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我が人生最速の時

無闇と矢鱈に切り裂いてくナイフみたいな 擦れっ枯らしの風の中 おれはじっと、襟を立て 尖らした目ん玉の中 始まりが終わるのを見てた 暗闇と身体に染み渡る あの音が 弱い者達がさらに弱い者を── 急がなきゃ間に合わねえぞ あの娘が消えちまったように 急がなきゃ間に合わねえぞ あの娘が消えちまったように どうか間に合え、ああ 無闇と矢鱈に切り裂いてくナイフみたいな 擦れっ枯らしの風の中 おれはじっと、襟を立て 尖らした目ん玉の中 終わりが始まるのを見てた 急いだって、間

    • そうやって眠って忘れちまうんだ そうやって眠って とめどなく流れるラッパの音色と 七人の天使が悲しげに 吐き捨てるように 神様がこう言ったんだ 「もうウンザリだ」なんて らしくないや 溶け出してく風景 目をつむっていたんだ 耳も塞ぎ 喋りたくもない このまんまどうぞ安らかに 消えさせてくれないか? バチ当たりだ なんてヒンシュクを買ってさ どうやってこうか?呑気な歌が歌えない なあ どうやってくんだ?明日のことに溺れてく! どうしようもなくなった 生まれつきそうだった

      • kick me out

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        • 或るアルトカルシフィリアの手記

          喰う寝るにあたってまた意味を乞う ……通りすがりの女のクツ しゃぶりつきたい気持ちを抑えながら 向かったのは死にたがりの崖っぷち それでは皆さん サヨウナラ 地獄の沙汰と天国のルール あんたに見えないものが見える ひしゃげたおれを先刻の女 そのきれいなカカトでゆっくりとなじる その時神様が現れたんだ! 神のご意志に反した全人類に告ぐ 地獄の沙汰と天国のルール あんたに見えないものが見える 欲しがること 欲しがること 欲しがること 欲しがること 「ここが例え天国でも

        我が人生最速の時

          ザ・ロング・グッドバイ

          誰といなくても済んだ あの夏の日に なでおろしてた胸と 明るい言葉の裏で シミを残してたシーツ 今じゃ眠れない夜に 脱いだままのズボンとともに こと切れるような身 朝だ バラバラ おれの なでおろす 胸と腕は どこだ あいつとともに置き去り さよなら さよなら ありがとう ごめんね 短い 途中でも さよなら さよなら 夕暮れ まとまる 町の 色と においと 温度と そして音 この様も悪かねえな さよなら さよなら ありがとう ごめんね 末永い 終わりでも さよなら さ

          ザ・ロング・グッドバイ

          (What's So Funny 'Bout) Peace, Love, And Understanding

          雨が降る すべるように さがしてる 暗闇の中 明りを あきらめたよ 誰にも言えない 痛みと憎悪と あのミザリー けど 雨の切れ間に月がにじんでる ラブアンドピース あえて言うまでもない けれど ヴァッシュ・ザ・スタンピード あんたならどうする? 明日には 憶えちゃいない 明日があるかどうかの 人々を 方舟はどこに? ジェイコブの梯子は? 銃口の花びらが 花びらが もうきっといなくなってしまった 会えなくなってしまった ラブアンドピース あえて言うまでもない けれど

          (What's So Funny 'Bout) Peace, Love, And Understanding

          Sketches of Hometown

          波間への一雫 煤けた雲の袖 咳き込む町に 雨宿り猫が来る 毛並みが乾くまで 側に居てくれた 濡れたまま居られずに 乾き、皺が浮いた 先にいった人の 好きなものを並べる 菊の花が揺れる

          Sketches of Hometown

          'Heroes'

          ああ、助けにゆく 君を、助けにゆく どうあっても 見張りはいる 今日だけは 邪魔させない 映画みたいにさ この日だけを また 死にたがって いいよ 他人のせいにしよう ペニスを触る ショーツをずらす においのついた からだで どうあっても 終わりは来るけど 盗んじまおう この日だけでも 映画みたいにさ 何度でも どう思う? ああ、この壁を イルカのように 跳べたらな どうあっても だって、終わりは来るから 今日だけ 何度でも 映画みたいにさ この日だけを ああ、助けにゆ

