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この最中に

こんにちは。はじめまして。お久しぶりです。

この記事では新しく今年の6月からはじめた最中(さなか)という活動について、書いてみようと思う。
この最中はいろんな膨らみと企みと余白を持った掴みにくく誇りある活動なので、少しでも気になってもらえたら嬉しい。


服をつくる矢印

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まず、私は服をつくることを生業としている。
「服をつくる」と言ってもその指針となる矢印は様々。美しいこと、お金になること、新しいこと、つくる楽しさがあること、落ち着くこと、背筋が伸びること、気持ちいいこと、

それらは共存したり相反したり相乗したりといろんなバランスを取りながら、あるときは諦めてあるときは利用してそうやって悩み楽しみながらつくっていく。

同時にアパレル産業の端くれとして
服を着る、一消費者として思うところ
何かを作り出す、手に入れるということの責任。
重い話みたいだけど、そんな堅苦しいことではなくて、


からだ

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身体というのはやわらかいものだから、生まれてからぐんぐん成長して、あるところで止まっているように思えても似合うシルエットの好みが変わったり、トレーニングしてみたり、膨らんでみたり、歳とともにだんだんと筋力がなくなって変わる部分もある。
生きて死ぬまでに必要な服は移り変わっていく。
さらには服を信じているから、着る楽しさや安心をもらえること、それを埋めてくれる服との出会いと、その変遷もある。

からだと服との出会いはいつだってしあわせなものであってほしい、それは劇的でもなにげなくても。


服の行き先

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ただやっぱり離れていく服がある。
その行き先として、今あるいくつかの選択。

譲る
(メルカリなんかで個人から個人へも他人同士で譲る仕組みができたし、私はリサイクルショップもとても好きだ、あと親戚や親が昔着ていた服や近所から回ってきた服なんかもよく着ている)

リメイクする
(古着屋さんとかでも需要から溢れた服を形を変えることで着やすくしたり、個人でも何か手が加わることで愛着が湧いたりサイズを変えて着られるようにすることができる)

リサイクルする
(ダウンなんかは最近ユニクロが回収してやっていたり、ポリエステル素材の服を完全にリサイクルで新しい服にするという技術を持ったブランドなんかもある、他にも少しずつ増えてきている印象だけれど、まだまだ極一部ではある)

捨てる
(古布回収などでは寄付したり着られないものは雑巾や中敷などになるということもされているらしい、寄付の受け入れ国とその実情にも問題があったりもして簡単なようで簡単でないかもなあと思ったり)

服は服になる時に身体に沿うようや、さまざまな機能や美しさのためにパターンを組み裁断をする。
そのために例えばリメイクにしてもリサイクルにしても、一からつくると同じくらいかそれ以上の力が必要になる。

服は服になった後なにになれるのか。

さなかのはじめ

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役割をおりた服の選択肢の中に最中をつくること。
何かを作る時に
あらゆる矢印を持って[今]どんな理由でそのかたちをつくるのかを考えるのと同じくらい
どこからきているのか、なぜあるのか[前]と
どこへいけるのか[後]を考えること。
最中がつくるものはいつもゴールや完成形ではなくて、みんなでつくっていける問いや間をつくること。
そんな気持ちで
最中/sanaka
となりました。
(この前と後の考え方は一緒にやっている佐藤孝洋という人がくれたものです。noteの文章がとても良いので良かったらみてください。)


そしてひとつめの答えのかたち、名前はていじ(teiji)

ていじ/teiji

バッグのかたち、ものを運ぶうつわのかたち。
持ち手の長さが決まっている輪のタイプと
結んで使うタイプのふたつある。

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わたしがかばんの形を作ったのは6月だった。最中の名前を決めたのと同じ月。
家にあった手ぬぐいを繋げて長い長方形を折り畳んでかばんになるように縫いとめた。

カバンのために切って形を変えることをしないので、変なハギレも出ることがない。またお気に入りの柄をカバンのかたちにして持っていて、破れたり、飽きたり、他のカバンで足りている時には、解いて戻すことができる。破れたところだけ切り取って手ぬぐいとして使っても、また長さを足してカバンに戻すこともできる。

スタートにもどる、をデザインすること。

名前の由来はカバンにするときに畳む形が丁字路のようだから。最中がつくった新しい選択肢[道]であること。

形が出来てから、捨てられるものとしてたくさんの着物があることをそして、その着物も長方形から作られていることが繋がって、着物でていじをつくることにした。

捨てられる着物の新しい道として、全国から集めて
ひとつひとつの反物のかたちを変えていく。
戻ることのできる選択肢を持って。

そのたくさんのていじを集めた展示が八月から巡った////展(ame ten)
個人として直接買ってくれた人と触れ合う機会はとても少なかったけれど、最中にとってとても大事な展示になった。

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10月の最後の////展でボディに飾ったワンピースと、新しくつくったセットアップ

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あたらしい答えのかたち、ひゆる/hiyuruとひゆら/hiyura

ひゆる/hiyuru ひゆら/hiyura

ひゆるはワンピース
肩にボリュームのあるV開きで
長さによって長袖だったり半袖だったり、トップスになったりする。
縦にのみ切り替えがあり、袖の部分を回転させたり畳むことで立体をつくっている。

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4枚の反物を組み合わせてつくり、これも解いて戻ることができるかたち。
だから解いてていじにすることもできるし、長さを変えることもできる。

着物の襟をつくるための切り込みを利用しているので、着物それぞれの長さのバランスで一点ずつつくる。


ひゆらはひとつの羽織りからつくるパンツと被りのトップスのセットアップ。
ひゆらは少し特殊で、着物の中でも襟元の一部がすでに切り取られたものを利用してパンツをつくる。同じ着物の余った部分を集めてトップスをつくるので、ベースのデザインはある程度決まっていて、着物に合わせた修正をしながらつくっていく。

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これも解いて繋げ直してていじなどにすることができる。

最中の着物のシリーズは一度そのかたちになっても、また解いて反物に戻る、ということをベースに考えた。それは着物が元々持っていた考え方で、そこに今の私の身体感覚のかたちがくっついたようなものになった。

着物のことはそんなに知らなかったけど、解いていくごとにそうやって作り手がどこまで見て作っていたのかわかる。
生地としても素敵なものがたくさんあって、捨てられることなく、最中の道で回っていくことができたら、という気持ちももちろんあるし、
なによりかわいいかたちになったので、たくさんの人に知ってもらえたらうれしい。

展示のこと

2020年11月21日-2020年12月6日

〒899-1303 鹿児島県出水郡長島町指江384


ash



食堂あさひや

サトウコーヨー



長くなりましたが、まださなかは最中で
いろんな変貌を遂げていくので見守ってもらえたら何よりです。ご拝読ありがとうございました。


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