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Chapter 3 「夢魔」 後編


車の中は清潔そうだった。少なくとも、目で見る分には。

男は、私を家まで送り返してくれると言ったが、車は私の家とは逆の方向へとドンドン進んでいった。

嫌な予感がしたが、私にもう、そこまで色々考える気力は無かった。

それどころか、あわよくば男の家で一晩寝てみてもいい...

とまで思っていた。 

馬鹿だった。

いつの間にか、車は高速道路の中へと入り、看板には "静岡" の文字が見えた。

流石に不審に思った私は、男にこう尋ねた。

「すみません、一体どこに向かってるんですか?」

「 … 」

「貴方、私を家に返すって言いましたよね?そう、言ったよね!」

男は、何も喋らない。

オイッ!! と言って、私は男の顔を叩いた。

すると、男は口を開き、こう言った。

「いやぁ~、これはあの時のビンタを思い出しますヨ~♪」

この、耳障りで汚らしい奇声に、私は思わず鳥肌を立てた。

やっと、私は、この男の正体に、今更ながら気が付いた。

むふふふふ、と 不気味な笑みを浮かべ、男は自分の顔に手を当てた。

すると、男の顔は歪み、皮膚には亀裂が走り、ベロンと剥がれ落ちた。

さっきまでそこにいた美男は消え去り、そこに現れたのは、

あのアチワであった。そう、あの奴だ。

男の顔は、アチワの精巧な変装マスクだったのだ。

私は、さっきまでこの醜きドブスに見惚れてしまっていたのか...

いやややややややややややああああああああ

そう思うと、自分で自分のことが嫌いになった。

もう、ドブスのことよりも、自分自身のことが恐ろしくなった。

なんで、こんな男に、こんなところまで付いてしまったのだろう。

圧倒的な絶望感、そして、敗北感。

そうしている内に、アチワは静かに私の口元にハンカチを当て、

私は、バタッと気を失った...

気が付くと、私は小屋の中にいた。

服は脱がされ、両手両足は縄で縛られていた。

「むふふぅん、やっと御目覚めかなぁ…」

私の目の前には、よだれを垂らしたアチワの姿があった。

「うううッ」

吐き気を感じ、私はその場で吐いた。

「んもぉ、ダメでしょ!こんなん出して。」

う、ヴぉエ... そんなん知るか。

「なら、ワタシが綺麗にしてあげますヨ~♪」

そういって、アチワは私の飛び散った体液を、口で啜った。

「あとぉ、ユミタンの体の方も綺麗にしますネ~♪」

そういって、は私の中へと入ってきた。

もうそのあとの事は、正直未だに思い出したくない。

は、私に注ぎ込んできただけでなく、私の全身に鞭を打ち付けてきた。

奴は、あのドブスは、私の悲鳴を聴くなり、笑っていた。

不気味な、ドス黒い笑い声を高らかに上げ、高揚していた。

許せない。

あのカス野郎の事は絶対に許せない。絶対にだ。

何が何でも、奴に仕返ししてやる。

この屈辱を、奴にも味合わせてやる!!

奴の、あのドブスの、あの野郎の、

「全てが憎い!」


こう叫ぶと、ふとベットの下から、声がした。

小さな囁き声だったからか、よく聴こえなかったが、確かに声がした。

確かに、誰かの声がした。

ここは病室なはず、そう簡単には誰も入れないはずなのに...

するとまた、声が聞こえた。



 おはにょ~す




アチワは、ベッドの下にいた。私が担ぎこまれたときから、ずっと...



つづく→

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