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病気とつきあう(5) 入院生活その3 病院食

3年半前の冬、脳出血で約半年入院、退院して丸3年経つ。そこから始まった心身の変化がいまの生活や行動、思考に大きな影響を及ぼしている。3年ひと区切りで、病を得て何を感じ何を思ったか、何が変わったか、セルフドキュメントとして、少しずつ書いていくことにした。闘病記ではなく誰かの役にたつものではなく楽しい話ではないが興味のある方は付き合ってほしい。今回は入院生活での食事の話を。


病院食は不味い?


回復期リハビリ病棟の長い入院生活での数少ない楽しみのひとつが食事だった。そうはいっても基本的に病院食は不味く、がっかりすることが大半だった。特に入院して最初の1-2か月は食欲もなく1日3度の食事自体がストレスだった。主食はお粥、おかずはきざみ食で誤嚥防止のとろみがかけられ不味さに拍車がかかり、とろみ入り味噌汁は特にひどかった。高血圧対策の塩分制限で味付けも薄く、どうやって作ったらここまで不味く作れるのかと思った。こちら側の要因として脳出血のせいで味覚がやや鈍っていたことも影響していたが。

栄養補助食品のゼリーはおいしい


肉料理はほとんどなくおかずの中に小さな鶏肉のかけらをみつけるくらい。
魚料理は骨を抜く処理をされ煮たのか焼いたのかわからない、表裏不明の得体の知れない謎の魚がときどき出てきたが、目をつぶって食べたら何を食べてるのかさっぱりわからないだろう。不気味な味つけの煮物の小鉢や小皿が数だけは並ぶ。おいしいと思えたのは毎食出てくる既製品の栄養補助食品のゼリーだけだった。

食事の苦情をつい言ってしまう


看護スタッフに苦情を言うのはお門違いだが、文句のひとつふたつをつい言いたくなる。スタッフもそのことは十分わかっていて、食事の苦情を言われ慣れてるようで患者に同情を示しつつもうまく丸め込み、こちらは軽くいなされる。また、どれだけ食べたか食後にチェックされるし、食欲がないのにたべろたべろといわれるのもストレスだった。以上、ずいぶんひどいいい方をしたが、あくまで入院というある種非常事態の中での個人の感想だ。
病気に向き合うために考えて作られた食事が1日3回も与えられるだけで本来感謝すべきなのに、そこでつまらない文句ばかり言ってしまう自分がとても小さな人間に思えてくる。だからバチが当たった、と(2)に書いたのだったが。

パンの日、めんの日


お粥が通常の米飯になり、おかずのとろみが不要になり、パン食とめん類が許可されると病院食の楽しみが増えていった。
昼食がパンの日と麺類の日が週1回ずつあり、待ち遠しくなった。その日の午前のリハビリには気合が入った。ラーメンはもともと好きで入院後ずっと食べたいと思っていた。そんなある日のお昼に出てきたラーメンは半透明の薄味スープで麺も伸び切っていた。伸びた麺が盛り上がってスープが見えないカレーそばの日もあった。それでもおいしくて完食した。早く退院してもっと旨いラーメンやそばを食べてやるぞ、というモチベーションアップにつながった。自分の単純さに呆れたが。

カレーの日


月1くらいで、カレーやハヤシライスの日もあってこれも楽しみだった。小学校の給食のような妙に懐かしい見た目の辛くないカレーだが、過去に洋食屋や専門店で食べた凝ったカレーの何倍もうまかった。おかわりができないのが残念でたまらなかった。



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