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8/19「バイトか、フェスか。」 〈フェス編〉

introduction

選択の連続こそ、人生です。僕はそう思っています。そして選択には必ず代償が生じ、選択した者は責務を負うこととなる。その最たる場面は一体、いつでしょう。

そう、フェスです。

ということで、新しいバイト先の喪失という代償を負い、僕はサマーソニックの初日だけ行ってきました。マジで暑かった。あと、フェスって会場に着くまでの電車で同類探すのちょっと上手くなりません?




stage 1. SUMMIT

約1年ぶりに再会する親友と合流し、僕らが向かったのはマリンステージでした。そこではJXDNの来日キャンセルによって急遽、HIPHOPクルーのSUMMITのステージが行われていました。

当初、僕はパシフィックステージ(幕張メッセの方)でamazarashiを見る予定だったのですが、急遽SUMMITのステージがあると知り、悩んだ末、マリンステージへ向買うと決めました。このように人生の選択は常に用意されているものばかりではありません。こうやって急遽、選択肢が増えることだってあります。

そして迎えた今日初めてのステージ。
当たり前なのですが、ラップしてる姿めちゃくちゃかっこよくて、PUNPEEはもちろんのこと、BIM、OMSB、VaVa、iN-D、COSAと、普段、生きる上での糧となっている言葉を本人の声で聴ける。これ以上の臨場感はないですよ。
個人的に一番良かったのは、COSAのMikiuraと、最高アンセムソングであるTheme Song、どちらもご馳走でした。



stage2. NewJeans

サマーソニック1日目、おそらく多くの人々はここに照準を合わせていたと思います。

K-POPアイドルグループ、NewJeans。

彼女らは「生活の中に音楽がある人」と「音楽が生活な人」。深度が違う両者の心を射止められる存在だと、僕は思っています。前者である僕の親友が、地元からはるばるきてくれたのも、彼女たちのおかげなので感謝したいです。

SUMMITのステージが終了後、会場内の熱気はどんどん強まり、両者の心を射止めているからこそ会場内の人間の密度も上昇していきます。その盛り上がりはとっくに危険域に達していました。
その時の気温は35.2度あり、ちなみにこの日の救急搬送者は約100人だったそうです。
僕はスタンディングエリアにいたのですが、そこはもう「サウナ」状態で、体感温度でいえば35度なんてもんじゃありません。真っ白な顔した女の子が友人に運ばれていくのも見ましたし、実際、真横で人が倒れてスタッフを呼ぶこともありました。

彼女らが日本に来て初めてのステージがこの日であったため、入場規制などあっという間で、もう、立っているだけでとめどなく汗が吹き出てしんどかったです。
文章の脱線具合でお気づきの方もいるでしょう。そう、僕らも彼女たちのステージを全て見ることはできませんでした。倒れるなんてことはどちらもありませんでしたが、僕はそこで学びを得ました。

選択の中で最優先なのは、常に、命です。
これを失えば感動も挫折すらも味わえません。

なので、僕らが観れたのはたったの3曲。
それでも、モニターに映るダニエルは本当にダニエルで、踊っている時にカメラがどんなに寄っても、暑さを一才、表情に出さず、卒なくそして魅力的に演りきる姿は、やはり一流のアイドルなんだなと思いました。

あとね、ヘリンがね、もうすっごい、すっごい、かわいかった。



stage 3. Pale Waves

ここで、親友はBE:FIRSTを観に、幕張メッセへ。
いつでも持つべきは、途中解散・合流できる友ですよね。ということで、僕は一旦、会場から退避し、束の間の休息後、再びマリンステージへ戻りました。
退避したにも関わらず、ここから僕は夜、眠りにつくまで頭痛と戦うこととなります。学生時代、嫌で嫌で仕方なかった夏場の練習風景を思い出しながら日陰で僕は「なにこれ、こういう部活なん?」とかぼやきつつも、今度はスタジアム席の方へ向かいました。

忌々しく感じるほどの快晴。

そこが日陰なんだろうなと一瞬でわかるほど、ちょうど良い鑑賞席は埋まっており、日に晒された席に試しに座ってみると、場所を選べばカルビくらいなら焼けそうだなと思うほど熱く、仕方ないので僕は立って、開演を待ちました。

結果、その選択は功を奏しました。

ちょうどよく風が吹き始めた時、ステージ開演。
一曲目のLiesが流れ出せば未だ続く頭痛すらアンプのひとつとして機能し始めます。ロックとは、突破と開放だと常日頃感じていますが、その二つが僕の身にこの時、同時に起きていました。まずは頭痛の峠からの突破、そしてさっきまでの圧迫感からの解放。

