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病気とつきあう(6)入院生活その4 暇つぶしのテレビ

3年半前の冬、脳出血で約半年入院、退院して丸3年経つ。そこから始まった心身の変化がいまの生活や行動、思考に大きな影響を及ぼしている。3年ひと区切りで、病を得て何を感じ何を思ったか、何が変わったか、セルフドキュメントとして、少しずつ書いていくことにした。闘病記ではなく誰かの役にたつものではない。楽しい話ではないが興味のある方は付き合ってほしい。今回は入院生活での暇つぶしのテレビの話を。


入院生活は閑で退屈

回復期リハビリ病棟に入院中は食事・リハビリ・睡眠以外は基本自由時間だ。閑な時間がたっぷりある。何もすることがないと横になりたくなる。しかし、寝てばかりだとリハビリ的にもよくないので、なるべく起きて座って、頭だけでも活動的に過ごそうと考えた。そもそもリハビリ目的の入院だし。

病室は基本2人部屋で同室者はみな自分より年長だったが、自分より軽症らしく次々退院し入れ替わる。うらやましいしけっこう焦った。同室者はカーテンを閉めて寝ているかイヤホンをつけてテレビを視ていることが多く、患者同士のコミュニケーションはほぼなかった。1日何度か病室にやってくる担当看護師とのどうでもいい対話や役に立たない軽口は気晴らしにはなった。

退屈しのぎのテレビ


入院前半の3か月ほどはテレビを視ることが多かった、ベッドサイドには液晶テレビが設置されていて、イヤホンを購入し定額料金を払うと消灯時間以外はいつでもみることができた。しかし、午前も午後も各局同じような番組(ニュース・芸能のワイドショーや通販番組)ばかりで、扱う内容は芸能人や有名人のどうでもいいゴシップやスキャンダル、不倫騒動、新型コロナが拡大すると話題はそればかりになってさすがに飽きた。
夜は歌やお笑いの娯楽番組が多かったが、心から面白いと思える番組はなかった。ただひとつの例外を除いて。

出川哲朗で安らぐ


唯一の例外は、出川哲朗の充電バイクの旅番組だった。出川哲朗のゆるキャラのような風貌、滑舌悪く言い間違いが多くて字幕が出るのはご愛嬌だが、やらせのない番組で、市井の人たちとの自然体のやり取りが面白い。お年寄りをリスペクトし、こどもにも気を遣い出会う人々を笑いに巻き込んでいく。出川は普通に気さくに対応するが人柄の良さがにじみ出るし、多くの老若男女が出川と出会えたことを心から喜んでいるのがわかる。シャレの効いたBGMもユニークで、例えば旅先でところてんを食べるとテレサテンの曲が流れたりするので、BGMが変わる度に関連を考察してしまう。もちろん出川哲朗のリアクション芸人としての底力が根底にある。長々と出川哲朗の番組をベタ褒めしてしまったが、週に一度この番組を視ることで気持ちが和んだのは間違いなかった。

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