【LC第2節】vsC大阪戦 2022鹿島アントラーズ 4歩目

0-1。負け。

川崎に差を見せつけられた時とはまた別の種類の、自分達の足りなさが出た敗戦。こういう時が一番色々考えさせられるね。



前半


スタメンは以下の通り。

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試合の入りで流れを掴んだのはセレッソ。


以下の図のように鹿島のボール保持時に後方の配置が噛み合うことを利用し、明確になってる「対象」めがけて、ベクトルが前に向いた迷いのないプレスで圧をかけてきた。

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キックオフ直後はこの日今季初スタメンのGK沖が、ベクトルが前に向くセレッソのプレスの背後を、自らの長所である空中回避で二列目に送る事で陣地獲得したものの、やはりロングボール一択では安定した主導権獲得には至らない。

川崎戦でも書いたが、やはりボールを保持して試合のペースを握りに行く戦略をとるのであれば、繋ぎとロングボールは2つ揃って1セットだ。

いくらロングボールに強みが出せる組み合わせを用意したとしても、繋ぎによって相手を自陣に引き込めなければそれは効果的なものにはならない。

鹿島としてはセレッソのプレスを地上戦でかわす、もしくはかわさせないために自陣に引き込む必要があったものの、これが上手く行かなかった。



原因としては、純粋に構造をズラせなかった。

噛み合った初期配置から、動き出して相手を迷わせるような構図にできなかった。これに尽きる。


ここに関しては、またプレシーズンマッチの水戸戦でしつこく書いた「下書き」の話になるだろう。

セレッソが4-4-2で噛み合わせて前からエネルギッシュにプレスをかけて主導権を取りに来るというのは事前にわかっていたことだ。その条件下で、コーチングスタッフとして下書きをどこまでの領域までを書いてから選手に渡し、どこからを選手のセンスやアレンジに託すか。

どこまでの領域を余白として残しておくか。


そして岩政監督代行はかねてから、この余白の重要性を説いている。
下書きをガチガチに固めることで迷いを排除し、それを選手にひたすら遂行してもらう事に着手してもらうという手法は、チームとして一定のクオリティを出力することへの最短距離であり最大効率かもしれない。
しかし1年間34試合という長いリーグ戦を戦ったうえで1番上に立つ優勝するチームになるためには、様々な相手や状況に対応できる柔軟性を育む必要がある。そのためには適切な「余白」が必要だ。

しかし余白は上手く機能すれば柔軟性や対応力となるものの、
現状の選手が持つ実際の判断力やクオリティを見誤った場合は、「ピッチ上の迷い」として化けて現れる。

これを踏まえたうえでバランスの調整をする必要がある。


…という話をプレシーズンマッチ水戸戦の時にしたが、この試合もまぁ最終的な結論はここだと思う。


今コーチングスタッフ側が認識している選手達の判断力やクオリティと、実際の(負傷者や日程を考慮したメンバー変更を踏まえての)ピッチ上の選手達の精度には乖離があって、意識的に用意してる余白が迷いとして難しさを生んでいるのが現状だ。




4-4-2で後方で噛み合います。

そこから例えば川崎戦の後半で見せたように、中村が中央の核として配球役となり受け手・散らし手としてボールを循環させ、土居がプラスワンとして降りてきてズラしたりとか、

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それにより再現性を持って前進されることをセレッソのプレス隊が嫌がり重心をより上げて繋ぎを潰しに来れば、それによって空いた背後をロングボールで生かそうとか。

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そういった全体で連動した可変ができなくとも、土居が荒木のように単独で3列目まで顔を出して1つズラせばあとはそこから順番に1枚ずつ相手を外そうとか、
作れる広瀬が前を向いてボールを持つための流れを作ることを一旦優先させようとか。

そういった現状を好転させるための変化を生み出す判断力が、少なくともこの日の前半のピッチ上には無かった。


個人的には、このルヴァン仕様のメンバー構成であればそれはキャプテン土居に動きで示して欲しいという考えではあるが、そもそも特定の誰かがダメなら全体も死ぬという構造自体は健全ではないのは確かだ。


土居からそういう動き出しが無くとも、ピッチのどこかで、つまりチーム全体で変化を生み出せる意識と技術が整っていないのが現状ならば、今用意されてる余白の領域は「広すぎる」と言って差し支えないだろう。


前を向いて挑んだ結果の失敗であれば、それは次への経験となる。
今回上手く行かなった失敗という経験を踏まえて、その原因を精査し学んだうえで選手達は次のトレーニングに臨める。
それは間違いない。

ただそれと同時に、勝って、成功する経験からしか得られないものもたくさん多くある。


それを踏まえたうえで、個人的にはもう少し下書きの領域を増やして(余白を減らして)、ヒントを与えながら選手達に考えさせるバランスが理想的だと考える。



んだけど、だけど、違和感がめちゃくちゃあって。

あの試合の入りからの土居トップ下の効いてなさを踏まえて、なぜ岩政監督代行は60分までそれを引っ張ったのか。
後ろが明らかに詰まってるのに降りて繋ぎに参加することなく前に残り、その前でも内に絞りたがるアラーノと被り続ける土居のトップ下をなぜそのままにしたのか。

それこそが選手達が考えて解決する余白そのものなんだけど、いくらなんでもあの状況を60分までそのままにしとく?
ガンバ戦、川崎戦と2試合連続でハーフタイムに配置変換して状況を変えたのにも関わらず?

