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5/8~5/10 「二日目、悩みを打ち明け、老師に諭される」

5/9 火

三連休の二日目はPM4時過ぎからの行動開始です。
パリピ孔明の漫画を読んでいたら、乗り換えを間違ってしまった友達、マブ輩くんと駅で落ち合います。今日はこれから喫茶店に行って、カラオケをして、銭湯へ向かう予定です。
でもちょうどお茶時で、時間をずらした方がいいと思ったので、僕等はまず商店街に向かって歩き始めました。入ったのはセレクトで、メインに取り扱っているのはレディースなのですが、色遣いやデザインのセンスが好きでよく通っている場所です。店内で一通り物色を済ませると僕らは店外へ出ます。
このまま喫茶店に向かってもよかったのですが、二人とも一度服を物色し始めると、他の店もとなる癖があるので、僕等はまた物色を始めます。
立ち寄ったのは、ストリートブランドを扱っている、ここもまたセレクトで仲良くさせてもらっているオーナー(以下、Oさん)が一人で店に立っている店舗です。
そこに入ったのが、すべての狂いの始まりでした。

Oさんのお店はマブ輩と二人で行くよりかは僕が個人的に通っているお店で、商品を買わずにただお喋りだけをして帰る日もあります。
そのお店のラインナップが僕が普段しているスタイルに合っている、センスがあるというのも、もちろん通う理由なのですが、なによりもOさんの人柄が柔らかくて、このお店に入るとつい、長話をしてしまいます。

もう、お分かりでしょう。
そうです。
この日も、僕はマブ輩を含めて3人でクロストークを始めてしまったのです。後ろに予定があるにもかかわらずね。

まずは二度目の来店のため、マブ輩が自己紹介を改めてOさんにして、マブ輩が俳優をやっていること、バイト先が同じで知り合ったこと、マブ輩への誕生日プレゼントOさんと選んだので、その感想をマブ輩が伝えるなどをして、だんだんと会話の温度が上がっていきます。
そこからはバイト先での愚痴や、社会人として生活していく上での悩み、板挟みされる立場ならではの葛藤なんかも共有し合い、温度も練度も上がった時、僕は今までほとんど誰にも話したことがないけど、常に思っているコトを吐露してみたくなりました。
「僕、『誰かに話しかける=相手の時間を奪っている』と思ってしまうんです」
それを聞くと二人から「考えすぎ」とすぐに言い返されました。

相手に話しかけるのは、
相手の時間を奪う行為だ。

そんな風に思い始めたのがいつ頃だったかは覚えていません。ですが確かに僕の心の中には根付いていて、今もあります。
なので、僕は人に話しかけた瞬間から、話を終わらせようとしてしまう癖があり、本来会話というものはその場の空間を共有し合うものにもかかわらず、僕の場合は何となく一方的に終わってしまうことが多いように感じます。
ならば、寡黙でいればいい。
そう思ったのですが、難儀な性格をしていて…僕は、基本いろんな人と喋りたいんです。沢山の人と喋ることによって、その人それぞれに在る価値観、あるいは世界を知るのが僕の楽しみなんです。
喋りかけたいのに、喋るの怖い。
手を繋いだまま互いに逆の方向へダッシュするような僕の性質は、性質なので、おそらくこの先も消えてなくなりはしないと思います。
僕は小説やマンガ、映画に写真、絵画すべての鑑賞物に触れる時、僕は「こいつは何がしたい?」そればかり考えてしまう節があります。
考えてみれば、この思考回路は会話をせずに他人の頭の中身を覗ける方法だったのかもしれません。
ならば、それを繰り返せばいいかというと違います。
何故ならそのようにして建てたものは、机上の空論に過ぎないからです。つまり、答え合わせがどうしてもしたくなる。だから、僕には会話が必要なのかもしれません。
であれば、どうしたらいいのか。
それがわからなくて、かといってこんな悩み誰彼にも理解できるわけではない。そのため、僕は今まで口を閉ざし、問題を先送りにしていました。

悩みを打ち明けてみると、Oさんは僕の第一印象を教えてくれました。

「君はね、フレンドリーに話しかけてくれたんだけど、話しているうちに『ああ、この子頑張って話してくれているんだな』と思ったの」
がんばってとは何か、
それが知りたくて訊いてみると、Oさんはこう続けました。
「すごく沢山喋ってくれるんだけど、君の話には私が口を出すスキマがあまりなかったの」
それを言われた時、僕は本当に”はっと”しました。
会話の比喩としてよく用いられるのがキャッチボールだとしたら、僕はつまり、手に余るほどのボールを抱えて、それを取りこぼしながらもひたすらボールを相手に向かって投げ続けている状態だったのです。
とんでもない鬼畜コーチです。
その比喩をそのままOさんに伝えると、
「そこまでじゃないよ。でもね、何となく切迫感はあった」と言いながら笑ってくれました。
問題に対する現状が明らかになり、後はそう成りうる原因です。

考えても分からず、尋ねてみるとOさん、もとい老師はこう答えました。

「君は、嫌われるのが誰よりも怖いんだよ」

あれ、もしかして僕のメンターですか?

そう疑うほど、老師の答えは単純かつ、真をついていて、僕は「ですよねぇ」としか言えなくなりました。
ぐうの音も出ないとは、まさにこの状態のことで、これからゆっくり自分のペースで改善していきたいと思います。

このようにして、僕らの予定は狂い、僕と老師とマブ輩は店内で約2時間も会話し、そのしわ寄せで喫茶店へ行く予定も、銭湯へ行く予定も完全に潰れましたとさ。

思わぬ長話の後、僕とマブ輩はもんじゃを焼きながら互いの死生観について話し合ったり、カラオケしたり、中華屋でサムギョプサルという料理名を思い出すのに時間を要したりしたのですが、思わぬ長話を書き記すのに文字数を使ってしまったので、割愛します。

もっと人間と関わっていこう。
そう思えた日でした。

5/10 水につづく


老師が営むお店





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