく岡山を観察してたので、坂本の右WGとかも面白そうだなと思う。
サボらないし、WGロールの遂行も問題なさそう。いや岸本も全然良いけど。

ウェルトン軸の左サイドからの侵入による立て続けのチャンスのなか、クロスからダワンのヘディング弾で2-0になってからは、残り30分を残してジュビロのリスク承知の攻撃と、それに対するガンバの3点目狙いのカウンターという構図で、がっつりオープンな殴り合いに。

前半のあの理性はどうしてしまったんだと言いたいところだが、まぁこれが面白い所か。

こっからはエンタメ。
シュートとセーブに一喜一憂する、ただおもしろいっていうだけの時間。この時点で「どっちが勝ったって良いと思ってる部外者」として語ることはもうないので終わり。


2チームとも好きなサッカーでした。今季終わって、みんなの予想よりも良い成績で終わっても全然違和感ない。
おわり。