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【読書履歴】文章のみがき方

著者:辰濃和男
初版:2007.10.19
発行:岩波書店

この歳になってもほとんどが知らいないことばかり。生業で言えばもう専門家でプロの領域で、若手をしっかりと指導し後輩をしっかりと導かなければならない立場だというのに、いっこうにそんな自信を持つことができていない。

小説を書くことを、自分の中で「命題」として一年が経過した。いまのところ、どこをどう目指せばよいのかわからない状況が続いている。ぼんやりとした方向を見定めるため、ひさしぶりに完読したのが「文章のみがき方」(辰濃和男)だ。

文章をみがくとはどういうことか。
四つの章立てで、いい文章を書くために何を心掛けていくべきかを、作家や詩人の文章を提示して、幅広く実践的な方法が書き綴られている。

Ⅰ 基本的なことを、いくつか
 1 毎日、書く
 2 書き抜く
 3 繰り返し読む
 4 乱読を楽しむ
 5 歩く
 6 現場感覚をきたえる
 7 小さな発見を重ねる
Ⅱ さあ、書こう
 1 辞書を手もとにおく
 2 肩の力を抜く
 3 書きたいことを書く
 4 正直に飾りげなく書く
 5 借り物でない言葉で書く
 6 異質なものを結びつける
 7 自慢話は書かない
 8 わかりやすく書く
 9 単純・簡素に描く
 10 具体性を大切にして書く
 11 正確に描く
 12 ゆとりをもつ
 13 抑える
Ⅲ 推敲する
 1 書き直す
 2 削る
 3 紋切型を避ける
 4 いやな言葉は使わない
 5 比喩の工夫をする
 6 外来語の乱用を避ける
 7 文末に気を配る
 8 流れを大切にする
Ⅳ 文章修行のために
 1 落語に学ぶ
 2 土地の言葉を大切にする
 3 感受性を深める
 4「概念」を壊す
 5 動詞を中心にすえる
 6 低い視線で書く
 7 自分と向き合う
 8 そっけなさを考える
 9 思いの深さを大切にする
 10 渾身の力で取り組む

文章のみがき方というけれど、その実、それは仕事に対する取り組み方全般に対する、ものごとを極めていくにはどうすればよいかということが書かれていると感じた。

ただひたすらに解像度を上げること。それは生きるということすべてにおいてそうしなければ後悔すると考えるようになっている。後悔という表現は正しくないのかもしれない。ひとたびだけ言い換えるとすれば、無為に過ごすことが続くことになるということだ。

それでなくても今の時代はぼんやりと過ごせてしまう。慌てずゆっくりとでもよいので、地に足のついたしっかりとした「創作の手立て」を確認することができた一冊だ。

自信のなさというのは、いくつになっても払拭できない。

本書の中で引用されている石垣りんの
「不出来な私の過去のように/下手ですが精一ぱい/心をこめて描きました」
という言葉を知って、<自信のなさというのは、いくつになっても払拭できない>という感覚は、それはそれでいいのだ、と思った次第である。


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