          戦争

          幾度目かの 夏が過ぎて 僕が死んだ あの日を 皆 忘れてしまうでしょう 僕が死んだ あの夏の日を お前の死にたさに興味はないぞ、と フロアから出ていく人たちを目で追う ちょっといやになっただけさ 気にしないでいることもうまくはなったし 酔わせてやれそうな女が群がる 若くてシュッとしたちょっと悪そうなバンドマン かわいくてちょろそうな女なら誰でもいい、と おこぼれに与りたい僕は ルールに従って 頭のおかしいふりをする 水の中 掴めなかった手と 崩れかけた壁と あなたの 肌

          冬枯れの飛び立つ向こう鳥居の朱 三本足のからすの色が

          冬枯れの飛び立つ向こう鳥居の朱 三本足のからすの色が

          吉見拓哉詩的日記集『すごい雑念#1 231103〜231107』

          231103  面倒だな、と思いながら乳房に手を伸ばし、バスローブ越しに先端を擦る。恋人の吐息。時折漏れる声と口を覆う仕草に嘘くささを感じるが、例えそれの何割かが演技であろうと、そうすることが性愛の呼び水になるのだろう。

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          吉見拓哉詩的日記集『すごい雑念#1 231103〜231107』

          20230307

           勃起したおれのペニスを満足そうに眺める女。顎に指を当て、フッと息を吐くと、タイトなスカートの腰つきを振りながら部屋を出て行く。扉を閉める時に向いた半身の、乳首のピアスが光って見えた。ペニスをしまう。診断のように毎朝行われる。  窓から隣家の屋根をつたって、屋上に出る。雑に穿たれた板の迷路を抜けると、灰皿とキャンピングチェア。煙草に火を着ける。吐いた煙が雲と混ざる。悲鳴が聞こえる。女の子を助ける。金髪のポニーテールの、大学生くらいだろうか。スポーツウェアが半ばはだけている。そ

          20230301

           夢の中でおれは母に「あいつ隠れるのうまいから」と言っていた。  最近そら見ぃひんなあ、と独りごちながら仏壇のある部屋の戸を開けると、部屋の奥から走って来ておれの顔を見てニャーと鳴く。喉を鳴らし、腹を見せる。白い毛の透けた肌のピンク。6つの乳首の小さな突起が撫でていると手に当たる。  母は先に部屋に入っていて撫で終えた様子。また泣いている。久しぶりやなあどこ行っとってん、とおれが言う。そらが手を舐める。  そらは死んだのだ。少し覚醒したおれが告げる。そうだった死んだのだった

          さそわれた日暮れの神社黒猫と 生まれる前に見上げた赤さ

          さそわれた日暮れの神社黒猫と 生まれる前に見上げた赤さ

          20230216

           夢の中でおれはボ・ディドリーかマディ・ウォーターズになっていてギターを弾いていた。  ステージすら無いダイナー。ハンチングの太ったじじいが試すように斜(はす)に構え、若い黒人女たちが体を揺らしている。カウンターに並んで三人、ミントグリーン、イエロー、ブルーの背中の開いたワンピースが、ギラギラと照り返す銀色のパイプと赤いビニールのクッションの椅子の上からこぼれそうになっている。“ビッグ・アス”!。時折振り返って色っぽい視線を投げてくる。  おれはそれに答えるようにとあるリ

          20230215

           少女に連れられ訪れたのは、古い神々の顔面を模した石像の並ぶ祭壇。何度か訪れていて、連れられる途中嫌な予感がしていた。恐れがあった。等間隔に並ぶ石像の背面が見え始め、そこで一度目が覚める。  また意識が落ちると、また少女が見える。少し離れた場所に緑の靄(もや)に包まれて見える。耳鳴りは聴こえないがそのクオリアがする。嫌な予感がしないでもないし、抗えない力に突き動かされているわけでもない。興味本位も半分、はっきりした理由もなくなんとなく付いていくと、神社がある。古ぼけた木の柵に