気づけば僕は、スタジアム席でひとり、音にノリ狂っていました。
前半のピークは間違いなく、Pale Wavesでした。

Changeをアコギで演っているのもすごく良かった。ヘザー、また日本に来てくれ。ワンマンいくから。最後、Unwanted演ったんかな。ああ、ビーチステージが僕を呼んでいなければ。
そう、これが、選択によって生じた代償ってやつです。



stage 4. ペトロールズ

東京事変のGt.であり、星野源バンドの専属ギタリストでもある長岡亮介さんが率いるバンド、ペトロールズ。
彼らは星野源さんが全体を通してキュレーションしているステージ、So Sad, So Happyの一組目のアーティストとして、登場していました。

星野源さんもそう言っていましたが、僕も大好きな3ピースバンド、ペトロールズ。
「あなたの心にガソリンを」と、茶目っ気のある一言で、開演したステージはもう、ただ気持ちよかったです。なにがそうさせているのかを振り返って考えてみると、彼らは皆、熟練しているからこそ持ち合わせられる抜け感があるからじゃないかと僕は思ってます。本当に好きだし、かっこいいんだよなぁ。

彼らの音によって生み出されるのは、浮遊感です。
聴いてると僕は、意識だけが自分の体から少し逸脱するような感覚がします。そして音に乗っているうちにその不安定さが自然と高揚へと変わってしまう。もう、一回聴いたらやみつき間違いなしです。
だからこそ際立つ、ソロのエッジさも堪らなくて、両者のバランスが絶妙です。例えるなら、アイスを食べてポテチを食べてる感じです。つまり無限に聴き続けられるということです。

左手には海原、頭上は青空。そんな中でのFUELはマジで、ピースでした。



interlude

間奏であり、休憩です。つまり僕の頭痛がここで再びピークになりました。

オアシスを探しに、また次見たいアーティストのステージがあるため、僕は幕張メッセへ徒歩で向かいます。

先ほど、「いつでも持つべきは、途中解散・合流できる友だ」と書きましたが、フェスでの途中合流って難しいんですね。そんなことを痛感しつつ、僕は親友と合流しました。もはや会場におらず、隣接するレストラン街の中にいた親友と合流を果たし、僕らはクーラーの効いた喫茶店でティータイムです。

酷暑とティータイム。
字面で見比べても、真逆すぎです。

そんなギャップのおかげで、やっと頭痛にしばしの別れを告げることができ、僕らは一年ぶりの近況報告をしあいます。
僕は貧乏フリーター、親友は娘と息子を育てる父親。
これもまた字面で見比べてもなんとやらで、それでも高校時代から変わらず続いている僕らの関係を考えると、改めて、縁って不思議だなと思います。

そんな人間との対話はあっという間に頭から時間を忘れさせます。
タイムテーブル的にはyonawo×鈴木真海子×Skaaiのステージが始まっていましたし、気づいてもいたのですが、僕は見送りました。これが僕の選択でした。



stage 5. Wet Leg

フェスに来て、掘り出し物のオーバーオールを見つけ、購入する。そんな奇妙な出来事の後、再び僕らは幕張メッセに向かいました。

親友はYOASOBI待ちも兼ねて、グリーンステージへ。僕はThundercat待ちも兼ねて、ソニックステージへ。先ほどの選択の顛末を気にせず、僕らはまた途中解散します。
「学びはするが、やりたいことをやる。」
同じマインドを互いに持っているからこそ、僕らはこうしてつながり続けているのかもしれません。

Wet Leg。直訳すると、濡れた足。
そんな奇妙なバンドの彼女らはMV内でロブスターに扮してみたりと、バンド名に負けず劣らずユーモラスな存在です。
ちなみに彼女らも親友二人が発端となり、結成されたバンドです。もしかしたら、好きになったのはそういった波長を音から無意識に摂取していたからかもしれません。

彼女らの作る世界はインディーロックど真ん中といった感じで、それは僕の大好物でもあり、こうなってくると踊らざるを得ません。
実際、そうなっていたし、横にいるお姉さんなんかは、両手を広げて揺れていて、まさに音と自分だけの世界に没入してるなって感じで最高でした。

日本のバンドだと、クラップやハンドサインなんかも割と固定している印象ですが、音楽のノリ方なんてのは本来、人それぞれです。そういった自由さがあの空間には確かにありました。
フェスというただでさえプレイできる時間が短いにも関わらず、その場に居合わせた観客たちと、バンドメンバーの誕生日を合唱して祝うなど、とにかく楽しい空間でした。

