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#70 タバコ屋さんの笑顔を守りたい

 昨今、嫌煙が驚くほど加速している。健康増進法の改正や、天井知らずの税率上昇など、喫煙者の肩身は狭くなる一方だ。かくいう私も、数少ない喫煙者の一人なのだが、やめる気は一切ない。

 喫煙者がタバコを吸おうと思ったきっかけのほとんどは、カッコイイからだと思う。カッコイイから咥えだしたし、カッコイイから吸い続けている。
 しかし、最近の若者の間ではタバコはカッコイイどころかまじダセえらしい。価値観の変遷とは恐ろしいもので、この事実に触れた時、私は初めて叶姉妹を見た時くらいの衝撃を味わった。

 タバコは嗜好品だし、吸う吸わないは個人の自由だと思う。実際健康に良いとは言えないものだし、においを嫌う人やルールを守らない喫煙者に嫌気がさすという人も多いと思う。しかし、ルールをしっかり守っているのに避けられたり、唾を吐かれたり石を投げられるのは我々とて我慢できない。

 そして何より辛いと思うのが、タバコ屋さんだ。タバコに対する考え方や増税に次ぐ増税で喫煙者が減っていくことで、彼らは廃業の危機にさらされている。「角のタバコ屋」という昭和の風景を代表する古き良き存在は、もう見られなくなるのかもしれない。

 仕事帰りに立ち寄るサラリーマンはスーツの内ポケットにマイセンを忍ばせながら、今日も愛する家族のために働いた。
 おばちゃんに夢を語る若きバンドマンは理想の曲の完成を追い求め、もがきながらクールに火をつける。
 お父さんのお遣いに来た近所のガキンチョも、いつかこのセッターの虜になるのだろうか。
 行き当たりばったりな生き方を続ける無精髭の男は、今日もつまみ代わりにラキストの煙をくゆらす。

 そして角のタバコ屋のおばちゃんは、孫の誕生日に何を渡せば喜んでくれるか試行錯誤しながら、愛煙家の生活を支える1日の幕を上げた。

 タバコ屋は多くの人間の生活を支えていると同時に、その一人一人、一箱一箱、一本一本に支えられている。タバコ文化の滅亡は、あの愛らしいおばちゃんを、柔和な笑みのおっちゃんを見捨てることになる。

 次期総理が誰になるのか、我々国民に決定権はない。新たな総理となる方に期待することはただ一点。タバコ屋さんの笑顔を守って欲しい。愛煙家が家族以外で唯一心を許す彼らの人生を、生活を、笑顔を守って欲しい。そんだけ!


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