見出し画像

20240422-0427



四月二十二日(月)
 Aの夢。Aは私が大切なひとを失ったことを知っていて、やさしくしてくれる。
 ああ、全然大丈夫じゃないな、と思う。
 労働、買いもの。スーパーの通路で、立ち尽くしてしまう。何を買えばいいんだっけ。ちゃんとメモを書いて右手に握りしめているのに。トマトを買って帰り、冷蔵庫にもまだトマトが残っていて、でもメモにはトマト、と書いてあるし、とにかく疲労している。
 たまごやきを焼く、はるかを剥いて切ってはちみつで和える、小松菜を梅とおかかで和える、鶏肉を砂糖と酒と醤油とお酢であま酸っぱく煮る。
 何かをつくりたいな、と思う。架空の店の、ノベルティのエコバッグとか。包装紙とか。袋に貼るシールとか。
 そういうことを、やりたかったんだな、あの頃の私は。でも全然別のところに来てしまった。
 世界。私の世界。すっかり色のない、けれどそれでいい、と思う世界。

四月二十三日(火)
 三十五歳になる。結婚して八年が経つ。
 労働、少しだけ買いもの。雨がぽつりぽつり。ややひんやりとしている。無印良品で注文していたものが届いている。タンクトップ二枚、半袖一枚、七分袖一枚。見事に白からグレーのグラデーション。好きな色、と思う。うちの洗濯ものは似たような色ばかりになる。
 はるかを剥いて切り、トマトを切り、小松菜を切り、まいたけをほぐす。絹さやの筋をとり、軽く煮てたまごでとじる。
 眠たい。

四月二十四日(水)
 雨。向かいの家の庭に猫が二匹。白いふわふわのふわ子と、グレーのしまちゃん。
 ほうじ茶のショートブレッドをつくる。相変わらず菓子やパンを焼くことで安寧を保とうとしている。
 午後、美容院へ。全然そんな精神ではないけれど、連休に入る前には整えておきたかったので、霧のような静かな雨の中向かう。工事現場の片隅のしろつめくさの群れも、しっとりとした古いワインのような色のチューリップも、濡れそぼっている。雨なのにつばめが飛び、しろい蝶が舞う。帰りもまだ雨は降っているけれど、雲の向こうはあかるく、水たまりが光る。
 鏡の中の顔は、げっそりとしていた。元々頬はこけているけれど、こんなにも? と思う。年々やつれていく。嫌いな顔。

四月二十五日(木)
 疲れている。当たり前だ。
 労働、買いもの。重たい。牛乳、ヨーグルト、鶏もも肉、バナナ、など。途中でエコバッグを放り投げて叫びたくなる。帰ると、Hちゃんからの手紙と、tiny sitruunaが届いている。赤いリボンの麦わら帽子。

四月二十六日(金)
 休日、掃除、歯医者。ドラッグストアへ寄って帰る。ハムとレタスのサンドイッチをつくり食べる。
 午後、ネットで古い雑誌を二冊注文する。ひじきを混ぜたたまごやきを焼き、明日の朝用に、バゲットを切ってフレンチトーストを仕込む。

四月二十七日(土)
 私の世界を守るためにはどうしたらいいんだろう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?