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Chapter 11 「最後の儀式」

中へ入ると、ヤマネは首を縛られ、水族館の天井に吊り上げられていた。

痣だらけでダランとしたその体からは、静かに血が滴っていた。

なんて惨いことをする輩なんだ... そう思った。

こんな残酷なことをしておきながら、平気でヘラヘラと笑い抜かしている彼らの異常性に寒気がした。何がおかしいのか、俺には到底分からない。

「おい、ナガヤマ。どうした、さっきから黙りこくって、つまんねぇぞ。」

唐突にユウキが話しかけて来た。いつもは俺のことなど眼中にさえ無い癖して、こういう時だけ都合のいい奴だ。なんて単細胞な奴。

「いや、まさか本当にするなんて思ってもなかったよ...  まさかここまでやるなんてね、びっくりだ。」

「驚いて、どう反応すればいいのか、わからねぇってことか。」

「う、うん。」

「まぁ、こんなもん俺達ド・ブーズの手に掛かれば楽勝もんよ!」

「はぁ、そう。しかし、こんなに汚しちゃって大丈夫なのかい。」

「ん? あぁ、掃除は色々手間がかかるからな。これからだ! それによ、今掃除しちゃあ、これからまだヤラなきゃいけねぇやつがいるのに、今やっちゃまだ早いんだよな。」

「これから? ヤらなきゃいけない奴って、、、 まさか!!!」

「もちろん! そのまさか dayo !!!」

そうユウキが言うと、俺は後ろから金属バットで思いっ切り、頭を殴られた。こんな卑怯な襲い方。殴ったのは、多分モトヤだ。

朦朧とし、消えゆく意識の中で、俺は部屋の隅の椅子に縛られた男の姿を見つけた。遠くだからあまりよくは分からなったが、おそらくアイツだ。

そうだ、アチワだ。縛られているのはアチワくんだ。しかし何故?

そう思った時には、俺はもう意識を失ってしまっていた。


目覚めると、俺は飛び込み台の上に括り付けられていた。

真下には大きな水槽があり、シャチが二匹、腹を空かせて待っていた。

手足は紐で縛られ、身動きが取れない。それに足場はとても細くて狭く、少し動こうとすると滑って落ちてしまいそうな程だった。

「どうだね、どんな気分だぁ、ナガヤマさんよぉ?」

モトヤが嫌味ったらしく聞いてくる。

「お、お前ら、一体何なんだ。ヤマネの次は俺ってか??」

「うん、そうそう。御名答~」

「おいッ、いいかげんにしろよ! なんだよ、俺は何もしてねぇだろうが!」

「いやぁ、寧ろ何もしてくれないところが好都合なのさァ。分かるかい?」

「わ、分からねぇよ!! 何が何なのか、分からねぇよ! というか、お前らは女一人手にれるために一体何人殺すつもりなんだ!! いつかお前らにも天罰が下るぞ!! きっとそうだ!!! 今に見てろ、きっと後悔するからな!!!!」

さっきからうるさいな、もう説教は聞き飽きたよ。

いいから、さっさと早く死ね


そう言って、無情にもユウキは俺を水槽の底へと蹴落とした。

水槽の中は極寒の湖の様に冷たかった。まさに死の味がした。

餌に飢えたシャチ達が静かにこちらに迫ってくる。人生終了まで、もう秒読み残り僅かだ。手足が縛られているため、抵抗なんてできるもんじゃない。ただただ藻掻いて、浮かんでいるだけで精いっぱいだった...

しかし、ふと水槽のガラスから、涙目でこちらを見ているアチワくんの姿が見えた。嗚呼、その姿を見て俺も思わず泣いた。人生最後の一瞬に、水に濡れながらも心置きなく涙した。そして、精一杯、大きな声で こう叫んだ。


「アチワぁぁぁぁぁ!! 思い出せ、ドブーズの誓い!!! そして 殺せ、奴らを殺せ、殺して、必ず戻ってこい、この水族館に必ず戻って来いよ!! 約束だからなァァァァァあ!!」




こうして、ナガヤマ・カズトは全身をシャチに噛み千切られ絶命。

17歳にして、その短い生涯を終えた。


→おわり。

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