いや、先の2試合と比べて過密日程により使える選手とそれに伴う戦術的な引き出しが大きく制限されていたというのはもちろん大前提だ。
なんだけど、にしても気になった。あれを60分続けたのはそれほどに。


そこで、もうこっからは完全に邪推であり妄想になるが、岩政監督代行は我々が想像してるよりも遥かに「ヴァイラー監督へのバトンタッチ」という役割に対して重きを置いてる可能性があるなと。

今、余白を「柔軟性,対応力に繋がる余白」と「迷いに繋がる余白」という2点で捉えているが、実状は「ヴァイラー監督が来日後に理想を描き始めるために空けておいてる余白」という意味合いが想像より作用している可能性もあるという話。


そりゃあ我々としては、監督代行はシンプルに目の前の一戦一戦勝つための最善を考えてないだろうし、そうであって欲しいし。
なんだけど、我々が考えてるよりも遥かに「監督代行」という役割は複雑で、色々な要素を考慮しながら立ち回らなければいけない役割なのかもしれない。

ずっと引っかかってる。
PSM水戸戦敗戦後の
「監督が来日するまで5戦負けなしで引き継ごうという意思で準備していたが、心境が変わって5連勝を目標にしていきたい」
という岩政コーチのコメントが。
純粋にJクラブの監督どころかコーチングスタッフ自体初めてだったから、かもしれない。
でも経歴とかその他のコメントを考えると、やっぱり違和感。やはり我々が想定してるより「監督代行」という立ち位置である事についての…


妄想はこのくらいにして。
なんにせよこれに関してはヴァイラー監督がいち早く来日することを祈るしかない。




なんの話だっけか。

そうかプレスが噛み合ってそこから外せなかったという話か。

でも別にサボるとかではなく、この試合の前半はこれとそれに伴う現象、そして17歳のセレッソの先制ゴールで試合のペースが決まって、その後はしばらくひたすらそのままの状況で時間が流れていた。


チームとして表現したいもののために
なにをどう頑張ればいいかに迷ってる鹿島と、
なにをどう頑張ればいいかがハッキリしてるセレッソ。

そりゃあセレッソの方がエネルギーが出力できる。

これは気持ちとかそういう不明瞭な話ではない。
俺は一度だって鹿島の選手から気持ちの量が足りないと感じたことは無い。

あくまでロジックだ。
気持ちをエネルギーに変換するロジックを持ち合わせてないから、気持ちの量は足りてるのにエネルギーが足りなくなる。
いつだってそうだった。



なんか脱線が止まらんな。まぁそういう試合だった。

この試合の感想は既に全部言ったので残りは惰性になるが、一応義務的にその後の話もしておこう。


印象的だったのは、広瀬が試合が止まるたびにCBの健斗,ミンテやCHの中村,ジエゴを捕まえては、ビルドアップについて色んなアイデアを身振り手振りで提示していたこと。
この試合はここまで書いたように(同上)だが、そのなかでも広瀬はその意識を高く感じた。やはり今の鹿島アントラーズのなかで唯一Jリーグの通年優勝を経験してる選手だなと感じざるを得なかった。

そして土居と交代で入りトップ下のポジションを引き継いだ荒木は、昨年同様3列目まで顔を出し単独でズラしてボールの流れを生んでいた。
この構図で求められてるトップ下像は、大岩監督時代に土居がやってたSTっぽい振る舞いではなく、相馬監督時代に荒木がやってたフリーマンっぽい振る舞いだったという事が如実に表れていたのが印象的だった。

あとは試合終盤に安西とジエゴのガス欠っぷりが顕著だったにも関わらず、その2人が90分やらざるを得なかったというのはこの試合を語るうえで避けて通れない。
走力や活動範囲に定評がある2人だからこそ、この過密日程のなかでの疲労がより目立ってしまっていた。
純粋な編成の問題ではあるが積極的に小田や溝口、そして名古や舩橋が活躍できる下地を作らねばならない。今挙げたなかに負傷者も居るだろうが、どのみち替えが効かず酷使が続きその選手に負傷離脱があれば、替えが効く効かない言ってられなくなるわけで。

そういった意味を加味したうえで、控え選手が最低限ゲームに入るために必要になる下書きは、改めて領域を広くしていくのが理想かなと。


最後に、試合終盤は押し込んだうえでゴールを脅かすことができなかった事について。
個人的なサッカー論になるが、アタッキングサードまでどのようにボールと人を運んでいき「いかにチャンスを作るか」についてはそれこそコーチングスタッフがどこまで介入するかについて議論の余地が大いにあると思っているが、逆に言えばアタッキングサードより先で「どうゴールを決めるか」については外部が介入する余地はなく、完全に選手次第だと考えている。
そりゃ一歩視点を引いて普段どういうトレーニングメニューにするかであったり、そもそもFWにどれだけ得点能力の高い選手を置ける編成にするかであったり、アタッカーのメンタルをどう良い状態に持っていくか等を考えればそこに外部からの介入の余地は充分にあるが、ことピッチ上に関して言えば、もうシュートを叩き込めるか否かは選手自身でやるかやれないかの話だと思う。

どうしようもない。
一定数の試行回数を用意するために「いかにチャンスを作るか」を改善していく以外ない。
「いかにチャンスを決めるか」に関してはもう信じるしかない。

俺も、おそらく試合中の監督も。

だからシュートのたびに拍手して、ゴールが決まりそうな雰囲気を作ってあげて、あとは選手の能力を信じるしかない。
ので、語らない。


まとめ

ヴァイラー監督の来日が報道されていた予定通り運べば、岩政監督代行が指揮を執るのは残り2試合。目の前の試合で勝つ事を第一に、どう良い状態でヴァイラーにバトンタッチできるか。

個人的にはこのホーム2連敗を踏まえ、これ以上負の空気を生まないために、目の前のやりやすさを求めた下書きを準備する選択がチームにとってより良いと考える。


期待して、次へ。


以上