連続短編小説「阿知波」

最終回 「懺悔」

この文章は、私の今までの活動の総括としての文とする。

私の活動は、ずばり ドブス研究である。

この活動は、私がとある興味深い噂を耳にしたことから全てが始まる。

その日、私は久しぶりに会った高校の同級生と喫茶店にて雑談をしていた。

そこで、私は「ドブス顔面キモ人間」なる映画の存在を聞いたのだ。

なんと、その作品は全編5時間にも及ぶ大長編であったらしい。

私はその珍妙なタイトルに深い謎の気配を感じ、ドブス研究の深い沼へとずぶずぶハマりこんでいった。

調べていくうちに、「ドブス顔面キモ人間」は約10億円という巨額の製作費を掛けて作られた大作映画であったという事を知る。しかし、それだけの超大作であったにも関わらず、この映画はDVDさえも出ていない。何故だ。

さらに調べていくと、映画の製作費のほとんどを名〇屋市役所が払っていたという事実にたどり着いた。そう、映画は編集も終え、後は公開するのみというところまで完成していたのだ。しかし、それを配給元の一つであった市役所が映画の上映を中止するため、許可なく本編フィルムを全て没収し、焼き捨ててしまったのだそうだ。通りで、今この映画を観ることができなくなってしまっているわけだ。

しかし、なぜ市役所はフィルムを燃やしたのだろう。なにか不都合な情報でも映っていたのだろうか。謎は深まるばかりである。

私はその謎を解くため、この映画を監督した人物の下へ会いに行ってみることにした。まず、監督の自宅を訪ねてみたが、留守であった。近隣の住民に話を聞いてみると、もう五年は戻ってきていないそうだ。他に何か手がかりはないのかと、私は映画のプロデューサーの家をも訪ねたが、結局その家も留守だった。

謎を解く筋道が全く見つからず、私は少しずつ不安を感じていった。

そんなある日、突然私の下へ電話が鳴り響いた。

映画のプロデューサーの息子を名乗る人物からだった。

その男の名前は立花と言った。

彼は私に向かって、電話越しにこう伝えた。

「あんた、もうこれ以上首を突っ込まないほうがいいですぜ。」

「そんな、何故です。私はただ真実を知りたいだけです。」

「いいから、私は忠告しましたからね。それでは...」

ここで、電話は切れた。

その後、私は何度も電話を掛け直したが、繋がることは無かった。

新しい発見もなく、時間だけが流れ、いつしか私のドブス研究に対する熱意も冷め始めていった。

そうした経緯を経て、いま私は今まで自分の調べてきたことを記録として、このnoteにまとめている。

記録をnoteに書き始めたのは、自分の記憶を文字として残しておいたほうが後々良いのではないか、と私自身が思い立ったからだ。


さて、そうこうしている内に、家のインターホンが鳴った。

いつもはこんな時間に来ないのに、珍しいな。

そう思い、私は玄関のドアを開けた。

すると、ドアの前には、女装した男性の姿があった。

そして、その男性は怒鳴るような声で、私へ向かってこう言った。




全てが憎い!!!


                              


                               完

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