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ミミズテレポーテーション

週末は雨だった。

駐車場に車を停めて傘をさして歩き出すと、地面にうず状のミミズを発見した。

そういえば、雨の日に発見されるミミズは、いつだって、完全に手遅れな場所に存在している。今すぐに元いた場所へ引き返したとしても、もう間に合わない場所にいるのだ。たとえば、アスファルトで舗装された道の真ん中などに、困惑した様子で存在している。その様子は、スーパーマーケットで、明らかに売り場が違う製品が、別の棚に置かれてしまっているときの悲壮感に似ている。

そして1番の問題は、このときの彼らが活発に動いているところを目撃したことがない、ということである。本当に動いていないとしたら、一体どのようにしてここへ辿り着いたのか、不思議なのである。
現に、私が目撃したミミズは、完全にうず状になっており、いくら前進したところで、ぐるぐると同じ箇所でうずを巻くことしかできないはずなのだ。

つまり、これが何を意味するかと言うと、ミミズはテレポーテーションしている可能性が高い、ということなのである。恐らく土の中などに、頻回に時空の歪みが存在しており、そこに偶発的に差し掛かったミミズが、本人の意思とは無関係に、アスファルトの上へテレポーテーションしてしまう仕組みになっているのである。そう思うと、あの困惑した様子にも納得がいく。自分で移動していたとしたら、あんなに困惑した感じを醸し出せるわけがないからだ。

そして恐らく、この時空の歪みは、細長いミミズのみ適用され、他の動物には適用されない可能性が高い。そして、雨という条件が必須であるのだ。

つまり、テレポーテーションを研究する人々は、雨の日のミミズに、もっと注目すべきなのである。土の中にある時空の歪みと雨の関係も、詳しく調べていく必要がある。そうすればいつか、どこでもドアだって、夢ではなくなる日がくるかもしれない。


などということを1日中考えながら、月曜日を乗り切った。
火曜日は、最も週末の遠さを感じる日である。

週末の雨から、一転して晴れていた。
今頃ミミズは干からびているだろう。



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