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20220111 ジャムつきパン


 しとしとと雨。
 成人の日が過ぎると、ようやく日常、という気持ちになる。クリスマス、年末、お正月、そして成人の日という何かしらおめでたい、胸がざわつく日々がようやく終わり、さてさて何でもない毎日よおかえりなさい。
 そのざわざわとした日々の最中、見事なしもやけを作った。まず右手の薬指の根元の辺りに違和感を覚え、小さな痛みと虫刺されのような赤みが、あれよあれよと広がっていき、ぱんぱんに腫れ上がった。オロナインを塗ってみても、ユースキンを塗ってみても駄目。利き手じゃなくてよかったと思っていたら、なんだか左手も痛い。見た目はそんなに変わらないのに、痛みはこちらが強いんじゃあないか。中指の真ん中らへんと人差し指の根元に近い辺りがぱんっと密度を増している。みちみち。ものを掴めないほどの痛み。非日常の中で、さらに日常から離れていく体に、焦り苛立ち、途方に暮れる。
 土曜日。駄々をこねながら皮膚科へ向かう。塗り薬と飲み薬を処方される。
 月曜日の夜、寝る前に塗り薬を塗ろうとしていると夫に「規則的正しいね」と言われる。
 私が今まで夫から言われた言葉で一番嬉しかったのは「思慮深い」だ。この「規則正しいね」は、それに次ぐ言葉かもしれない。

 さて。年末年始はしもやけでほとんど何もできなかったので、本ばかり読んでいた。
 絵本を二冊読んだ。『ねこのセーター』と『ジャムつきパンとフランシス』だ。
 『ねこのセーター』のねこは、どんぐりに帽子をかぶせる仕事をしている。
 どんぐりに帽子をかぶせる仕事。
 穴の空いたセーターを着て、さむがりでなまけものでせっかちでおぎょうぎがわるくてはずかしがりやのなきむしでちょっとだらしないねこも労働者なのだと思うと胸が熱くなる。
 『ジャムつきパンとフランシス』の主人公は、ジャムつきパンばかり食べている。お母さんが用意したたまごも、カツレツも、チキンサラダのサンドイッチも食べず、大好きで安心できるジャムつきパンばかり食べている。
 わかる。と思う。
 この絵本はもしかしたら、偏食をせずいろんなものを食べましょうとか、食事は楽しいものだよということを子供に伝える絵本とされているのかもしれない。
 だとしたら、かなしい。
 私はもっとフランシスの繊細さに寄り添いたい。ジャムつきパンをおおいに食べよう、と肩を抱きたい。


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