中でも一番、楽しかったのは、リアンが「静けさを破壊するような曲を今からやるね」という予告で始まった「Ur Mum」でした。
リアンの言葉を受け、僕の頭には即座にこの曲が浮かびました。おそらくそれは他のファンも一緒で、リアンの歌声で始まった途端、正解発表のように会場が湧き出します。

「Ur Mum」の特徴は、メンバーが曲中に約10秒間、発狂するところです。

シャウトを会場全体が待ち望み、そして10秒間の共鳴。最高すぎでした。
みなさんは、最近叫んでますか?
選択に迷ったら、たまには自分を解放してみませんか?
そうしたくなったあなたはWet Legを聴くべきです。



stage 6. Thundercat

裏で星野源さん本人のステージがあろうが、僕はソニックステージから動きませんでした。当初は彼のステージ後か、あるいは途中で抜けてどっちも見ようと思っていましたが、もう僕には幕張メッセからマリンスタジアムまで行く体力がありませんでした。そして、何より間近でThundercatが観たい。その想いの強さが、僕に決断させました。そのおかげで、ほぼ最前列につくことができました。

約、30分強のインターバル後、始まったステージはとにかく自由でした。

その日、外国のアーティストのステージを見て感じたのは自由さです。例えばオーディエンスのノリ方や、曲のアレンジの幅広さ、日本ではあまり見ない振る舞いが彼らのステージにはあると感じました。

ですが、そんな中で彼の自由さは明らかに逸脱しています。

まず、曲の演奏は最初こそリリースされた通り準えるのですが、すぐにアレンジの域を超えてしまいます。その様相は、まるでジャズのセッションを観ているようでした。

彼がドラムに近寄り、両者が向かい合えばそれが合図となりセッションが始まり、長いことやるんです。並のアーティストがこれをすれば楽曲を自壊させてしまうでしょう。ですが、そこは超絶技巧のミュージシャンです。空間を保たせる力量は確かでした。

ドラムソロに応え、ネックを這う指遣いはまるで対話をしているかのように饒舌で、彼らの演奏はとめどなく、圧倒されました。

でも、それだけではないんです。
演奏で観客を圧倒した後の気の抜けたMC、特徴的な笑い方は、言葉を全て理解できなくとも、振舞いに彼の朗らかさが滲み出ており、喋っていてもずっと素敵でした。

また彼は「tokyo」という曲を作るほど、親日家として有名で、ステージ中盤では坂本龍一さんを偲ぶ曲を演奏していました。

そんな彼が日本と出会うきっかけは、幼い頃、歯医者の治療を頑張った時にもらったリストラップにドラゴンボールのイラストに見たことのないかっこよさを感じたからだったそうです。

そんなきっかけで生まれた「Dragonball Durag」は僕がThundercatに出会ったきっかけでもあります。
Dragonball Duragは曲中に何度も「僕が被ってるドラゴンボールのデュラグ(ラッパーなどが巻いて被る布?)似合ってるかい? 本当のことを教えて!」という歌詞が何度も出てきて、MVも非常に個性的なものとなっており、彼のユーモラスな部分がふんだんに詰まっている最高な作品です。

そんなDragonball Duragを間近で観れた。
これは、"あの"選択をしたからこそ得られた巡り合わせなんだと思います。

いや、本当に最高のステージでした。Thundercat最高。最高すぎます。



outroduction

星野源さんのステージを見なかったからこそ、Thundercatと邂逅できたり、働き口を一つ無くしたからこそ、親友と再会を果たせたり、やはり、何かを得れば、何かを失うのは、当然です。

ですが、わかっていても、つい、他人に委ねてしまう。
それはその選択に対して、責任を負いたくないからでしょう。

だからこそ僕は、日々の選択を自分の意思で行い、責任も負いたい。
フェスはそんな理想に近づくための第一歩になりました。

楽しみ尽くせたサマーソニック。その日の帰りっ僕は新たに学びを得ます。

それは「野外フェスは、必ず事前に日焼け止めを塗っておく」ことです。

僕の両腕は今、凄くひりついています。これが選択を怠った者の咎ってやつなんですかね。理想の自分に辿り着くまでの道のりは、まだまだ遠そうです。


おわり


extra

DJ豊豊さんがサブスク堂で紹介していて、最近ハマった曲シェアしておきます。いつか彼女らの生セシボンが聴きたいです。生セシシでもいいです。



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