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途中帰国の実習生【技能実習生との日々⑤】


実習生が途中で帰国

私は技能実習生とは良好な関係を築いている(つもりである)。そしてその関係を維持するように努力もしているが、全てが上手くいっている訳ではない。失踪こそないものの、途中帰国者が発生した。

「キクさん、私帰りたい、ベトナムへ帰りたい。子供に会いたい」と切実な顔で言ってきたのは実習生3年目のファム。採用時の面接評価がずば抜けて良かった子だ。ただしその時点で5歳の男の子の母親でもあったので、実習生として日本に来ると子供とも3年間会えなくなる。この点については何度も何度も確認をしていた。

「大丈夫、私は子供が将来大きくなった時の留学費用を稼ぐために我慢します」

採用時にはそう言って周りを感心させていたのだ。だがそんな評価もどこへやら、工場への配属後は怠けることが多くなっていた。何よりも【楽な方、楽な方】へ流れて行ってしまうのだ。残業を望む訳でもなく、寮で日本語の勉強をしている様子もない。東京大阪へ毎月のように遊びに行っている写真をfacebookにアップをしている。母国に仕送りもしていないようだ。

辞めた本当の理由

ファムと一緒の部署で働くパートのおばちゃん達から辞める本当の理由が伝わってきた。

子供に会いたい理由も間違いではないが、日本在住のブラジル人とイイ仲になったので結婚して一緒に住みたい理由の方が大きいようだ。その彼は就業制限のない定住(永住)ビザを持っているので、結婚すると一緒に住むことはもちろん、彼女も配偶者ビザで日本で自由に働き続けることができる。実習生には居住や従事する業務まで何かと制限が多いが、その問題もクリアできる。何というミラクルか。

つまり【技能実習生の期間終了までは彼と一緒に住むことができない、技能実習生を辞めるとビザが実習生ビザである以上帰国する他ない。だったら実習生は途中で辞め、一旦はベトナムへ帰る。そして次の日本へのビザが通り次第すぐ来日して彼と籍を入れる。これが一番手っ取り早い】ということなのだ。

喜んで途中帰国、そしてB君の場合

途中帰国をファム本人・会社・管理団体での三者合意が決定するとファム自身はすぐにでも帰りたいと、わずか数日で帰国をしてしまった。

そうはいっても2年は一緒に働いたんだからと送別会を有志で開き、ささやかなお別れ会をした。通常であれば帰国日の空港への送迎は私の仕事だが、例の彼が担ってくれた。(そりゃそうだ、少しでも離れたくないのだろう)

その3週間後、私はベトナム(ハノイ)への出張(新たな実習生の採用面接)が決まっていた。その中にはファムの最後の給料を手渡す業務も含まれていたため、ハノイ市内で会う約束もしていた。

その話をどこで知ったのだろう、ファムと普段の業務で一緒に働いていた日本人社員のB君が「キクさん!今度の出張に一緒に連れてって下さい!」と急に言ってきたのだ。

※長くなったので次に続きます(決してもったいぶっているわけではありません)

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